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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気
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我が国の歴史を振り返る
─日本史と世界史に“横串”を入れる─(19)
「明治維新」と諸外国の関わり
宗像久男(元陸将)
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はじめに
皆様、あけましておめでとうございます。「平成」最後の新年
をいつもとは違う気分で迎えられた方も多いのではないでしょう
か。皆様とともに、新しい時代の我が国の安寧をお祈り申し上げ
たいと思います。
新年最初のメルマガなので、昨年末から続いている話題に少し
触れてみましょう。韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に火
器管制レーダーを照射したことに端を発し、すでに外交問題に発
展した日韓関係です。両国の関係は、徴用工の問題などもあって、
今後ますます「厳しいステージ」に進むことが心配されます。
私は元自衛官であり、しかも対空ミサイルや機関砲を取り扱う高
射特科職種に所属していましたので、この種レーダーの照射につ
いては、その運用も技術も熟知しています。よって、これまで両
国から公開された映像などを観れば「誰がウソを言っているか」
は明白で、議論の余地はないと思っています(当事者たちも当然、
知っているはずです)。
これ以上の深入りは止めることにして、それよりも懸念します
のは、当事者として「軍人」(我が国の場合は「自衛官」)が絡
んでいることです。私は、現役時代、「日韓防衛交流」を何度も
経験したことがあります。当時の韓国陸軍高官たちとお互いに胸
襟を開いて交流を図り、個人的な友情を深めた人もおります。そ
して、両国の歴史、時の政権の政策、憲法上の制約、互いの国民
感情などの諸事情を乗り越えて、「いざとなったらできる範囲で
協力しよう」と誓い合ったものでした。
以来、どのような政権になろうとも、軍人同士、つまりミリタ
リー・ツー・ミリタリ-はお互いに理解し合い、信頼し合ってい
るはずと思いつつ安心していました。今回、誰の命令で何の目的
でレーダー照射をしたのか、その事実を現場からどのように報告
したのか、誰の意図で公表されているような韓国政府の対応とな
っているのかなど一切不明ですが、当事者たちの心情を思うと胸
が痛みます。しかし、さらに恐れるのは、昔と違い、彼ら軍人た
ちもまた「反日無罪」の境地になっているかも知れないというこ
とです。もしそうであれば、事態は深刻です。まだそうはなって
いないことを祈るばかりです。
日本と朝鮮半島の本格的な関わりは、明治時代から始まります。
不幸な歴史です。本メルマガでも折に触れて取り上げて参りまし
ょう。
次に、前回の「出入国管理法改正」関連でU様から反対の理由
をいただきました。その趣旨は、(1)労働力不足は賃金上昇の
絶好の機会である、(2)中国人や韓国人には国防動員法が適用
される、(3)長野オリンピック時の中国人暴動、(4)(大量移
民後の)ヨーロッパのテロの危険などです。当然とも言えるご意
見に対して反論するつもりはありません。
しかし、「それらを乗り越えなければ我が国の未来はない」とい
う確信が変わらないこともまた事実です。少子化にともない、我
が国の生産年齢人口(15歳から65歳)の長期的減少は避けら
れません。高齢者でも女性でもAIでも、そして外国人でも、
「労働力として使えるものは何でも使う」という強い意志と実行
が、我が国の発展のために必要不可欠であると私は考えます。
もう1点付け加えておきましょう。私は現在、都内某大学で非常
勤講師としてベトナム人、ネパール人、中国人などの留学生に週
に1度、講義しております。彼らが何を求めて日本に来たか、な
ぜ日本を選んだのか、どのような人生設計を持っているか、など
については肌感覚で知っています。一概に決めつけることは困難
ですが、彼らと接する限りにおいては、多少未熟ではあっても
「日本で働きたい」との意欲は本物です。私は、「日本に来てく
れてありがとう」との感謝の気持ちをもって彼らと接することに
しております。
もちろん、U様が指摘された懸念に対する万全な処置も必要でし
ょう。しかし、将来の労働力不足に対する抜本的な対策こそが我
が国の喫緊の課題ではないでしょうか。読者の皆様にもぜひ真剣
に考えていただきたいと思います。U様、貴重なご意見ありがと
うございました。
▼薩長側のイギリスと幕府側のフランス
さて前置きが長くなりました。本題に入りましょう。幕府の威
信の凋落と尊王攘夷運動のなか、「公武合体」から一発逆転を狙
った「大政奉還」が失敗に終わり、「王政復古」の大号令を経て、
「戊辰戦争」「版籍奉還」そして「廃藩置県」に至る『明治維新』
の一連の流れについては、歴史物語や大河ドラマに任せるとして、
本シリーズらしく「『明治維新』と諸外国と関わり」に焦点を絞
り、振り返ってみましょう。
植民地を拡大し、世界の覇権争いを繰り広げる西欧列国にとって、
日本は極東に残された最後の“標的”でした。地理的にも東アジ
アを牽制できる要所に位置し、すでにある程度の都市や商工業が
発達していた日本と通商条約を結び、実質的に支配することが各
国の共通した狙いだったのです。
他国に先駆けて日本の開国を実現した米国が「南北戦争」にかま
けている間、優先支配を企図したのは、「安政の5カ国条約」
(1858年)で米国同様の条約を結んだイギリスやフランスで
した。
イギリス駐日公使のハリー・パークスは、幕府と交渉する一方、
「生麦事件」(1862年)や「薩英戦争」(1863年)、そ
して列強四国との「下関戦争」(1863・64年)などを通じ
て急速に薩摩・長州と友好関係を深めました。両藩も最新兵器を
目のあたりにして、イギリスと手を結んだ方が得策と判断したの
でした。
坂本龍馬が仲介した薩長同盟の重要な条件の1つは「薩摩が長州
に武器を供与する」ことでしたが、龍馬に武器調達のための資金
(の一部)を提供し、イギリスから武器・弾薬などを運んだのは、
長崎のトーマス・グラバーでした。当時のグラバーは、イギリス
の貿易商社で、アヘン戦争の仕掛け人といわれたジャーディン・
マセソン商会の長崎支店長という地位にありました。
それ以外に、龍馬の有名な「船中八策」そして「江戸無血開城」
などにもイギリスが陰の力となったとの説もありますが、18年
間駐在し、「日本人の手による政変」を実現したパークスは、
「明治政府を最初に承認した外国人」となりました。
それに対して、フランスは、当初は英国と共同歩調をとっていま
したが、「生麦事件」の後始末ぐらいから親幕府的立場をとるよ
うになりました。駐日公使ロッシュは、英国に対抗して独自の対
日政策を打ち出し、幕府の政策に積極的に関与するようになった
のです。
ロッシュは、フランス式の幕府陸軍を建設し、軍事顧問団を派遣
して訓練も開始しました。そのための資金の借款まで用意したの
です。また、幕政改革を提言し、その一部は「慶応の改革」とし
て実現しました。さらに「鳥羽・伏見の戦い」(1868年)の
敗北後、江戸に戻った徳川慶喜に対して、ロッシュは3度にわた
り再起を促したと言われますが、慶喜に拒否されました。
「戊辰戦争は英仏の代理戦争だった」との見方もあります。双方
に武器・弾薬を売って利益を得ようとした大小さまざまな欧米の
商社(「死の商人」といわれます)が存在したことは確かですが、
パークスの「局外中立」との提案に対して、ロッシュもこれに従
うしかなかったというのが事実のようです。
やがて、フランス本国の対英協調政策への変更によってロッシ
ュは解雇されますが、軍事顧問ブリュネは一個人として榎本武揚
に合流し、「函館戦争」(1868~69年)に従軍しました。
このブリュネは、映画『ラストサムライ』のモデルと言われてい
ます。「明治維新」にはまだまだ知られていない「物語」が存在
しているような気がします。次回から何回かにわけて、「明治維
新による国家の大改造」を取り上げます。ご期待下さい。
(以下次号)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸
上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士
課程卒。
陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1
高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副
長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。
2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』などに投稿
多数。
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