こんにちは、エンリケです。
ことしさいごの美佐日記です。
余韻が残ります。
エンリケ
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桜林美佐の「美佐日記」(8)
「ダイソン降臨!」
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で8回目です。
ついに、わが家のガス台が壊れました。ずっと点火がうまくいか
ず、おもいっきり息を、それも何度も吹きかけて、やっと火がつ
く状態でした。かなりの肺活量を使うことが非常にストレスにな
っていましたが、ガス台のほうも、もう引退させてくれという感
じだったのかもしれません。
そこで、近所の量販店に行って来ました。ガス台を見ると、すべ
てが2万円以上ではありませんか! 悩みました。なぜなら、こ
れを買っても1年か2年、もしかしたら数か月で引っ越す可能性
があるため、LPガスの地域に移住しなければ使わなくなる・・・。
そうなると、誰かに譲り渡すガス台になる可能性が極めて高いわ
けです。
「やっぱり、こっちのガスコンロにします!」
と、ガス台を買うのをやめ、小さなガスコンロを手に取りまし
た。どうせ、魚を焼くところも使わないし、毎日、「鍋」でいい
じゃないか!と、実に男らしい決断をしたのですが、店員さんは
懸命に「これは火力が弱いので料理には向きません」「最大限の
割引をしますので」と諭してくれます。
その場で長々と言い合っていると、なんだか、だんだん私がワ
ガママで大人げがないような気がしてきてしまい、結局、手に取
ったガスコンロを元に戻したのでした。無意識に「割引」のひと
言に反応したのかもしれませんが・・・。
しかし、驚いたのはその後です。ガス台購入を決めた私は、そ
の店員さんを掃除機売り場に連れて行き、なんと掃除機も買って
しまったのです!
そういえば、掃除機をかけるとホコリを吸う代わりにホコリを噴
き出していたことを思い出し、ガス台を買った勢いで、急に思い
切りがよくなったのです。この店員さんが勧めてくれれば罪悪感
なく決意できるんじゃないか、みたいな。
このような症状は医学的に何か名前があるのかどうかは分かり
ませんが、数秒前までケチケチだった私が、1つの買うことを決
めると、もっと買ってしまおうという大盤振る舞いの人になるこ
とが時折あります。
かくして新しいガス台と掃除機、しかもダイソンを連れて帰る
ことになりました。説明のできない何かが私に降りてきたようで
す。これが「ダイソン降臨」!(これが言いたかったがゆえの長
い話になりました)
さて、わが国でも面白い現象が起きていて、閣議決定された
「防衛大綱」と「中期防」では、「いずも」を改修する旨が書き
込まれ、「空母化する」と言われています。
これまで、自衛隊側から必要性のあるものを積み上げて訴えて
もまったく通らなかったのに、突如として大胆な決定がなされ驚
きです。
テレビを観ると、これは「専守防衛」を逸脱する云々・・の解説
らしきものをどこもしていて、つい瞬間的にテレビを消してしま
ったのですが、そのことについては、反対するための話、あるい
はよく知らない人が言っている話であって、あくまで政治判断と
運用の世界であることは、この読者の皆さんには言うまでもない
でしょう。
実際のところは分かりませんが、運用構想がまったく詰められ
ていないのに上から降ってきたように見え(これが天孫降臨か!?)、
防衛省・自衛隊としてはしばらく混乱を極めることは想像に難く
ありません。
もちろん、日本が国防に本気だというメッセージ性としては大き
いとは思います。ただ、そもそもカタパルトなどを持たないもの
を「空母」と呼んでいいのかどうか疑問がありますが。
先日、佐世保で米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」がいるのを見つ
けましたが、改修しても搭載できる航空機はヘリか垂直離着陸機
のみの「いずも」は、こちらに近いのでしょう。
ところで、「ワスプ」は任務の多くが災害派遣や病院船になっ
ていると聞きます。そういうと、日本でもよく「病院船を持つべ
きだ」という話が出ますよね。私は新たに病院船を持つことには
賛成できません。
すでに「いずも」をはじめとする護衛艦には患者用ベッドや、
手術など高度な医療行為が可能な設備が整っていますので、いわ
ゆる病院船として災害時などに活用することが可能です。
ただし、これが機能するのは十分な医師や看護師がそこにいると
いう前提です。災害時に地上の病院が被害に遭うことも考えられ
るから病院船に運べばいいという発想はもっともですが、実際に
その艦艇にスタッフが揃っているのかどうかは、この議論であま
り考えられていないようです。
また、平時はどうするのか? 医師の確保や、洋上にある艦艇
で高度な医療機器を維持・管理する問題もあります。もちろん、
船を動かす人も必要です。
米軍のような外征軍は、どうしても病院船は必要になります。し
かし、日本における必要性はむしろ、一時的に艦内に収容し、そ
こで緊急治療を施し、すぐにヘリでどこかの病院に移送する処置
の蓋然性が高いでしょう。
それであれば、現在の体制のままでも役に立つはず。実際、米
軍の病院船「マーシー」の維持・管理には苦労があるようです。
何でも新しく何かを手に入れることは気持ちが盛り上がります。
でも、ロボットが運用できるわけでは今のところないので、「人」
をどうするか、維持をどうするかが常に大きな問題なのです。
とはいえ、縮み思考ではつまらないので、退官した自衛官を含
めたリタイア世代に人員不足を補ってもらうなど、柔軟な発想も
一方では大事だと思っています。ダイソン降臨!のように(しつ
こいですが)!
来年もぜひお付き合い下さい。これから迎える新しい年が皆さま
にとって希望と笑顔にあふれたものとなりますように。どうぞよ
いお年をお迎え下さい!!
<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららの『国防ニュース最前線』12月15日分は、
『フランス外人部隊 その実体と兵士たちの横顔』 (角川新書)の
著者である元フランス外人部隊・野田力さんの後編です。
12月22日分は、伊藤俊幸・元海将です。どうぞよろしくお願いい
たします!
http://www.chclara.com
(つづく)
(さくらばやし・みさ)
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。
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