配信日時 2018/10/25 08:00

【我が国の歴史を振り返る ─日本史と世界史に“横串”を入れる─(9)】「長く続いた“太平の世”」 宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
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こんにちは、エンリケです。

今日も面白い内容です。


さっそくご覧ください。


エンリケ


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我が国の歴史を振り返る
 ─日本史と世界史に“横串”を入れる─(9)

長く続いた“太平の世”
宗像久男(元陸将)
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□はじめに

 M様 Emperorと王の違いに関するご丁寧な指摘、あり
がとうございました。言われるとおり、ドライな西欧列国が秀吉
や家康を王ではなく、Emperorと呼称したところに、2人
が当時の天皇を凌駕する「力」を保有していたという我が国の実
情をよく認識していた証拠だと思います。他方、明が秀吉を「日
本国王」に封じたことから、「慶長の役」が起きたのは必然だっ
たとの指摘を対比しますと、我が国に対する東西の認識の差異が
よく理解できるなど、“歴史の奥の深さ”に改めて思いが至りま
す。

さて、個人的な体験で申し訳ないですが、私は、高校時代は「日
本史」が大嫌いでした。当時は日教組など先生方の組合活動全盛
の時代で、母校の職員室には「○○打倒!」とか「△△粉砕!」
のようなスローガンがあたり一面の壁に貼られていました。不幸
にも、我がクラスの「日本史」担当は組合活動のリーダー格のよ
うな教師だったのです。

授業は暗く陰険で、徹頭徹尾、我が国の歴史の否定でした。私は
まだ善悪の判断などできない年齢でしたが、本能的に「おかし
い?」と気づきました。以来、「日本史」が大嫌いになりました
が、この教師が“反面教師”となり、「いつか日本史をしっかり
学ぼう」と心に誓ったのでした。

それから20年以上の歳月が流れた40歳半ばを過ぎた頃、第1
話で紹介したようなきっかけでこの“誓い”を思い出し、折に触
れて歴史書をあさり、学び続けていますが、今になってみれば、
こうして歴史のメルマガを発刊できるのもこの教師のお陰と感謝
しております。

▼“世界最強”の資本主義国だった?!

その「日本史」の授業で、江戸時代については「封建制のもと士
農工商の階級、つまり搾取と被搾取階級があり、経済的に停滞し
ていた」と教えられたとおぼろげな記憶があります。

実際には、支配側にあった武士たちは、今様の言葉で言えば「民
(たみ)ファースト」の精神で、自らは清貧でストイックな生活
をしていたようですし、経済的にも(前号でも一部紹介しました
ように)、貨幣経済や流通ネットワークが発達し、「当時の我が
国は“世界最強の資本主義国”だった」と唱えている専門家もお
ります。

反面、江戸時代の各藩は半ば独立していた「国」だったにもかか
わらず、『武家諸法度』によって領土争いなども禁止されていた
ので、隣接国に“備える”必要がなくなりました。その結果、軍
事技術の発達や兵法の研究などはほとんどないまま時が過ぎてし
まい、廃れてしまいました。

この時代の歴史に残る“争い”の代表は、歌舞伎などでも演じら
れる、有名な『忠臣蔵』の基になった「赤穂事件」でしょうから、
本当に平穏な時代が続いたのでした。

▼「江戸時代」に出来上がった、我が国特有の思想・行動様式

このように、江戸時代だけを考えれば、太平の世が続き、人々は
幸せだったと言えるでしょうが、「鎖国は日本人のアジア雄飛を
阻み、大東亜戦争の遠因となった」(渡部昇一氏)のような評価
がある一方で、「明治以降の和魂洋才の源は、16世紀のキリス
ト教禁止から鎖国にいたる外部遮断にあった」(歴史学者トイン
ビー)との指摘もあるように、“世界”を認識しながらも交流を
閉じ、西欧や周辺国と峻別して“独自性”を優先する「日本の文
明」ともいうべき、我が国特有の思想や行動様式は、江戸時代の
特異な環境下で出来上がったものでした。

▼「鎖国」の間に起こった欧米社会の「大変革」

我が国が200年以上の“太平の世”をむさぼっていた17世紀
から19世紀にかけて、欧州では「宗教改革」から「宗教戦争」、
そして封建的な「絶対王政」の時代を経て、自由や平等を求める
「啓蒙思想」が興りました。

そしてこれらが欧州内の大きな流れとなって、「人権思想」や
「市民権思想」が発達、その延長でイギリスの清教徒革命、フラ
ンス革命などの「市民革命」が起こり、やがては「アメリカの独
立」へと続きます。

同時に、18世紀半ば、イギリスで「産業革命」が起こり、瞬く
間に欧州列国や米国に広がり、工業社会の変革が進みました。こ
れが「市民革命」と融合し、社会構造そのものが「大変革」を起
こして“近代化”が一挙に進みます。これらの詳細は次号で取り
上げますが、「鎖国」政策のため、我が国が欧米諸国の「大変革」
の細部を知るのは幕末になってからでした。


(以下次号)


(むなかた・ひさお)


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【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
 
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸
上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士
課程卒。
陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1
高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副
長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。
2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』などに投稿
多数。


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