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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
市川さんの新刊が好評です。
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こんにちは、エンリケです。
四十四回目の面白兵器技術です。
きょうから「戦車の面白技術」がはじまります。
陸ファンとしての鼻を高くしてくれる面白知識です。
冒頭文も面白いです。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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意外と知られていない面白兵器技術(44)
戦車の面白技術(1)
─砲身に膨らんだ部分があるのはなぜ?
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
孫子の兵法「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」「彼を
知らずして己を知れば一勝一負す」「彼を知らず己を知らざれば
戦う毎に必ず殆うし」の続きです。
この兵法を取り上げる場合、情報の重要性を語ることはよくあ
りますが、己を知ることがいかに重要であるか、己をわかってい
ないことがいかに多いかを語ることはほとんどありません。
「自分のことだから当然わかっている。わからないのは敵(自
分以外)のことだから、重要なのは情報だ」ということでしょう。
これは企業や各種団体でも同じです。市場調査やライバル会社の
情報収集に力を入れ、多くの情報を集めたけれど、分析しようと
しても社内の状況はガタガタで分析する人材もいない、というこ
とになりがちです。
自分の経験でも、いったん部隊が行動を開始し広範囲に展開する
と、部隊を掌握するのに大変な労力が必要となります。部隊の通
信のやりとりで最も多いのが、上級部隊の「○○の現在地は?」
という問いかけに対する指揮下部隊の「△△」という指揮下部隊
の現在いる場所を確認するものだ、という笑い話のような話があ
るほどです。
「灯台もと暗し」で、意外と自分のことをよくわかっていません。
現在の自衛隊もまさに同様の状況ではないかと思われます。防衛
計画の大綱の概要が報道されましたが、平成31年度概算要求でそ
の骨格が示されたとおり宇宙、サイバー、電磁スペクトル、弾道
ミサイル対応、空母と新規もののオンパレードです。
ところが、現場部隊を訪れると、「人がいない、装備品は古い、
建物は古い、射撃訓練する弾がない、射場がない、装備が故障し
ても直るまでに時間がかかる」と問題は山積みです。いくら最先
端の装備を入れても、現場部隊が動かなくては意味がありません。
小川和久先生のお話を真剣に受け止め、まずは自分の足下から固
め直さなければなりません。
さて、本題の兵器技術ですが、車両技術は前回で終了し、本連
載を開始した時の感じで戦車の面白技術を3回にわたり紹介しま
す。陸自の駐屯地を訪れたときに話題となるような話です。
▼戦車の砲身や自走榴弾砲の砲身の膨らんだ部分は何?
車両技術の説明がひと通り終了したところで、再び火器の話に
戻ります。引き続き戦車の技術ですが、ちょっと変わった装置の
紹介です。主要機構とはいえませんが、あまり知られていない面
白い技術です。
陸上自衛隊の61式から10式までの戦車(「陸上自衛隊の戦車」で
検索)、75式、99式の155mm自走榴弾砲(「75式、99式155mm自走
榴弾砲」で検索)の砲身の中間より少し後方の部分が(75式は中
間)膨らんでいます。ところが、155mm榴弾砲FH70や203mm自
走榴弾砲には、このような部分はありません。さて、この膨らん
でる部分は何でしょうか?
砲身に膨らんだ部分がある砲とない砲の違いを考えると答えが
出ます。砲身に膨らんだ部分がある砲はすべて砲塔があり、密閉
された空間で人が砲を操作します。火砲で弾を発射すると弾が砲
口から出た後に発射ガスが出ます。砲口から完全に発射ガスが出
てしまえば問題ありませんが、どうしても一部残留してしまいま
す。
砲口から弾丸が出た後に急激に吹き出る発射ガスの影響で、砲身
内の圧力は低下し、砲口から外の空気が流れ込みます。空気は、
砲口側から砲尾側へと流れるため、次弾を込めるために閉鎖機を
開けると、残留した発射ガスが砲尾から流れ出ます。砲塔内の密
閉された空間に、ガスが充満してしまいます。発射ガスは有毒で
はありませんが、決して身体にいいものとはいえません。なんと
か発射ガスを外に出す必要があります。
そうです。この膨らんだ部分は、発射ガスをすべて砲口から吐
き出すための排煙器と呼ばれる装置です。古い戦車でこの排煙器
のないものがありますが、砲塔内には発射ガスが充満し乗員は大
変だったと思われます。また、排煙器のないもので、発射ガスを
排出させるため、換気扇の役割をするベンチレーターと呼ばれる
装置がついている砲塔もあります。
排煙器は非常に単純な構造で、砲身の膨らんでいる部分は単な
る空洞です。(「砲 排煙器」で検索)排煙器のついている部分
の砲身には小さな穴が開いていて、弾丸が通過したあと発射ガス
が穴から排煙器に入り圧力が高まります。弾丸が砲口から出ると、
砲身内の圧力は急激に低下し高い圧力になっている排煙器からガ
スが放出されます。砲身に開いている穴は、砲口側に斜めになっ
ているため、ガスは砲口側に吹き出し砲身内のガスは砲口側に流
れます。
戦車砲や自走砲は、砲身が後座するタイミングで閉鎖機が開く
ようになっていますから、砲身内で砲口側に流れるガスに引っ張
られて、砲塔内の空気が砲身に流れ込みます。砲塔内の空気が砲
口から出ることで、砲身内の発射ガスがきれいになくなるという
わけです。
排煙器については、自衛官でも知らない人がいるくらい専門的
な装置です。陸自の駐屯地には61式戦車や74式戦車が展示されて
いますが、砲身についている排煙器は一目でわかります。記念行
事等の駐屯地解放日(誰でもが入れます)に、知人と訪れて説明
されれば、皆さん、びっくりされることでしょう。第1回目で紹
介した61式戦車の砲口制退器も目立つ装置ですから、2つの装置
を説明してあげれば、二度、びっくりです。
(次号に続く)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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