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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊
した即応予備自衛官でもあります。
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堂下さんのデビュー作
『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクトリン」で勝利する─』
への読者反響の一部です。
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「難しい内容をかみ砕き、例示も豊富、コンパクトにまとまって
いる」
「早速、大学の授業で活用、図書館にも入れさせてもらいました。
経営戦略、組織コミュニケーションにも有益な内容です。」
「作戦を組立てる側から理解でき目から鱗でした。防衛、外交関係
者、さらには一般の読者にとっても有益な内容を、詳細かつ分かり
やすくまとめられている。」
「政府機関の政策決定や企業経営者の意思決定にも、広く応用で
きるヒントが含まれている。」
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『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクトリン」で勝利する─』
http://okigunnji.com/url/352/
こんにちは、エンリケです。
「海軍仕事術」の五回目は、
実際役立つ話が満載の
新年第一回目の記事です。
「根拠なき自信」
は、人の世の真実のひとつで、
ものすごく大事なことと思います。
知った人からうまくいく、という感じです。
あなたはどうでしょう?
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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【戦う組織のリーダーシップ─今に生きる海軍先輩の教え─(19)】
「海軍仕事術(その5)「センス・オブ・ユーモア」
─ユーモアを解せざる者は海軍士官の資格なし─
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
あけましておめでとうございます。
皆様健やかに新しい年をお迎えのことと思います。
日本周辺波高しといわれて久しく、昨年は自然災害も大変多かっ
たのですが、本年が平穏で平和な年となるよう皆様とともに祈り
たいと思います。「戦う組織のリーダーシップ」の連載も続けま
すので、よろしくお付き合いください。
今年は亥年、ついに年男になりました。いただいた猪オンパレー
ドの年賀状の中に朱色で「笑門招福」と大書したものがありました。
いい言葉ですね。海軍でもユーモアのセンスは大事にされていま
した。新年はこの話題から始めたいと思います。
▼ユーモアは柔軟性の尺度
前回は「アングルバーじゃだめだ、フレキシブルワイヤーでなけ
ればならない」という言葉を紹介しましたが、これは「心を柔軟
に、ユーモアを解する余裕をもて」ということでもあります。海
軍では、「ユーモアを解せざる者は海軍士官の資格なし」といわ
れていました。長期間の洋上生活の一服の清涼剤として、また艦
内生活の人間関係の潤滑油として重要視されたのだと思います。
ユーモアを解さないと戦に負けるのかと問われると、直ちにそれ
ほどのことはないと思います。しかし、作戦指揮の面から考える
と、心の感受性、思考の柔軟性を保つことは不可欠だといえます。
拙著『作戦司令部の意思決定』では、情勢の変化に合わせて作戦
の方針を柔軟に検討し、複数の選択肢の中から最善のものを選ぶ
ことが戦いに勝利する要件であり、リーダーの役割であるとしま
した。状況の変化を正しく感じ取り、それに合わせて合理的な選
択肢を考えつく限りにおいて作戦は続行できますが、選択肢がな
くなれば「投了」、すなわち敗北ということになります。
どんな合理的な選択肢にも一定のリスクは付きまといます。その
ような場合にリスクを軽減、回避するための工夫をする努力は楽
観的な思考からしか得られないのではないでしょうか。「失敗す
るかもしれない、きっと失敗する」という悲観主義からはリスク
との戦いの道筋は見えてきそうにありません。
▼大切な楽観主義
リスクとの戦い、不安や恐怖の克服のためには、楽観的な姿勢や
ものの考え方は大変重要だと思います。脳科学者の茂木健一郎氏
は次のように述べています。
人間の脳は、もともと楽観的にできている。楽観的なくらいがち
ょうどよく、そのような状態で初めて脳が十全に機能するのであ
る。「あなたはあとどれくらい生きると思いますか?」「宝くじ
に当たる確率はどれくらいだと思いますか?」様々な質問に対し
て、人々は実際よりも楽観的に答える傾向がある。脳は図々しく
できているのだ。
このような脳内の「楽観回路」は、生きる上で意味があるからこ
そ進化してきた。脳は、楽観的なくらいでちょうどいいのである。
なぜ、楽観回路が助けになるのだろうか? 生きることは不確実
性に満ちている。どうなるかわからない際に、悲観的では、行動
することができない。あまりにも不安や恐怖が強い場合には、
「フリージング」と呼ばれる、脳の働きが停止してしまう状態さ
えある。
生きる上では不確実性が避けられないから、悲観しているばかり
では、リスクをとることができない。思わぬ発見や、偶然の幸運
(セレンディピティ)に出会うこともできない。だからこそ、脳
は楽観的になる必要がある。
▼伸縮テスト・風流寄席
楽観的になることで脳を働きやすくするということですが、海軍
では楽観主義やユーモアをどのように戦場における不安や恐怖の
克服に役立てたのでしょうか。日清戦争の時のエピソードがあり
ます。
明治5年の創設以来、列強に追いつけ追い越せと努力してきた海
軍は、建軍20年余りで日清戦争を戦うことになりました。当時の
海軍軍人は、同じ明治の戦争として日清戦争と日露戦争を振り返
る時、初めてのことでもあり日清戦争の方がよほど恐ろしかった
と語っています。
その日清戦争における最初の海戦となる明治27年の豊島沖海
戦での話です。豪放で有名だった防護巡洋艦「秋津洲」艦長上村
彦之丞少佐(海兵4期、のち大将)は、敵を認めるとすぐ「総員
集合」を命じました。艦長は、何事かと集まった緊張の面持ちの
乗員に向かい「みんな股ぐらに手を当ててみい。縮んでるようじ
ゃあ戦はできんぞ」と大声で言い放ちました。敵を前にして恐怖
感さえ感じていた時に艦長が奇抜なことを言ったので、水兵たち
は思わず笑い出し緊張が一遍にやわらいだといわれています。こ
の海戦で「秋津州」は砲艦「操江」を降伏させるという成果を挙
げましたが、これは日本海軍が敵艦船を降伏させた最初の事例と
なりました。
時代が下って太平洋戦争開戦時のハワイ作戦での話です。単冠湾
を出撃してハワイに向かう機動部隊の旗艦「赤城」艦内は緊張感
に満ち、艦橋の南雲艦隊司令長官は眉根を寄せて何かと気を尖ら
せていました。ところが、その「赤城」の飛行甲板の一角では、
そんなことはお構いなしに大勢の飛行将校たちの爆笑が絶え間な
く湧き起こっていました。「風流寄席」ともいわれたこの集まり
は、「ヘル談(猥談のこと)」の披露の場。ある時は草鹿龍之介
参謀長も加わり「鞍馬山の黒綿檀」なる士気高揚の「講演」が行
なわれたそうです。パールハーバー空襲の2日前には「膝頭」
「天地創造の始め」など長短取り混ぜ200余の「名作」がガリ版
刷りの分厚い印刷物になり、1冊10円という高値がつけられた
ものの飛ぶように売れたのでした。その後、この飛行将校たちが
パールハーバー上空で大活躍したのはご承知のとおりです。
士気を鼓舞する司令官の訓示や「Z旗」のような象徴ももちろん
大事なのですが、明日をも知れぬ戦闘の現場においては、このよ
うな身近でわかりやすいユーモアが人の心にストレートに届いた
ということだと思います。
▼高松宮のユーモアセンス
海軍のユーモアが特定分野に偏重していたととられても困ります
ので、普通の例も見てみます。阿川弘之氏が『高松宮と海軍』の
中で紹介する高松宮(海兵52期)のエピソードです。
大正13年、兵学校卒業、巡洋艦「古鷹」乗組を経て戦艦「比叡」
乗組を命ぜられた宮様少尉は、青年士官らしくAlways on deck。
当直もやりたいし、内火艇のチャージ(艇指揮、筆者注)もやり
たいのに、すべて特別扱いでやらせて貰えない。昭和2年8月2
8日の日記。
「今日は当直日なり。当直は代わってもらったが、チャージ位良
さそうだと思って行ったら、立花少尉(同期生)にドヤサレた。
愈々為すべきことなしか。「する」と云ってさしてもらへたこと
はこの一月何んにもない。『比叡』の中に住んでる油虫と大差な
し」
「私は比叡の油虫 立派なお部屋に納まって たらふく食ったら
ちょろちょろと ふざけ散らして毎日を 遊んで暮す有様は 他
人が見れば羨(うらや)めど 我身となれば徒食の 辛さに苦労
の益す許(ばか)り 早く私も人並みに 比叡のために働いて
大きな顔して闊歩して 愉快な日々を送りたし」
阿川氏は、「伝統の気風によるものか、生まれながらの御資質に
よるものか、それは分からない。分からないけれども、高松宮は
不思議なユーモアのセンスの持ち主であった。」と記しています。
▼楽観的に行動してこそ
海軍のユーモアの話は以上です。ところで茂木氏によると、脳の
機能として感情や気分を生み出す脳の古い部位は、理性を司る脳
の新しい部位よりも先行するので、まずは感情が生まれて、それ
を理性が整理し追随する仕組みになっているのだそうです。
したがって、成功するために大切なのは、まず自信をもつことで
あり、それには根拠などはいらない。必要なのはそれを裏付ける
ために懸命に努力することだとして「根拠のない自信を持って、
それを裏付ける努力を尽くそう。楽観的に行動してこそ、人生は
面白くなる」と言っています。
この言葉などは、1年の計を立てるにあたり味わうべき言葉では
ないかと思います。私も今年1年、楽観主義を忘れずにゆきたい
と思います。
本年もよろしくお願いします。
(つづく)
(どうした・てつろう)
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【著者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共政策論修士、
防衛研究所一般課程修了。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、
護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸
上勤務として内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)出向、米中
央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長(初代)、幹部候
補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴
地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。
PS
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おきらく軍事研究会
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