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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
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こんにちは、エンリケです。
五十二回目の面白兵器技術です。
学生時代の測量実習を思い出しました。
今回も面白いです。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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意外と知られていない面白兵器技術(52)
「火器の照準」(間接照準 その1)
─榴弾砲、迫撃砲の照準
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
火器の照準の最後は間接照準です。照準というと拳銃や小銃の
ように目標が見える直接照準をイメージしますが、榴弾砲のよう
に遠距離の見えない目標を狙う場合も照準という用語を使います。
直接照準と間接照準の違いは火器の話題で説明しましたが、少し
おさらいします。
直接照準は目標を照準具で直接捉えて狙います。つまり、火器
の位置から目標が直線で見えるということで、日本の地形であれ
ば2~3kmくらいまでが射距離となります。地球は丸いため、全
く障害物がない場合でも、高さ2mから直接見える距離は約5km
です。日本は起伏が激しいため、4~5kmを直接照準で狙う場合
は高台から打ち下ろすような射撃になります。
間接照準は、見えない目標に対する射撃で、火砲と目標の位置
(座標、標高)から射撃諸元を計算して火砲に射角と方位角を
付与します。射距離としては5km以上が基準です。直接照準の場
合は、火器と目標が地図上でどこに位置するのかわからなくても
射撃できますが、間接照準の場合は、地図上(または地図データ)
での位置情報は必須です。
誘導弾の場合は、直接照準、間接照準という区分はしません。
あえて区分するとすれば、対空、対戦車、対艦などいかなる場合
も、何らかの手段で目標を直接捉えるので直接照準になります。
▼位置の測定から始まる間接照準
榴弾砲や迫撃砲のように長距離を射撃する場合は、目標を直接
視界などに捉えて狙うことなく、砲に射角と方位角を付与するこ
とで目標を狙います。この際、直接照準火器と違い、射距離の調
整は射角と発射薬量(装薬量)により行ないます。射角と方位角
を付与するには砲と目標の正確な位置がわからなければなりませ
ん。間接照準射撃では、まずこの位置の測定から始まります。
必要不可欠となるのが砲と目標の位置、標高、そして正確な方
位です。これらの測定には地図と測量が必要となります。自己位
置は以前説明した三角測量で測定できます。方位はコンパスを使
い、標高も自己位置が確定すれば三角測量により求められます。
目標については現地で測量できませんから、地図上のデータを読
み取ります。
また、長距離射撃では気象、とくに風向・風速は弾道に影響する
ため、計測を行ないます。装薬温度も初速に影響し射距離が変わ
りますから、計測の必要があります。
以前は、これらの測定、計測をすべて人がやっていました。精
度の高い砲迫射撃には事前の準備が大変だったわけです。当然、
時間もかかります。現在では、GPSやジャイロ、加速度計といっ
た各種センサーとデジタルマップ、コンピューターを用いて、短
時間で正確な測定、計測ができます。
次に、これらの各種データに基づき、砲に付与する射角、方位
角、装薬量(射撃諸元)を求めなければなりません。方位角は、
砲の位置と目標の位置から地図上で求められます。あとは気象の
影響などを考慮して微修正します。射角は、弾道を求める計算式
がありますから、式にデータを入れると一応の射撃諸元が求めら
れます。しかし、真空での弾道と違い、空気抵抗を考慮する必要
のある実際の弾道は、非常に複雑な計算式を使わなければなりま
せん。
そこで、考え出されたのが射表です。弾道計算を元にして、あ
とは実際に射撃してデータをとって表にしたのが射表です(弾道
計算の結果と射撃結果の誤差を修正)。弾道計算ができなくても、
実際に射撃してデータを蓄積すれば射表だけでも射撃できます。
現在は、コンピューターの能力が高いため、複雑な計算式でも短
時間で結果が求められますが、射表は作成しています。
砲の種類によって弾丸の初速やスピン量は変わり、弾道に影響
を与えます。弾丸形状によって空気抵抗が変わり、装薬の特性に
よって初速も変化します。これらの要因が弾道計算式に影響を与
えます。現代でも、新しい砲や弾薬を開発した場合は、実際に射
撃してデータを収集し射表を作成します。射表を基準として、弾
道計算式に基づきコンピューターで正確な弾道を計算し、砲と目
標位置に応じた正確な射角が求められます。
砲に、射角と方位角を付与するには、照準具を使います。射角
を付与するには象限儀、方位角を付与するには間接照準眼鏡(パ
ノラマ眼鏡)を使用します。間接照準に照準眼鏡を使用するとい
うのは意外かもしれません。当然、眼鏡で目標を狙うわけではあ
りません。眼鏡近傍の基準となる目標を狙います。
パノラマ眼鏡は、潜望鏡とほぼ同じ構造をしています(「パノ
ラマ眼鏡」で検索)。目標を捉える対物レンズが360°回転し全周
が見えます。全周が見えるのでパノラマ眼鏡です。パノラマ眼鏡
で基準となる目標を狙いますが、火砲が射撃の反動で動いても正
しい方向が確認できるように2点を結ぶ目標を狙います。以前は
標悍(「測量 赤白ポール」で検索)を2本立てて目標としてい
ました。現在ではコリメータと呼ばれる1点だけ狙えばよい器材
を使います。原理はダットサイトの照準と同じです。
火砲に方位角を付与するときには、眼鏡を反対方向に回転させ
て方位角を付与し、その後、砲を旋回させて眼鏡を目標の基準点
に合わせます。パノラマ眼鏡とコリメータの2つがあれば砲の基
準となる方向が変わりません。火砲本体で方位角が付与できる構
造にすると、火砲が動くたびに基準方向が変わります。確かに現
在のセンサーとコンピューター技術を使えば、砲本体だけで正確
な方位角を付与することは可能ですが、費用対効果を考えれば利
点は多くありません。
射角に関しては象限儀、機械式・電気式高低照準具を使います
が、水準器と分度器を1/2(90°)にしたものの組み合わせが基
本です(「象限儀」で検索)。精度や照準時間は変わりますが、
江戸時代に使われていたものと大きな違いはありません。砲身の
傾きが正確に測定できればいいわけです。射角の場合は、水平と
いう絶対値があり、水平を確認する水準器も簡単な構造なため古
くから方法が確立されていて、現在でも技術的に大きな進歩はあ
りません。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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