こんにちは、エンリケです。
きょうで、2師団レンジャーの記事は
終了です。
最後の祝福は、
本当にうれしいでしょうね。
さっそくどうぞ
エンリケ
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『ライター・渡邉陽子のコラム (220)
― 第2師団集合教育「レンジャー」(6)―
渡邉陽子
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〇〇さま
こんばんは。渡邉陽子です。レンジャーの連載は今回で終了となり
ます。こうしてメルマガ掲載にあたり改めて読み返すと、取材時の
ことが昨日のことのようによみがえって懐かしかったです。
変な虫に刺されたりと自分も体を張った取材だったこと、2師団の
広報室長と一緒に仕事できる最後の機会だったことなど、忘れられ
ない思い出深い取材のひとつです。
■第2師団集合教育「レンジャー」(6)
道路に倒れ込んでしまった学生をバディが起こそうとしているので
すが、そのバディも思うように力が入りません。
「ほら、立って行こう。みんなつらいんだぞ、お前だけじゃないん
だぞ」
相方の腕を引っ張るも、完全に脱力してしまった人間を起き上がら
せるのは力がいります。なんとか上半身を起こさせても、再びぐに
ゃりと地面に伏せてしまいます。
周囲には助教も集まり「こんなところでごねててもしょうがねえぞ」
「しっかり立て」「くすぐるぞ」などと叱咤しています。
教官、助教の忍耐強さも相当なものです。学生を心身ともに極限ま
で追い詰めながら、決して見捨てません。
「背嚢重いだろ? 下ろしていいぞ。で、すぐ帰れ。お前にはもう
無理だ」と口では言うものの、実際に指導部側から「クビ」を言い
渡したりはしません。ドクターストップがかかるとか、メンタルに
きてしまうとか、あるいは冷静かつ客観的に学生自身が判断しない
限り、つまり「心身ともにきつい状況下での弱音発言」はスルーし
ます。レンジャー教育は教官、助教の忍耐力を試される場でもある
のです。
助教から「水を10杯飲め」と指示が出ました。学生たちは水筒のキ
ャップに水を入れ、1杯ずつゆっくり味わっています(1杯せいぜ
い10cc程度です)。
さあ、最終想定の状況終了まで残り約24時間(学生たちはそこまで
詳しく知らされていません)。ここを乗り切れば明日は帰還式、名
寄駐屯地に戻ってきたら、そこには家族や仲間、そしてレンジャー
徽章が待っています。
そして最終日の4日目。
3夜4日にわたりほぼ不眠不休で任務を遂行していたレンジャー学
生が、ついに名寄駐屯地に戻ってきました。
お約束の発煙筒と爆竹、そしてロッキーのテーマが鳴り響き、家族
や部隊の仲間、同行していない教官・助教たちが出迎えます。
今回は学生27名に対して家族が100名ほど出席。はるばる遠方から
かけつけた家族もいるなど、レンジャー教育は本人のみならず家族
にとっても大きな出来事なのです。
学生長が任務終了報告をし、担任官が状況終了を宣言。これをもっ
てついに約3カ月におよぶレンジャー教育が終わり、学生たち一人
ひとりのレンジャー徽章が授与されました。
学生長は「われわれ学生は3か月前より少しは成長できたかと思い
ます。多大なご支援ありがとうございました。感謝の気持ちを忘れ
ず、今後はレンジャー隊員として自衛隊生活を送っていきたいと思
います」とあいさつ。つい先ほどまで厳しかった教官や助教も笑顔
で見守っています。子どもの顔を見て思わず涙する学生(レンジャ
ー教育中に子どもが生まれた学生もいました)、久しぶりに彼女と
会えて破顔する学生、部隊の仲間から盛大に祝福されあれやこれや
食べ物を差し出される学生。教官や助教は「最後まで頑張ったな」
「お前は本当によくやった」と、教育期間中一度たりとも口にする
ことがなかった言葉を学生たちにかけています。
それだけでも学生にとっては胸の熱くなることですが、この先にま
だサプライズがあります。
寝泊まりしていた部屋に戻ると、そこにはあの教育期間中は鬼のよ
うだった助教が縫い付けてくれたレンジャー徽章が胸元に輝く戦闘
服がハンガーにかけられ、自分のベッドにぶら下がっているのです。
「あーっ!」「バッジついてる!」「やばい、うれしすぎる」。
学生たちの顔が輝き、年相応の素直な声があちこちから響きます。
彼らはこれからまず4日ぶりの風呂に入り全身の汚れを落とし、こ
のレンジャー徽章の付いた清潔な戦闘服に着替え、そして家族との
会食へ向かうのです。
こうして今年度、2師団では27名のレンジャー隊員が誕生しました。
今後はレンジャー隊員ならではの任務を遂行し、上司に信頼され部
下に尊敬される、レンジャー徽章に恥じない自衛官であり続けても
らいたいものです。
(おわり)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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