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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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WEB
http://wos.cool.coocan.jp
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
市川さんの新刊が好評です。
『猫でもわかる防衛論』
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こんにちは、エンリケです。
面白兵器技術の最終回です。
他に例を見ないこの連載も、これで終わりです。
個人的にわたしは、
この連載を通して「技術」「工学」への
とっかかりを得ることができた感を持ちます。
この連載を通して、武器の仕組み、ひいては
武器輸出、武器調達への視座を得られた点が
とても大きいです。
長きにわたり、
陸戦兵器技術概論ともいうべき
貴重な連載を提供くださった市川さんに
心からの感謝を捧げます。
では最後の「面白兵器技術」の記事を
さっそくどうぞ。
市川さんの新連載テーマについて、
あなたのご希望をお聞かせください。
詳しくは本文でどうぞ
エンリケ
追伸
本連載をもとにした本が出るとのことなので、
とても楽しみです。
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
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意外と知られていない面白兵器技術(56)
防護装備(その4)
間接防護装備(1)敵の射撃を探知して隠れる
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
本連載も今回をもって終了します。約1年の間のお付き合い、
ありがとうございました。本連載は、自分が現役自衛官時代の専
門分野ではありますが、記憶が曖昧な事項が多く、兵器について
書かれている書物やネット情報で確認しながらの連載となりまし
た。自分にとっても古い知識をブラッシュアップできるよい機会
となりました。
今までにも兵器について書かれている書物やブログなどは数多
くありましたが、ほとんどが狭く深い専門的な内容です。軍事関
連に詳しくない人が読むには少し骨が折れます。そこで、広く浅
い内容で気軽に読めるものを書いたつもりですが、いかがでした
でしょうか。
次の連載についても、わかりやすさを第一に気軽に読めるもの
にしていきたいと思います。テーマについては、「防衛予算」
「兵站」「意思決定」あたりを考えていますが、読者の皆さんの
ご意見も取り入れながら決定したいと思います。ご意見をお寄せ
ください。
https://okigunnji.com/url/7/
次の連載は、ストーリーが決まりネタ出しが50%くらいできた
ところで再開したいと思います。テーマによって再開までの期間
が変わりますが、上記の3つのテーマの順に期間が長くなります。
2~3か月後あたりを目標に置いています。ご期待ください。
また今回連載した「陸戦兵器のテクノロジー」を単行本にする
計画が進行中で、メルマガ休載期間を利用して、その作業も進め
るつもりです。こちらもご期待ください。
読者のY様からご所見を頂きました。ありがとうございます。読
者の皆さんのご意見、ご質問、ご所見は連載継続の励みになりま
す。これからもよろしくお願いします。また、メルマガ主催のエ
ンリケさんの的確かつ過分なコメントに感謝します。
さて、最終回の兵器技術は、間接防護装備です。弾やミサイル
に当たらないように逃げる、隠れるための装備が間接防護装備で
す。艦艇には対艦ミサイルを打ち落とすためのCIWSのような機関
砲、航空機には対空ミサイルを自分の囮として誘うフレアなどが
ありますが、陸上兵器にはありません。敵の射撃を探知して、逃
げる、隠れるが陸上兵器の間接防護方法です。
▼敵の射撃を回避するさまざまな工夫
自分を防護するのに最善なのは弾に当たらないことです。その
ためには、敵に発見されるよりも先に敵を発見し、射撃するか、
退避します。退避で最も有効なのは敵に照準されないように地物、
建造物に隠れるか、煙幕などで自分を見えなくすることです。そ
のほかに、敵の有効射程外に離れるか、激しい運動により、敵の
射撃の命中率を下げることがあります。
ミサイルであれば、有効射程外の距離になると極端に命中精度
が下がります。有線誘導であれば有線の長さが限界です。ミサイ
ルは誘導のために翼があり、空気抵抗を受けやすい形状をしてい
るため、有効射程を過ぎると一気に減速します。また、ロケット
エンジンで飛翔するミサイルやロケット弾は速度が遅いため、重
力や風の影響を受けやすく弾道が大きく変化するので有効射程外
の命中はほとんど期待できません。
これに対して、徹甲弾については速度が速く、空気抵抗も低い
ため、有効射程外についても極端に命中精度が落ちることはあり
ません。有効射程は期待される命中率を基準にしており、基準を
下げれば有効射程は伸びます。戦車の徹甲弾の有効射程は高い命
中率が設定されています。ミサイルやロケット弾は、命中率が極
端に変わる距離があるため有効射程は明確に定義できます。
ただし、日本国内においては起伏が多く、平地には建造物があ
るため、2km以上の視界を得られる場所は極めて限定されます。
戦車の徹甲弾の有効射程は2~3kmですから、日本国内において
は有効射程外に退避することは、同時に敵の照準外に出てしまう
ことになります。
敵から射撃される危険性があるときに、高速で移動すること、
可能であればスラローム走行で退避できれば、射撃の命中率を下
げることができます。いずれにしても敵からの射撃に対して水平
方向(左右)に移動することが重要です。
61TKの時代は、敵を発見し、発煙し、退避行動するなど、ほと
んどの行動を人が操作していましたが、戦車の射撃能力が低かっ
たためそれほど問題とはなりませんでした。現在の戦車の高い射
撃能力に対しては、人の能力だけで退避行動して敵の射撃を回避
するのは極めて困難です。射撃能力が上がった分だけ、敵の射撃
を回避する能力(間接防護能力)も上げなければなりません。
敵の射撃を回避するために、最も重要なのが敵を発見し追随し
常に敵の位置を把握することです。現在では、赤外線センサーで
熱源を感知して目標を捉えることができます。加えて、10TKでは
ネットワークで情報を共有できます。
最新の装備ではミリ波レーダーが使用されています。ミリ波は周
波数が高く波長が短いため、探知距離は短い反面、分解能が高く、
物の形が明瞭になります。地上用の短距離レーダーとしては最適
で、最近の衝突防止機能の付いた自家用車にも使用されています。
敵の位置がわかれば、敵の照準に入らないように行動すること
ができます。ただし、歩兵は発見しにくく、捜索から漏れた敵か
ら突然射撃を受ける場合もあります。このような場合に活躍する
のがレーザーセンサーです。2.5世代までの対戦車ミサイルや戦
車の射撃では、目標に対してレーザー照射する必要があり、これ
を感知することで退避行動がとれます。
レーザー照射されたならば、次には弾が飛んでくると予測できま
す。レーザーセンサーでレーザーが照射された方向がわかれば、
その方向に発煙弾を発射して敵の視界から外れ、退避する(また
は先制射撃する)ことができます。発煙弾はあまり話題となる装
備ではありませんが、緊急退避には非常に有効な弾薬で、発煙弾
発射機が各種装甲車に装備されています。(「発煙弾発射機」で
検索)
富士の総合火力演習で最後に戦車が発射する煙幕が、装甲車に共
通に装備されている発煙弾です。発煙に使われる薬剤も改良が加
えられ、現在装甲車が発射する発煙弾は赤外線センサーにも有効
です。
敵の射撃を回避するには、機動性能も重要です。特に加速性能と
旋回性能です。敵からの射撃が予測されたならば、速やかに最高
速度で移動できることは射撃を回避する上では重要な性能です。
そこで最高速度に短時間で達するための加速性能が必要となりま
す。左右の移動は照準を難しくしますが、そのための鋭いスラロ
ーム走行には、高い旋回能力が求められます。
敵の射撃を回避する際、前進よりも後退したほうが敵の射線から
逃げられる場合も多くあります。民間車両であれば、後退は車庫
入れなどの特殊な場合だけのため、高い性能は求められません。
戦車の場合は後退の加速性能、最高速度が前進と同等であれば、
緊急退避により被弾を避けられる可能性が高まります。10TKは前
進と同等の加速性能があるため、切れのよいスラローム走行と相
まって高い回避性能を有しています。
(おわり)
(いちかわ・ふみかず)
市川さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
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