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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
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こんにちは、エンリケです。
五十五回目の面白兵器技術です。
他に例を見ないこの連載も、残りわずか。
市川さんに聞いておきたいことや、
確認しておきたいことなどがあれば、
お早めに問い合わせを
https://okigunnji.com/url/7/
ではきょうの記事を
さっそくどうぞ。
装甲、舐めてました。
こんなに興味を惹かれる存在だったとは、
正直知りませんでした。
市川さんに感謝です。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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https://okigunnji.com/url/7/
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意外と知られていない面白兵器技術(55)
防護装備(その3)
直接防護装備(3)「装甲構造 その2」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
連載を始めてから何度も繰り返していますが、兵器は導入した
だけでは機能しません。兵器導入のための経費は氷山の一角に過
ぎません。上から見える氷山の下には、兵器を使いこなすための
教育訓練や教育訓練用器材、維持管理のための整備用器材や部品
などいわゆる後方分野に必要な多大な経費が隠れています。
前回説明しました中期計画の予算構造では、導入した兵器を
100%機能させることはできないでしょう。最近の防衛力整備は、
「ゲーム世代の防衛力整備」です。ゲームの世界ではアイテムを
入手すれば直ぐに使えます。維持管理も必要ありません。必要な
ければ簡単に処分できます。
次の中期防衛力整備計画、防衛計画の大綱の見直しで、本格的
な修正をしないと本当に機能しない自衛隊ができあがってしまい
ます。とりあえず次期中期については、取得する装備品の数量を
減らして後方分野に予算をまわしバランスのとれた防衛予算にす
ることが必須です。参議院選挙後の新内閣に期待せざるを得ませ
ん。(佐藤正久議員が今年の参議院選挙に出ますので、全国比例
区上位当選で防衛大臣になることが改革の近道でしょう)
読者のY様から「装甲の不足分について創意工夫がされているか」
というご質問をいただきました。ありがとうございます。部隊レ
ベルではさまざまな工夫がされていますが、やれることには限界
があります。陸自の装備品は全般的に防護装備が脆弱で、海外任
務が常態化している現状を考えると問題が多いと思います。幸運
にも、戦後、一度も実戦がなかったことが大きく影響しています
が、防衛予算が少ないために優先順位を付けざるを得ないのが現
実的な要因です。解決策は予算を増やすことしかありませんが、
装甲以外にも多くの問題を抱えている日本の防衛力の実態を共有
することから始める必要があります。
読者のN様から「防衛技術基盤維持の観点からF?2戦闘機の後
継機開発についてどのように考えているか」というご質問をいた
だきました。ありがとうございます。航空機開発についてはあま
り詳しくありませんが、F?2の後継は国産か共同開発を考えて
いるという話を耳にします。日本の航空機関連メーカーにとって
自衛隊機売り上げの比率は大きいため、F?35の製造ができないこ
とは大きな痛手です。F?2の後継機開発を国産で早期に着手しな
いと航空機の生産・技術基盤が脆弱化していくのは間違いないと
思います。
さて、本題の兵器技術ですが、直接防護装備の3回目、装甲構
造の2回目です。戦車の装甲はAPDSFSを止めることが求められま
す。そのために戦車の開発国は国の最先端技術を注いでいます。
戦車の中でも最も秘密のレベルが高い部分です。
▼「爆発反応装甲」と、最高性能の「複合装甲」
前回説明したケージ装甲は、簡単構造、軽量、安価という観点
で有効性が高いものですが、全長、車幅、車高が大きくなり日本
のように狭い道路が多いところでは非常に運用しにくくなります。
また、信管の作動も完全に阻害できません。そこで、値段は跳ね
上がりますが、機能を重視して作られたのが爆発反応装甲(通称
リアクティブアーマー)です。
構造は板状の金属2枚に爆薬が挟まれた、北海道のお土産「白
い恋人」(ラングドシャ)のような形状で、これを本来の装甲に
装着する付加装甲です(「リアクティブアーマー」で検索)。機
能上、弾道に対して斜めに取り付ける必要があります。戦車の装
甲にタイルを貼り付けたような形状になります。ケージ装甲に比
べると車体の大きさにはほとんど影響を与えませんが、重量、価
格面で劣ります。機能的にはAPDSFSにも効果があり、装甲として
の性能は非常に高いといえます。
HEATがリアクティブアーマーに着弾するとリアクティブアーマ
ーの爆薬が起爆し、金属板を高速で吹き飛ばして金属がHEATのメ
タルジェットを断ち切ります。APDSFSの場合も同様の働きをしま
す。ただし、重く硬い金属を使ったAPDSFS弾を断ち切るにはリア
クティブアーマーにも高い威力が求められます。
リアクティブアーマーは装甲自体が爆発するため、車体にも影
響を及ぼします。車体に与える影響と装甲の性能がトレードオフ
の関係にあります。APDSFSに対抗できるリアクティブアーマーを
取り付けるには、メイン装甲の強度も高くなければならないとい
うことです。小銃弾クラスに対抗するための軽易な装甲にリアク
ティブアーマーを取り付けると、車体に対する影響のほうが大き
くなってしまいます。
したがって、リアクティブアーマーを装着するのはメイン装甲
の強度が高い戦車にほぼ限定されます。一般の装甲車には、価格
や車体への影響、重量の問題でケージ装甲が適しています。戦車
に装着する場合でも、重量の影響は無視できません。日本で使用
する戦車の場合は軽量化が求められるため、リアクティブアーマ
ーを装着するかどうかは非常に悩ましいところです。
また、リアクティブアーマーは、1つ1つが弁当箱ほどの大き
さになっていますが、この大きさにも意味があります。戦車の形
状にうまく合わせられることや、メタルジェットを切る爆薬量、
戦車に与えるダメージなどを考慮して最適の大きさ、形状にしま
す。大きすぎると広範囲のリアクティブアーマーが起爆してしま
い、次弾が防護できません。
そして、最後に紹介する装甲は、価格と重量を考えなければ現
在最高の性能を持つ複合装甲(コンポジット・アーマー、チョバ
ムアーマー)です。鋼鉄とセラミック、強化プラスティック、チ
タン、合成ゴムなどを積層に重ねた装甲で、その細部は戦車の装
甲の中でも最高機密です。重量と価格面から、戦車以外に使用さ
れることはないといっていいでしょう(各国の秘密なので断定で
きません)。
複合装甲で使われる材質の中でもセラミックは重要です。セラ
ミックは非常に硬く耐熱性があります。APDSFSが着弾したときに
起こる塑性流動(金属同士が液状化する)も起こりません。した
がって、HEATやAPDSFSに対して非常に有効です。ただし、硬いが
ために割れやすいという欠点があります。小口径の徹甲弾でもセ
ラミックは割れて、弾は貫通します。そこで鋼鉄とセラミック、
その他の素材を積層にすることで欠点を補います。
最も単純な構造は、鋼鉄でセラミックをサンドイッチにしたも
のです。日本刀とは反対で粘りのある素材で硬い素材を挟んでい
ます。これはセラミックが非常に硬く割れやすいため、表面の装
甲が簡単に割れないようにするためです。また、素材同士を接合
するのに、樹脂性の接着剤をある程度の厚みで使用することによ
り、セラミックが受ける衝撃を吸収して割れにくくする効果を持
たせます。
実際の複合装甲は、他の素材も含めて何層にも重ねられていま
すが、主役となるのは鋼鉄とセラミックです。他の素材は、鋼鉄
とセラミックの利点を最大限活かし、欠点を最小限にするための
ものであると言ってもよいでしょう。全く性質の異なる素材を何
層にも重ねて、うまく貼り合わせるだけでも高い技術が必要とさ
れます。
使用するセラミックは、HEATやAPDSFAに対する効果が得られる
範囲で、できる限り小さくしたものを集めて板状にします。大き
なものでは、1発の着弾で広範囲が割れてしまい、次弾に対応でき
ません。リアクティブアーマーと同じ理屈です。この時に使用す
るセラミックの形状もタイル状から球状など、最も効果が得られ
る形状が開発されています。このあたりも秘密のレベルが高いと
ころです。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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