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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
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こんにちは、エンリケです。
五十四回目の面白兵器技術です。
他に例を見ないこの連載も、残りわずか。
市川さんに聞いておきたいことや、
確認しておきたいことなどがもしあれば、
問い合わせはお早めに。
https://okigunnji.com/url/7/
ではきょうの記事を
さっそくどうぞ。
「ケージ装甲」
知っておいた方がよさそうです。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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意外と知られていない面白兵器技術(54)
防護装備(その2)
直接防護装備(2)「装甲構造 その1」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
中期防衛力整備計画の経費の続きです。再度、中期計画本文の
「V 所要経費」の金額が書かれた部分を抜粋します。
「この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、
平成30年度価格でおおむね 27 兆 4,700 億円程度を目途とする。
(中略)本計画の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛
関係費は、おおむね 25 兆 5,000 億円程度を目途とする。」
新中期では前年度価格で27 兆 4,700 億円の規模の防衛力に対し
て、実際の予算は25 兆 5,000 億円と約2兆円の節約が求められて
いますが、今中期の節約は7,000億円、前中期の節約は1,000億円
とだんだんと節約規模が大きくなっています。
前中期の1,000億円程度であれば、国の予算を使用する行政機構
として経費の節約は重要なことで納得できる数字ですが、今中期
の7,000億円は経費の節約を超えた限界を求められる数字です。
防衛費で節約対象となるのは、節約が非常に厳しい43%を占める
人件費と20%を占める一般物件費と呼ばれる活動経費を除く37%
の経費です。
活動経費とは、基地、駐屯地の光熱水量や航空機、船舶、車両の
燃料など自衛隊が活動するのに不可欠な経費です。しかも、全体
経費のうち、在日米軍駐留経費、基地周辺の騒音などの対策経費
を含む基地対策等経費が40%含まれています。
新中期計画の2兆円の節約は限界を大きく超えています。
27兆4,700億円の37%は10兆1,639億円ですから、ここから約2兆円、
20%の経費を削減しろと言っているわけです。狂気の沙汰としか思
えません。マスコミは、経費が増えたことを取りあげるよりも、
常識では考えられないような計画が閣議決定されたということを
報道すべきです。
さて、本題の兵器技術ですが、直接防護装備の2回目、装甲構
造です。同じ装甲材料を使っても構造を変えることにより、装甲
を強化できます。小~中口径弾であれば単純構造でもなんとか防
弾効果が得られますが、HEATやAPDSFSに対しては不可能です。特
に、個人用対戦車火器や対戦車ミサイルに多数用いられている対
HEAT用にさまざまな装甲構造が作られています。
▼弾薬の開発に合わせて装甲も変化──最新のケージ装甲
対装甲用の弾薬として徹甲弾が主流だった時代から、HEAT、HEP、
APDSFSと新しい弾薬が開発されました。装甲も鋼板を使った単純
な構造では対抗できなくなり、さまざまな構造の装甲が開発され
ました。また、徹甲弾に対しても装甲を傾斜させて対抗する方法
がとられています。日本では、74TKが特徴的です。
装甲を傾斜させると二つの利点が得られます。一つは傾斜面で
弾丸が滑り、はじいてしまうこと、もう一つは傾斜した分だけ弾
道上の装甲厚が実質的に厚くなることです。しかし、この二つの
利点も、HEAT、HEP、APDSFSには効果がないため、以後、開発され
た戦車の装甲面は通常、垂直です。戦車全体で見ると装甲が傾斜
している部分もありますが、別の目的の傾斜です。(内部構造の
影響やIEDの爆風対策、他の構造の装甲)
HEAT、HEPに対抗するために考え出された装甲に空間装甲(通称
スペースド・アーマー)、爆発反応装甲(通称リアクティブアー
マー)、ケージ装甲などがあります。現在でも広く使用されてい
るのは、リアクティブアーマーとケージ装甲です。
スペースド・アーマーは文字通り装甲内に空間を設けています。
HEPはホプキンソン効果により装甲の内側が剥離して乗員に殺傷効
果をもたらしますが、装甲内に空間があれば衝撃が装甲の内側に
伝わらず剥離が起きません。また、HEATのモンロー効果にはスタ
ンドオフという対象物との適当な距離が必要ですが、装甲内の空
間により適当な距離がとれずに十分な効果が得られません。
しかしながら、HEPが戦車のメイン弾種としてほとんど使用され
なくなったこと、HEATの能力向上により装甲内の空間ではモンロ
ー効果の減殺がはかれなくなったことから、スペースド・アーマ
ーは使われなくなりました。スペースド・アーマーの機能に新た
な機能を追加して、より安価に効果的にしたのがケージ装甲です。
(「ケージ装甲」で検索)
ケージとは檻(おり)や籠(かご)のことです。戦車や装甲車
が檻に入っているような外見をしているのがケージ装甲です。対
HEAT用の付加(増加)装甲で徹甲弾に対しては全く効果がありま
せん。メイン装甲に付加してHEATに対する防護性能を高め、メイ
ン装甲の弱点を補います。
HEATに対して二つの機能を持ちます。一つは、ケージの隙間に
HEATの弾頭(信管部)を挟み込み、信管を作動させなくする機能
です。HEATの飛翔速度は遅く、弾殻も強度が高くないため、ケー
ジにもそれほどの強度が求められません。そのため、簡単な構造
で軽量かつ安価な装甲で十分な効果が得られます。
二つ目の機能として、信管が作動した場合は、スペースド・アー
マーと同様に効果的なモンロー効果が得られるスタンドオフの距
離を妨害します。ケージ装甲は構造が簡単で軽量なため、比較的
大きな空間が作れます。近年のHEATは能力が向上したため二つ目
の機能は必ずしも有効とはいえませんが、ある程度の効果は期待
できます。
ケージ装甲の主対象は歩兵が保有する対戦車火力です。歩兵は戦
車、装甲車から捕捉することが難しく、対戦車ロケット弾や対戦
車ミサイルにより側面や背面といった弱点を狙われます。個人が
携行できる対戦車(装甲車)用兵器はHEATに限られるため、HEAT
に効果的なケージ装甲は非常に有効です。
戦車や装甲車の装甲は全面均等ではありません。脅威の度合いに
よって、装甲の強さを変えます。戦車の全面を対APDSFS用の装甲
(HEATにも有効)にしたら、重くて動けなくなるでしょう。一般
的には正面が一番強く、次に側面、背面、下面、上面の順です。
下面は対戦車地雷、上面は航空機の脅威がありますが、脅威に遭
遇する確率や回避できる可能性を踏まえて優先順位を付けざるを
えません。
APDSFSが撃てるのは戦車に限られるため、 対APDSFS用装甲は対
戦車戦を想定して考え、後は、35mm~25mm徹甲弾が撃てる装甲戦
闘車との戦闘、軽易に使用できる12.7mm徹甲弾への対応を想定し
て考えれば、対徹甲弾用の装甲の配置が決まります。後はHEAT用
のケージ装甲で囲えば、かなり有効な直接防護ができます。
(対APDSFS用装甲以外は、現代のHEAT弾には対応できません)
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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