配信日時 2019/02/04 08:00

【桜林美佐の美佐日記(13)】「長崎事件」の続き─嘘を歴史に残してはならない!

こんにちは、エンリケです。

若い人は「生まれたときからネット環境があり、
国防関連情報にアクセスしやすい環境で生まれ育った」
というだけで、国防や安保に興味関心を持つ若い人が
増えたわけではない、のが実際のところでしょう。

まさに桜林さんのご指摘通りと思います。

むしろ若い人の軍事アレルギーは昔より高くな
っている、という印象を私は持っています。

荒谷卓さんが、新刊書のなかで、
人づくりが喫緊の課題という趣旨のことを
書かれてますが、私も同感です。
キモは、知識ではない部分の人づくりでしょう。


きょうの美佐日記も読み応え十分です。

さっそくどうぞ

エンリケ


追伸
無言の圧力を加えることで操り人形にしようとする
「まつろわぬ者」たちの「印象操作」の企みくらい
は、せめて見抜ける国民でありたいものです。



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桜林美佐の「美佐日記」(13)

 「長崎事件」の続き─嘘を歴史に残してはならない!

桜林美佐(防衛問題研究家)
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〇〇さん
おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で13回目です。

韓国海軍による「レーダー照射」事案とその後の「威嚇飛行」の
言いがかりを受けた件について、韓国側の言い分がトンデモナイ
ものであることは、ここの読者の皆さんには改めて言うまでもな
いと思いますので書きませんが、日本国内の報道にもちょっと気
になる点があります。

それは「岩屋防衛大臣への不満が高まっている」しかも「制服組
からの」という話が、まことしやかに報じられていることです。
私も週刊誌の記者さんから聞かれましたが、「そんなことはない
でしょう」と言った手前、そうした話が各所で出始めると、まる
で嘘を言ったか不正確な回答をしたようになってしまいました。

しかし、これはちょっと危険な傾向だと思っています。いわゆる
「日報」事案の時から強く感じていましたが、「制服組の不満が
高まっている」などと、いかにも自衛官が危ないことをするので
はないかと思わせたり、「クーデター」などという言葉を安易に
使うのは印象操作になりますよね。

もちろん、なかには「これでは自衛官が気の毒」という気持ちか
ら、そのように書いているものもあると思うのですが、自衛官が
大臣に対し反旗を翻しているかのように受け止める人もいるので
はないでしょうか。

いえ、もし仮にどこかの居酒屋で、自衛官とおぼしき人たちが「し
っかりして欲しいよなあ」などと言ってたとしてもですよ、それ
をもって「制服組の不満が・・」云々とするのは、やはりおかし
いでしょう。ちょっと神経質すぎるかもしれませんが、どうもひ
っかかる事象です。

さて、前回の長崎紀行に対し、読者のYさんから感想を頂きました。

「偏差値の高い大学ほど憲法改正に反対という記事は面白く読みま
した。理系と文系でも違うように感じます。偏差値が高いほど『他
の手段がある』という可能性を発見してそれを研究してみたくなる
のではないか、そんなことを思いながら記事を読みました。大学は
今も昔も外交や社会の現実から乖離している世界ですね」

ありがとうございます。また、個人的にメールでも「大学生の活動
には敬服します」というお声も頂戴しました。アンケートは継続中
ということですので、また結果を教えてもらい、こちらでご紹介し
たいと思っています。

長崎で行った講演会に対しても、聴講してくれた方々からとても
真剣に拙話を聞いてくれたことが分かる感想が集まったそうです。
なかには教員を目指す学生もいて、これまでずっと「核を持つ=
戦争になる」という教育を受けてきたが、講演でその固定観念が
変った。平和について子供たちに伝えるためにももっと勉強しな
ければならないという内容のものもあり、嬉しく思いました。

特に核武装の話などしたわけではなく、核抑止の理論があるとい
うことに触れただけですが(しかも、途中で急に思い出して!)、
その話をしてよかったです。

さらにこのことで気づくのは、あらゆる大学の、とりわけ「教育
学部に所属する大学生」たちへの「教育」が大事だということで
す。私は早合点をしていて、今の学生たちはみんな「虎の門ニュ
ース」を観たりして、我々のような学生時代にインターネットな
んてなかった世代と違うので、色々と詳しいんだろうと、思い込
んでいたのです。

しかし、考えてみれば、教育者になろうとか官僚になろうとか考
える学生は、ひたすら先生の言うことを聞いて、教科書を覚える
のでしょうから、試験に出ないような知識を集めるために時間を
割くわけがありません。

つまり、当たり前なのですが、SNSなどで情報環境が拡大して
いても、そこに積極的にアクセスするのは興味を持っている人だ
けなのです。当メルマガも含め、身近に非常に価値の高い情報が
溢れているものですから、つい「若者の理解者は広がっている」
という錯誤に陥っていましたが、改めて現状認識が必要であると
感じた次第です。

ところで、前回に書きました「長崎事件」についても、もう少し
付け加えたいと思います。

友達に教えたところ「へーそんなのあったんだ~」と、反応がイ
マイチでしたので、もっと詳しく書かねばならないと思いました
(最初から書けばいいのにね~、面倒がりでスミマセン!)。

長崎に上陸した中国(清国)人水兵たちの行動は、商店に押し入
って金品を強奪する、泥酔して市内で婦女子を追いかけまわすと
いったことに加え、わざと交番に放尿したり、大声や奇声をあげ、
交番にいる巡査らに対して露骨な挑発と嫌がらせをするものでし
た。

巡査らが注意すると、水兵が巡査の警棒を奪おうとしました。巡
査はこれを防ごうと、もみ合いになりますが、300人対3人で
す。水兵たちは、派出所にいた3人の巡査を袋叩きにしたのです。

水兵たちには刀を持っている者もいました。3人の巡査は果敢に
戦いましたが、ついに1人が死亡、1人が重体という事態になり、
この方も翌日死亡しました。

通りかかった市民もこれには怒って大乱闘となり、中国側にも4
人の死者が出ました。そしてここからが驚きの歴史です。

李鴻章が日本の領事を呼び出し「わが方の死者は5人」と犠牲者
を1人水増しした上で、
「武器を持たない我が水兵を殺傷した」と事実に反するデタラメ
を並び立てて、恫喝したというのです。

しかし、どれだけ事実を訴えても、あまりに李鴻章が言い張るた
めに、事故調査委員会を発足することになり、ここには欧米の法
律家にも参加してもらうことになります。

ところが、欧米の弁護士たちが客観的事実を提示しても、中国側
は、とにかく言い張るばかりだったそうです。

とうとう、明治20年の2月に井上馨外務大臣と徐承祖欽差大臣
によって屈辱的な条約を結ばされるのです。日本の警察官は今後、
帯刀は許されず、抵抗したら殺害していい・・・などといった内
容でした。

結局、この事件は「ケンカだった」ということになり、日本は多
額の見舞金を中国側に払ったという結末となったのです。めでた
しめでたし・・・な、ワケがありませんっ!

はてさて、いま現在進行形の「レーダー照射事件」は、どのよう
に後世に語られることになるのでしょうか?「嘘を歴史に残して
はならない」こと、これだけは肝に銘じるべきでしょう!

<おしらせ>
YouTubeチャンネルくらら『国防ニュース最前線』は毎週土曜の夜
にアップデートされています。2月2日は評論家の江崎道朗さん
と対談しています!

http://www.chclara.com



 
(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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