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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【10月6日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「イージス・アショアは再検討するべき~装備品
老朽化で災害派遣に支障が出る!?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
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こんにちは、エンリケです。
三十九回目の面白兵器技術は、
「戦車の車両技術」の二回目です。
冒頭文は必読です。
さっそくどうぞ。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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意外と知られていない面白兵器技術(39)
戦車の車両技術(その2)
「戦車の定義(2)──その国の最強陸上兵器が戦車?!」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
前回、平時の兵站について少し説明しましたが、兵站の話の前
に、まずは戦う組織としての陸上自衛隊の全体像に関してお話し
します。陸海空自衛隊では、組織作りの考え方が違います。当然、
戦いとなる場所の違いが大きいわけですが、保有している兵器の
特性も大きく影響しています。海上であれば、艦艇という一つの
兵器の中にすべての機能が集約されていますが、陸上ではバラバ
ラです。そのために、さまざまな部隊があります。
陸自の部隊は、大きく3つの機能に区分されます。戦闘部隊、
戦闘支援部隊、後方支援部隊です。そして、それぞれの機能ごと
の職種があります。部隊を構成する職種は、おおむね機能で一致
しています。つまり、戦闘部隊を構成する隊員はほとんどが戦闘
職種です。普通科(歩兵)連隊であれば普通科職種の隊員で構成
され、通信大隊であれば通信科職種の隊員で構成されます。
戦闘部隊とは、普通科(歩兵)部隊、戦車部隊、特科(砲兵)
部隊、高射特科(対空)部隊で文字どおり敵と戦闘する部隊、敵
と矛を交える部隊です。戦闘系のゲームの世界では、ほとんどが
戦闘部隊ですが、現実の世界では戦闘部隊だけで戦うことはでき
ません。これを支える、支援する部隊が必要です。戦闘支援部隊
と後方支援部隊です。(続く)
読者のYさんから、ご所見をいただきました。ありがとうござい
ます。その中で、第2次大戦中のドイツ軍の兵器の補給整備性が
悪く、ドイツ軍の敗戦の一つの要因であったことを紹介していた
だきました。兵站に関しては、旧陸軍の例だけではなく戦史から
学ぶことが多々ありますが、それが実際の安全保障政策に活かさ
れていないのが、日本の現状です。
さて、本題の兵器技術ですが、車両技術の6回目、戦車の定義
の2回目です。陸上兵器の中で最強かつ最も人気があるのは戦車
です。自分が防大を卒業して自衛官になったのが1983年ですから、
74TK(74式戦車)が最新の戦車で90TKの開発が開始された時期で
す。その頃、戦車は誰からも疑われることのない最強兵器でした。
ところが、自分が防衛省陸幕で仕事をする頃は削減すべき陸上戦
力の第一優先となっていました。それが今でも続いています。残
念なことです。
▼戦車の機動力と防護力
前回の引き続きで戦車の定義が2回にわたってしまいましたが、
それだけ戦車とは定義が曖昧な兵器だといえます。当然、昔は戦
車と呼べたものも、現代の基準では戦車とは呼べません。旧陸軍
の戦車に比べれば、陸自が保有する偵察警戒車ははるかに性能が
上です。本連載では、細部にこだわって定義していますが、「そ
の時代、その国の最強陸上兵器」と定義するのが的確かもしれま
せん。
前回は火力について定義しましたから、後は機動力と防護力で
す。火力に関しては、火砲と弾薬の特性、性能で明確に定義でき
ますが、機動力と防護力は非常に曖昧です。最近では、機動戦闘
車も「装輪タイプの戦車」と呼ばれる場合がありますから、国に
よっても定義が異なるといえます。防護力については外観からは
性能がわかりませんし、装甲性能の多くは秘密事項ですから明確
にすることは困難です。
ソ連製のT62をいまだ主力戦車として使用している国もありますか
ら国ごとの差異も非常に大きいものがあります。たぶん世界共通
の定義というのは不可能なのではないかと思います。そこで、機
動と装甲については日本を基準として定義することとします。
火力を主体とするなら、80mm以上の口径で徹甲弾が射撃できる直
接照準火砲(戦車砲と呼ぶ)を積んだ装甲車を戦車と定義するこ
ともできます。しかし、防護力を要素として考えた場合、自走榴
弾砲のような軽易な装甲の車両に戦車砲を積んだものを戦車と呼
ぶのは問題があります。
戦車の戦闘主対象は敵の戦車です。したがって、敵戦車の射撃に
メイン装甲が対抗できることが基準になります。現在であれば、
世界の主流である120mmのAPDSFSでしょう。APDSFSと一口にいって
も105mmと120mmでは威力がまったく違いますし、同じ口径でも新
開発の弾は性能が上です。また、装甲の防護性能は秘密とされて
いますから、数値で定義することはできません。概念として定義
するしかないのがつらいところです。
「現在であれば」と前置きしましたが、あくまでも「開発した時
代の敵戦車の射撃に対抗する」というのが、基準となります。日
本でも74TKが現役として使用されています。装甲性能は秘密事項
ですが、最新のAPDSFSに対抗できないのは一般の軍事常識のレベ
ルでしょう。
装甲に関しては、今後、砲塔のない戦車や無人の戦車が登場して
くると、定義がまったく変わってきます。戦車の装甲が守る第一
のものは乗員の命です。無人になれば、防護性能は重視されなく
なります。レールガンの実用化や戦車の上面からのトップアタッ
クが一般的になれば、装甲による防護力自体が現実的でなくなり
ます。戦車をあえて定義する面白さはこのあたりにもあります。
最後に機動力です。機動力で一番に議論になるのは、装輪タイ
プを戦車と呼ぶかどうかです。海外兵器では、装輪タイプの戦車
と呼ばれるものも多くありますが、日本では「16式機動戦闘車」
という名称で、「16式戦車」ではありません。防衛大綱の別表
に戦車の数量が規定されていますから、戦車と定義することで別
表の数量により制約を受けるとか、戦車そのものの必要性が理解
を得られないといった行政的な理由もあるでしょうが、機動力の
観点からも戦車と定義するのは疑問があります。
装輪車と装軌車では、地面との接触面積が違いますから泥濘地
での走破性は大きく異なります。また、窪地を越える能力や小山
を超える能力も装軌車が有利です。つまり、舗装された道路を長
距離走行する能力は装輪車が有利ですが、戦場で実際に戦闘する
ときの機動は装軌車が圧倒的に有利です。
戦車に求められる火力、機動力、防護力とは、戦闘における要
素であり、戦場までの戦闘準備間の要素ではありません。実際に
戦って勝つために必要な能力です。戦場において、相手に対して
有利な位置に移動するには、道路から外れた田や畑、泥濘地など
でも迅速に移動できる能力が必要です。そのためには、装軌車で
あることが必須条件でしょう。
これは、国土、地形によっても異なります。草原地帯や、低木
が多い砂漠地帯で運用する場合には、装輪車でも十分な路外機動
力が得られます。反対に、道路を外れると、田畑がほとんどの日
本のような地形では、装輪車で路外を走行するのは困難です。し
たがって、日本において戦車といえるのは装軌車であることが重
要な要素であるといえます。
2回にわたって戦車を定義してきましたが、最強の陸上兵器で
ある戦車を製造するには非常に高い技術力が必要です。世界で戦
車を国産できる国は一桁で、日本はその中の一国です。このよう
な技術を持つことも国の戦力(防衛力)であり、この技術力を維
持するのは、安全保障上、重要な政策です。
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube
「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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