配信日時 2019/02/15 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話】◆「最新兵器の一騎討ち ──F-16戦闘機 vs グリペン戦闘機(4):結論

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出ました。
今回はMP5です。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
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さいきん、戦闘機や各種兵器の文章を読む機会が
多いのですが、ふと気付けば半分以上の文字が
カタカナ、外来語です。

意味不明のカタカナの外来語のところに来れば
えっ?と止まって、それが延々と続いて
読むのが嫌になってしまう。

のが普通だと思いますが、
幸い、何事もなく文章を読むことができています。

もしかしたらこの連載で、毎週軍事英語になじんで
いるからかもしれません。それしか思い当たりません。

今週もさっそくどうぞ。


エンリケ


追伸
ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/


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加藤大尉の軍隊式英会話     Takashi Kato

◆「最新兵器の一騎討ち
 ──F-16戦闘機 vs グリペン戦闘機(4):結論」

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□今週の「トランプ・ツイッター」

 1961年4月、旧ソ連のコスモノート、ガガーリン少佐(当時)
は人類初の宇宙飛行に成功しました。以来、優に500人を超える人
間が宇宙に行っています。

 この間、飛行中または訓練中に殉職した宇宙飛行士は31名おり、
うち22名がアメリカ航空宇宙局(NASA)のアストロノート。1986
年1月、スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故で亡くな
った日系のオニズカ米空軍中佐(当時)もそのひとりです。

 今回のトランプ・ツイッターは、先日の「NASA殉職宇宙飛行士
追悼の日」に大統領が寄せたものです。米国文化の根底にある開
拓者精神を継承し、ヒトが持つ可能性を体現する過程で亡くなっ
たアストロノートたちを英雄と呼び、惜しみない賞賛を送ってい
ます。

 「軌道からは国境など見えない」。国籍にかかわらず宇宙飛行士
たちは皆そう詠嘆します。月を周回するアポロ宇宙船から見た青
い地球の姿に、世界はひとつだと実感した読者も多いことだと思
います。国際宇宙ステーション司令を含め4回の宇宙ミッション
を達成した若田光一氏は、サインを求められると「地球人の世紀
へ」と書くそうです。宇宙滞在が通算350日にもなる氏ならでは
の実感であり、また、偽らざる希望でしょう。

 地上に目を戻すや、国境のみならず宗教、政治体制、イデオロ
ギーで分断された世界の姿が待ち受けています。それどころか、
米ロ中はいわゆる宇宙軍新設に突き進んでいる有様。陸海空に続
き、遠からず天空も戦場と化すのかと暗澹たる気持ちになります・・。

 同時に、複数の米英民間ベンチャー企業が弾道飛行ツアーを今
年中に開始するとのニュースがあります。これまで厳選されたエ
リートしか行けなかった宇宙が、一般人にも開け放たれるのは朗
報です。かつて高嶺の花だった飛行機旅行が日常茶飯事になった
ように、宇宙への旅も意外に早く「手が届く贅沢」になるかも知
れません。大多数の人々が「国境なき青い星」を目(ま)の当た
りにする時代、ことによると若田氏が夢見る「地球人の世紀」が
始まる・・・そんな期待が、わたしは捨てきれません。

 本日のトランプツイッター、キーワードは inspire。「ひらめ
きを与える」「希望を呼び起こす」という意味です。

Each year, America pauses to remember its fallen astronaut 
heroes and the great accomplishments for which they strived. 
@FLOTUS Melania and I mourn their passing and take to heart 
the lessons of their lives and the greater human potential 
to which they continue to inspire.

「毎年、米国市民は殉職宇宙飛行士たちをしのんで黙とうをささ
げ、彼ら彼女らが追い求めた偉大な業績に思いを馳せる。大統領
夫人メラニアとわたしは英雄たちの死を悼むとともに、その生き
ざまが残した教訓と、アストロノートたちがいまも呼び起こすヒ
トの潜在能力への希望を深く心に刻む」


 それでは本編に入りましょう。

 F-16ファイティング・ファルコンもサーブ39グリペンもマッ
ハ2級の軽量マルチロール戦闘機です。兵器搭載量ではエンジン
が強力なF-16に軍配が上がりますが、グリペンのエンジンは小型
ながら機体重量が軽いため、推力重量比(thrust-weight ratio)
では優っています。したがって理論上は、加速力(acceleration)
や上昇性能(climbing performance)、旋回性能(turning 
characteristics)でF-16を上回ることになります。

 グリペンは複数のセンサーから得られた情報を統合し、パイロ
ットの状況認識を高めるセンサーフュージョン(sensor fusion)
機能を持っています。また、敵のステルス機を探知追跡できる最
新のレーダーも備えており、これがスマート戦闘機(The smart 
fighter)と呼ばれる所以です。個々の機体の性能では、設計が新
しいグリペンが優るという印象を受けます。

 もっとも生産数からいうと、F-16は現在までに約4600機。
約250機にとどまるグリペンを完璧に凌駕しています。圧倒的
な数的有利を誇るF-16に対し、スマート戦闘機のセンサーフュー
ジョンがどこまで対抗できるのか・・・これは実際に両機の間で
空中戦が起こってみないとわかりそうもありません。

教材ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=B9SjyVXfz7k&list=WL&index=19

(結論は8:50から始まります)


基本語彙(カタカナ発音表示はおおざっぱなものです)
Sensor fusion(センサーフュージョン)複数のセンサーから得ら
れた情報を統合して高度の状況認識を実現すること
RCS(レイダークロスセクション)レーダー反射断面積
Compromise(コンプロマイズ)危険にさらす 情報をもらす

シナリオ(カウンターを 9:19に合わせてください)

Gripen has a better sensor fusion with lower RCS than F-16.
(グリペンはF-16より優れたセンサーフュージョン機能を有し、
レーダー反射断面積も小さい)

The Gripen is equipped with a next level of sensors that 
can detect and track even stealth target without compromising 
the jet’s location.
(グリペンは自分の位置情報を知らせずに、敵のステルス機を探
知追尾できる一段高いレベルのセンサーを装備している)

英語一言アドバイス:
compromiseは「妥協する」とか「危険にさらす」または「情報を
漏らす」という意味合いです。たとえばよく言われる“Compromise 
is the art of politics”は「妥協/歩み寄りは政治の技である」
という格言です。
“The mission was compromised because of carelessness”なら
「不注意によって任務は危険にさらされた」ですし、 
“Individual date was compromised”は「個人情報が漏洩した」
になります。

発音サイト
compromiseの発音:
https://www.howtopronounce.com/compromise/
(一番目の発音が良いようです)


参考サイト
サーブ39グリペン 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%96_39_%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%9A%E3%83%B3

F-16ファイティング・ファルコン
https://ja.wikipedia.org/wiki/F-16_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)

センサーフュージョン
https://automotive.ten-navi.com/dictionary/17275/



加藤喬(たかし)


●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ
州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校
日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―ある“日本
製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』
『加藤大尉の英語ブートキャンプ』『レックス 戦場をかける
犬』『チューズデーに逢うまで』『ガントリビア99─知られざ
る銃器と弾薬』『M16ライフル』『AK―47ライフル』
『MP5サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。 
 
 
追記
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専門用語があ
ります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日本人が自衛
隊のブリーフィングに出たとしましょう。「我が部隊は1300時
に米軍と超越交代 (passage of lines) を行う」とか「我が
ほう戦車部隊は射撃後、超信地旋回 (pivot turn) を行って離
脱する」と言われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」は
 "Repeat" ではなく "Say again" です。なぜなら前者は
砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍では建物の
「階」は日常会話と同じく "floor"ですが、海軍では船にちな
んで "deck"と呼びます。 また軍隊で 「食堂」は "mess 
hall"、「トイレ」は "latrine"、「野営・キャンプする」は 
"to bivouac" と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取りあげ、
軍事用語理解の一助になることを目指しています。
 
加藤 喬
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