おはようございます、エンリケです。
F-35Åの導入に伴い退役が決まっているF-4。
この本は、退役するF-4に関わり、F-4を愛する人の声で
満ち満ちた「F-4愛」でいっぱいの一冊です。
特徴の一つは、登場人物の幅広さと数多さと豪華さです。
空幕長・丸茂空将、元空幕長・杉山元空将、元航空支援集団司令
官・織田元空将、元7空団司令・杉山元将補にはじまり、
現元パイロット、エンジニアまで、軍民問わない(主に自衛官です
が)実に幅広い関係者が登場しています。
第二の特徴は、F-4のすべてが描かれていることです。
現場にいたパイロットやエンジニアたちにしかわからないクセ
や工夫の数々。これには圧倒されます。
わが国最大の優位点である「最前線の現場能力」の高さがいかに
養われてきたか? のひとつのモデルになると思うほどです。
偵察航空隊の仕事が詳しく紹介されているところも、意外に非常
な特徴かもしれません。
第三の特徴は、内容のほとんどが会話(「」)で成り立っている
ところです。そのためとても読みやすいのですが、実は読み手は、
会話を聞き取りながらF-4を全方位から周到に観察できているん
です。読み終わってはじめて、レベルの高い内容を総合的に把握
できている自分に気付くのです・・・
よくぞここまで取材できたものだ、
と、つくづくその「F-4愛」に胸を打たれるばかりです。
もう一つ感じたのは、
F-4は複座機で、複座機特有の「教育」機能への視座を
読み手に与えてくれるところです。
戦闘機要員の育成にあたって、
複座機という仕組みは実は非常に重要であること、
その背景事情が良く理解できます。
たとえば、バディとの会話コミュニケーションを訓練することが
大切、という視座は、合理とか効率とかいう視点からしか軍事や
社会を眺められない人には持てないものでしょう。
背中で教えることの意味は、
おそらく今でも生きているのでしょう。
読みながらそう確信しました。
複座機だからできる「教育」。
教育をとても重視してきたわが自衛隊における
複座機という知恵の大きさ。
永遠の翼 F-4ファントム
日本の空を守って50年──お疲れさま、そしてありがとう!
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判404ページ(カラー口絵16ページ)
http://okigunnji.com/url/19/
それではこの「F-4愛に満ち満ちた書」の中身を見ていきまし
ょう。
■プロローグ
それは筆者が初めて知ることだった。前著『蘇る翼F‐2B』
の取材で、東日本大震災当時、松島基地司令だった杉山政樹元空
将補にインタビューした時である。
震災時、杉山氏は基地のトップとして災害対処の陣頭指揮にあ
たっていたが、つねに補佐役に同期か部下を選び、その表情や声
のトーンを観察しながら、意見を聞いて決断していたという。
「実は震災時の松島基地の装備部長が防衛大学校の同期生で、昔
から気心の知れた、信頼のおける男だったのです。だから、彼に
相談や提案をした時、彼が無理と言ったら、だめなんだと判断し
ていました」(杉山氏)
戦闘機のパイロットは、単座機か複座機かで二種類に分けるこ
とができる。F‐15イーグル戦闘機など単座機のパイロットは基
本「寡黙」。それに比べて複座のF‐4ファントム戦闘機のパイ
ロット出身者はよくしゃべる。この複座機の経験が震災時に役に
立ったという。
複座機のパイロット特有の気質や思考方式があるというのは思
いもよらなかった。いつか、F‐4戦闘機のパイロットたちの現
場を見てみたいと思った。
『蘇る翼F‐2B』が刊行されて間もなくの2017年夏、取材
時にお世話になった方々を招いた宴席で杉山氏と再会した。筆者
(小峯隆生)はすぐに思いを伝えた。
「航空自衛隊のF‐4ファントムが、間もなく退役しますね、そ
こで次はF‐4に関する本を書いてみたいんです」
杉山氏は筆者の提案には答えず、携帯電話を取り出し、どこか
と連絡を取り始めた。
「いま兄貴にメールを送りました。返事を待ちましょう」
意味不明の言葉だった。しばらくして杉山氏がメールの返信
を確認すると言った。
「あっ、やれますよ」
「なんですか?」
「F‐4ファントムの件です。兄貴がお手伝いしようとのことで
した」
「その兄貴って、どなたですか?」
「私の先代の第302飛行隊長で、今は空自のトップの杉山空幕
長ですよ」
なんとも素早い対応に驚き、筆者はあんぐりと口を開け、そこ
にビールを燃料のように流し込んだ。
こうして本書の制作が開始された。
F‐4EJ戦闘機──それを大空で自在に操縦する者たちを
「ファントムライダー」と呼ぶ。消えゆくF‐4ファントムは、
これに関わった人々に何をもたらしたのか? かつて単座戦闘機
で戦った搭乗員たちは「大空のサムライ」と呼ばれた。ファント
ムの搭乗員たちは大空のなんであったのか……
■目次
はじめに 17
1 F‐4だから長く活躍できた──杉山良行前空幕長 23
2 F‐4の戦力を使い切る 29
3 航空自衛隊とF‐4ファントム 47
4 最後のファントムライダー 77
5 ファントム発進! 110
6 複座戦闘機乗りの心得 136
7 最強の飛行隊を目指して 151
8 空の守りの最前線 157
9 ファントムOBライダーズ 165
10 最後のドクター──列線整備小隊 200
11 F‐4を支えるメカニック集団 227
12 劇画『ファントム無頼』に込めた思い 261
13 今だから語れる非常事態 277
14 RF‐4偵察機──偵察航空隊の使命 301
15 写真を読み解く──偵察情報処理隊 328
16 創意工夫でやりくり──偵察航空整備隊 353
17 日本の空を支えて半世紀──丸茂吉成空幕長 371
18 永遠の翼「F‐4ファントム」380
おわりに 399
■著者
小峯隆生(こみね・たかお)
1959年神戸市生まれ。2001年9月から週刊「プレイボーイ」の軍
事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊
の徹底的な研究をしている。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)
『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』(並木書房)ほか多数。
日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。筑波大学非常勤
講師、同志社大学嘱託講師。
柿谷哲也(かきたに・てつや)
1966年横浜市生まれ。1990年から航空機使用事業で航空写真担当。
1997年から各国軍を取材するフリーランスの写真記者・航空写真
家。撮影飛行時間約3000時間。著書は『知られざる空母の秘密』
(SBクリエイティブ)ほか多数。日本航空写真家協会会員。日本
航空ジャーナリスト協会会員。
著者の小峯さんは、
週刊プレイボーイのコミネさん
といったほうが通りがいいかもしれません。
軍事マニアとしても知られる氏の
F-4への無限の愛情が満ち満ちた書であり、
「F-4」のすべてを描いたレクイエムと
言って差し支えない傑作です。
ファンの方なら必携でしょう。
柿谷さんも、超有名なカメラマンです。
今日ご紹介したのはこの本でした。
永遠の翼 F-4ファントム
日本の空を守って50年──お疲れさま、そしてありがとう!
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判404ページ(カラー口絵16ページ)
http://okigunnji.com/url/19/
(エンリケ)
追伸
ちなみにエンリケの一番好きな戦闘機が「F-4」でした。
いかにも戦闘機らしいゴツい風貌がお気に入りで、いまも
大好きです。
新幹線と同じく、新しくなればなるほど理屈だらけの形になり、
美から離れていく気がしてなりません。理屈と美のバランスが
最もとれていたのが自分のなかでは「F-4」なんでしょう。
平成生まれの人は、「F-16」や「F-35」にそういう思いを
重ねてゆくのでしょう・・・
永遠の翼 F-4ファントム
日本の空を守って50年──お疲れさま、そしてありがとう!
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判404ページ(カラー口絵16ページ)
http://okigunnji.com/url/19/
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