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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
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こんにちは、エンリケです。
四十七回目の面白兵器技術です。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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意外と知られていない面白兵器技術(47)
「火器の照準」(直接照準 その1)
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
陸自兵站、補給の「保管」の続きです。前回、師団クラスが作
戦するために必要な補給品を保管するのには、広大な地積が必要
で射爆撃から防護する措置をとらなければならない話をしました。
特に弾薬については、誘爆の危険性があるため非常に広い地域に
分散して配置します。また、砲迫の射撃や航空機の爆撃があって
も1発の射爆撃で多くの弾薬に被害が及ばないように、1カ所に
集積する量も限定しなければなりません。(1カ所に集積した弾
薬を集積群とよびます)
弾薬の集積群を分散する時は、まずは誘爆を考慮し、1つの集
積群が爆発したときに他の集積群が誘爆しない距離をとります。
そして、射爆撃を受けたときに、1発でいくつかの集積群が被害
を受けないよう、榴弾や爆弾が爆発して効果が及ぶ範囲に2つ以
上の集積群が入らないように分散します。この際、部隊に補給し
やすいように配置することも重要です。部隊は車両で弾薬を受領
するため、道路沿いに集積群を作るのが一般的です。
地面を掘って地下に集積すれば、誘爆や射爆撃の被害も局限さ
れますから集積群同士の距離は縮まります。保管に必要な地積も
小さくてすみます。ただし、師団クラスが使用する量の弾薬を地
下に集積する工事量は膨大です。数か月の準備期間がなければ無
理でしょう。また、地下に集積された弾薬を交付するには、車両
が入るスロープをつけるか、最低限、人が出入りできる階段は必
要です。その分、工事量も増えます。したがって、通常は地上に
積み上げる方式で集積します。
弾薬だけでも、保管のために非常に大きな地積と隊力が必要です
が、このほかに、量が多い補給品としては、燃料、糧食、整備用
部品、築城資材などがあります。弾薬と燃料以外の補給品につい
ては誘爆などの危険性がないため、分散配置にそれほど気を遣う
必要はありませんが、射爆撃の被害を局限する着意は必要です。
また、弾薬や燃料については法令の規制があるため、作戦の必要
性だけで集積はできません。
さて、本題の兵器技術ですが、火器の話題に戻ります。火器で射
撃して目標に命中させるためには照準が必要です。最も単純な照
準装置を持つ拳銃から、コンピューターを活用した戦車まで順に
説明していきます。今回は拳銃、小銃の照準装置です。
▼拳銃、小銃の照準装置
再び火器の主要な構造・機能の説明に戻り、照準装置、射撃統制
装置を説明します。本連載も終盤を迎えますが、1年近くの連載
で陸上兵器のさまざまな技術を紹介してきました。途中何度も説
明しましたが、これまで紹介した広範囲な兵器技術に関する知識
を持つのは、陸上自衛官でもごくわずかです。軍事技術の知識と
して十分自慢できるレベルであると保証します。
銃や砲で弾を目標に当てるには、銃身を目標に向け目標までの距
離応じた射角をとる必要があります(打ち出された弾丸は重力で
落下するため、射距離が長くなるほど射角を大きくします)。ま
た、銃身が左右のブレなく目標に向いていなければなりません。
このために必要なのが照準装置です。
小銃や拳銃の照準は、最も構造が簡単な照門と照星により行ない
ます。銃の前方、銃口付近にある凸型のものが照星で、銃の後方、
射手の目の近くにある凹型または円状のものが照門です。照門と
照星を一致させ、照星の凸型の先端付近を目標に合わせることで
銃口が目標に向きます。(「照星と照門」で検索)
小銃に射距離に応じた射角を与えるように、照門が上下します。
照門を上げるほど射距離は長くなります。また、照門は左右にも
動きますが、機械的なブレや銃身のわずかな曲がりによる、照準
装置と銃口の向きのズレを調整します。
拳銃は、有効射程が短いため照星と照門が固定式なのが一般的で
す。テレビや映画では50m以上距離がある目標を拳銃で撃つ場面
が出てきますが、現実には命中することはありません。せいぜい
20~30mが妥当なところです。
照星と照門を使って目標を照準するのは、熟練した技術が必要で
す。照星、照門、目標の3つを一直線に合わせなければなりませ
ん。初心者に多いのが、照星と目標を合わせるのに気をとられて
照星と照門が合わなくなることです。これをレンズの力を利用し
て、照準装置の1点と目標の2つを合わせることにより、照準を
簡単にしたのがスコープやドットサイトです。
スコープは照準眼鏡、狙撃眼鏡とも呼ばれるもので、馴染みの深
いものは覗くと十字の線が見え、十字の真ん中に目標を合わせる
ものです。望遠鏡や双眼鏡のように目標が大きく見え、遠くの目
標が狙いやすくなります。
ドットサイト(ダットサイトとも呼ぶ)は、あまり馴染みがない
かもしれませんが、1点で照準できるのはスコープと同じです
(「ドットサイト」で検索)。違いは、目標を拡大していないの
と、目をレンズに接眼する必要がないこと、目標に合わせるのが
光の点(赤が多い)であることです。この点を目標に合わせるだ
けですから素早い照準が可能です。
スコープは遠い目標を正確に撃てる目的で作られています。した
がって、3~5倍の倍率で目標を拡大します。目標が大きくなる
と狙いやすくなりますが、視野が狭くなるというデメリットがあ
ります。近距離の射撃には使えません。
スコープとは違って、ドットサイトは、照門、照星、目標の3点
照準のわずらわしさを軽減して、光の点と目標の2点照準にする
ことで、正確で素早い照準をすることが目的です。したがって、
目標を拡大せず視野を確保することを重視しています。近距離射
撃には威力を発揮します。
さらに、近距離射撃で有効なのはレーザーサイトです。銃に取り
付けられた装置からレーザー光を目標に当てることにより、照準
姿勢をとる必要がありません。どのような姿勢からでも射撃でき
ます。近距離では、ドットサイトよりもさらに迅速、正確な照準
ができます。
これも、テレビドラマや映画で遠距離からの狙撃でレーザー照射
される場面がありますが、射撃する位置が発見されるためレーザ
ー照射のメリットはありません。狙撃用スコープ以上の効果は得
られません。
なお、移動目標を射撃する場合は、目標の未来位置(弾が目標に
到着するときの目標の位置)を予測して射撃することになります
が、車両などの大きな目標でなければ精度は極端に下がります。
この場合は、弾薬に曳光弾を使い(通常、数発に1発の割合で曳
光弾を装弾します)、着弾する場所を確認しながら照準を目標に
追随させます。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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