こんばんは、エンリケです。
今年最初の「渡邉陽子のコラム」です。
「戦車射撃競技会」の第七話です。
きょうも面白いです。
ではさっそくどうぞ
エンリケ
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『ライター・渡邉陽子のコラム (214)
― 戦車射撃競技会(7)―
渡邉陽子
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〇〇さま
こんばんは。渡邉陽子です。年末年始は原則としてテレ
ビを見ないので、好きな音楽だけにどっぷり漬かれた正
月でした。2019年もどうぞよろしくお願いいたします。
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■戦車射撃競技会(7)
第7後方支援連隊第2整備大隊第3戦車直接支援中隊
(以下3DS)の練度確認のお話の続きです。
このような練度確認が目的の訓練はそう頻繁に行なえる
ものではありません。短い日程といえども隊員は準備期
間から気力体力を必要とされるし、支援要員も不可欠、
あまり頻繁すぎると隊員の目標も不明確になりかねませ
ん。
これは3DSに限らずどの部隊でも共通して言えること
です。練度確認ばかりに追われ、第一線基準という方針
に影響が出てしまっては本末転倒です。限られた機会に
目的意識を持って臨むというのが正しいあり方と言えま
す。
練度確認に参加せず終始競技会の支援を行なう隊員の一
部は、ちょうど工場で73連隊第3中隊の戦車の整備を行
なっているところでした。73連隊のシンボルマーク「勝
兜」を新しくペイントし直しているのは競技会に備えて
のこと、乗員もさぞや気合が入ることでしょう。その3
中隊の隊員も工場にやって来て、履帯(いわゆるキャタ
ピラですね)の一部を自分たちで整備しています。
ひときわ大きな音がしているところでは、転輪交換が行
なわれていました。この日はゴムが消耗している転輪に
ついて交換するということで、隊員達が慣れた手つきで
作業を進めていきます。新たな転輪をはめ込むときはハ
ンマーで叩いてから電動ドリルを何度も繰り返しかけ、
しっかりと固定していきます。今回は競技会だからわざ
わざ転輪交換したというわけではなく、通常の整備とし
て交換したそうです。
普段は1両につき10本の転輪を交換する場合、2~3人
で作業して2時間ほどで終わるそうですが、新米がいる
場合は教えながらの作業になるので、もう少しかかると
か。また、重量物を扱うので、ほんの少しの気の緩みが
指を潰すといった大けがにつながりかねないため、作業
には万全の注意を払っています。
整備する隊員たちから見て、73連隊は「愛車心を持って
使ってくれている」とのこと。それに応えるために、安
心して乗ってもらえるよう、整備魂をもって整備に当た
るのだそうです。実際に乗車する隊員からすると、整備
の隊員に「思いきりやってきてください。もし故障して
もうちがちゃんと直しますから」と言ってもらえると、
実に心強く頼もしく、そして「ぐっとくる」とか。
一方、演習場内の統裁部では、先行班の動きを逐一モニ
タで確認しています。部隊にはさまざまな状況が付与さ
れ、深夜になっても仮眠どころか休憩することもままな
りません。今回は一夜の行程ですが、長い演習において
は、いかに部下を休ませるかも指揮官の大事な任務です。
日中降り続いた雨は上がり、夜は雲の合間から月が見え
隠れするほど天気は回復しました。
月明かりだけが照らす演習場で、午前0時近くに戦車か
らエンジンを取り出すという夜間整備作業が行なわれま
した。
戦車1両とクレーン車がかろうじて進入できるわずかな
平地で、戦車内からクレーンでエンジンを吊り上げます。
目視するのも難しいような暗闇の中、手元の小さな明か
りだけを頼りに、ぬかるみに足を取られないよう気をつ
けつつクレーンを操る隊員とあうんの呼吸で慎重にエン
ジンを取り出す作業は、野整備の真骨頂ともいえるもの。
しかしこの現場を視察していた大隊長によると、これで
もまだライトが明るすぎるとのこと。手元だけを照らす、
ごく弱いあのライトが!? こちらの驚きをよそに、こ
れは課題として今後の訓練に反映され、来年度の戦力化
完成に備えることになるのです。
(戦車射撃競技会おわり)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
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を刊行。
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