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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
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こんにちは、エンリケです。
四十八回目の面白兵器技術です。
2キロ先の目標に打った弾丸は、
ほぼ5メートル落下するそうです!
想像するより大きな値ですね。
さっそくどうぞ。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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意外と知られていない面白兵器技術(48)
「火器の照準」(直接照準 その2)
─戦車の照準装置(1)
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
陸自兵站、補給の「取得」「保管」「交付」のうちの今回は最
後の「交付」です。保管してある補給品を部隊に交付する方法は
大きく2つあります。部隊が補給品の保管場所(補給所、交付所、
補給点と呼ぶ)まで受領にくる補給所交付と、補給所から部隊が
いるところまで補給品を持って行く部隊交付です。補給所と部隊
との中間点で受け渡しをする交会交付というのもありますが、特
別の場合にしか行なわれません。
必要なものを必要な時期・場所に補給品を届ける部隊交付は、
第一線部隊の戦闘に最も貢献できる望ましい交付方法ですが、陸
自では補給所交付を基本としています。適時な部隊交付は、将来
の陸自兵站の「あり方」として目標を掲げてはいますが、補給に
携わる人、部隊交付するための輸送力が少ないため、なかなか実
現できないというのが現実です。
補給所交付で最も労力が少ないのが、補給品の種類別に並べて
部隊が必要なものを必要な量だけ受領する方法です。スーパーマ
ーケットの感じです。補給品に限りがある場合は、部隊が受領す
る量を制限しなければなりません。この方法でさえ、部隊が受領
するのに最も効率的に補給品を配置し、渋滞しないように統制す
るのにはかなりの隊力が必要です。
部隊ごとに補給品を集積すると部隊は受領しやすくなりますが、
補給品を集積するために必要な隊力は極端に上がります。この状
態で部隊までの輸送力があれば、部隊交付が可能となります。各
種補給品の中でも整備用部品は部隊ごとに集積しなければなりま
せん。部品の種類が多すぎるため部隊が必要なものを探すことは
不可能だからです。(つづく)
さて、本題の兵器技術ですが、直接照準の2回目、戦車の照準装
置です。戦車の照準については4回にわたり説明しますが、今回
は最も簡単な初期型の照準装置でコンピューターを使わないもの
です。旧軍の戦車でも使われていたものです。
▼直接照準眼鏡からFCS(射撃統制装置)へ
直接照準火器である戦車砲の照準も、基本的原理は小銃と変わ
りません。74TKからはFCS(Fire Control System、射撃統制装置)
が装備され、照準装置は、FCSが射撃を統制するのに必要な情報収
集するための器材(センサー)の1つとなります。呼び名も照準
具となります。しかし、目標を光学的(最新の技術ではミリ波レ
ーダーもつかわれます)に捉え、目標までの距離や目標の移動速
度に応じて砲に射角と方位角を付与して射撃するという原理は全
く変わりません。人がやるか機械がやるかの違いです。
74TKからFCSが装備されたと説明したとおり、61TKは直接照準眼
鏡で照準していました。これは、小銃のスコープと変わりありま
せん。ただし、射距離に応じた射角の付与や、移動目標を狙うた
めに、十字線のほかに射距離や目標の移動速度に応じた数値が刻
まれています。
弾丸は撃ち出された後、重力により落下します。0.5秒で1.2m、
1秒で4.9m、2秒で19.6mです。弾丸の速度が1,000m/sの場合、500m
先の目標であれば1.2m落下し、1km先の目標では4.9m落下すると
いうことです。2,000m/s近い初速のAPDSFSでも、目標が2km先に
あると5m近く落下するということです。したがって、目標までの
距離を正確に測定しないと目標には命中しません。
現在はレーザー測距器が個人でも簡単に手に入る時代ですから、
正確な測距が可能です。しかし、61TKの時代には、レーザー測距
器は未だ登場していません。この時代は光学式の測距器を使用し
ていました。
光学式の測距器は、長い筒(1m以上)の形状をしており、両端
に目標を捉えるレンズ(対物レンズ)が、中心付近に両目で目標
を見るレンズ(接眼レンズ)があります。左右の対物レンズで目
標を捉えて左右の接眼レンズで覗くと、目標が2つに見え、離れ
ています。目標が遠くなるほど見た目の目標の間隔が開きます。
この2つ見える目標を一致させることによって距離を測ります。
原理は三角測量と同じで三角関数、ピタゴラスの定理により求
められます。詳細については省略しますが、現在でも距離を測る
のに幅広く使われている原理です。ちなみにGPSでの自己位置測定
もこれらの原理が使われています。
61TKは、この直接照準眼鏡による射撃だけでしたが、実はFCSを
装備する74TK以降の戦車にも直接照準眼鏡が装備されています。
FCSが故障した場合や電源系統が切断した場合には、眼鏡で目標を
直接狙って射撃できます。90TKや10TKに直接照準眼鏡が装備され
ていることは意外と知られていません。
なお、戦車の照準では、射角は砲部(砲身、駐退復座装置、閉
鎖機などが一体化した部分)を上下することにより、方角は砲塔
を回転させることにより行ないます。74TK以降は電動モーターで
砲部や砲塔を動かしますが、61TKでは油圧が使われていました。
動力はすべて油圧で作られているため、砲塔内は油圧パイプだら
けです。手動で砲塔を回す場合も油圧です。レバーを回すと油圧
が発生する仕組みになっていました。これもあまり知られていな
い技術です。
照準とは話題が変わりますが、61TKは鉄道輸送できるようにサイ
ズや重量が考慮されていました。当時の輸送手段の主体は鉄道で、
国鉄(JRの前身で国が鉄道を運営していました。職員は公務員で
す)が全国各地で鉄道を運営していました。現在では、自動車が
普及したため、荷物輸送手段の主体がトラックへ人の移動手段が
自家用車へと移り、地方の多くの路線が廃止されましたが、当時
は大きな工場や自衛隊の補給処まで幹線からの引き込み線があり
ました。(駐屯地の中まで貨物車が入ってきました)
当時は、米ソ冷戦時代で、ソ連の北海道侵略への対応が真剣に考
えられていました。平時は全国各地に戦車部隊を配置し、有事は
全国の戦車を北海道に集結させるため、戦車の輸送手段を確保す
るのは必須です。現在、戦車の輸送手段はセミトレーラです。し
たがって、戦車輸送に影響を与えるのは道路交通法と橋梁や道路
の強度です。陸上兵器の設計は多くの国内法に制限を受けますか
ら、兵器としての合理性がないと思われるような設計があった場
合は、国内法の影響がいちばん大きいと考えていいと思います。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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