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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊
した即応予備自衛官でもあります。
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堂下さんのデビュー作
『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクトリン」で勝利する─』
への読者反響の一部です。
あなたのご感想もこちらからお知らせください
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「難しい内容をかみ砕き、例示も豊富、コンパクトにまとまって
いる」
「早速、大学の授業で活用、図書館にも入れさせてもらいました。
経営戦略、組織コミュニケーションにも有益な内容です。」
「作戦を組立てる側から理解でき目から鱗でした。防衛、外交関係
者、さらには一般の読者にとっても有益な内容を、詳細かつ分かり
やすくまとめられている。」
「政府機関の政策決定や企業経営者の意思決定にも、広く応用で
きるヒントが含まれている。」
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『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクトリン」で勝利する─』
http://okigunnji.com/url/352/
こんにちは、エンリケです。
海軍こぼれ話の二回目です。
海軍には世界共通の文化が多く、
意外な面白話がたっぷりあります。
海の世界で生きる
海軍の文化は、
海国である我が国の気質と
しっくりするところが
多いのかもしれません。
きょうも、
目からうろこです。
英語の階級名には「?」と思うことが結構ありますが、
こういう形で背景事情を理解できると、すごく親しみが深くなり、
列を作って給料を待ってる姿を想像すると、もやもやした存在か
ら、自分の手の平の上に乗る感じがしますね。
軍艦旗の破れの速さは想像以上なんですね。
一日で半分もちぎれてなくなってしまうときもあるとか。
さてあなたは、
海軍大佐の袖章がなぜ4本かご存知ですか?
あれもこれも、
さっそく確認しましょう!!
エンリケ
追伸
海軍で知りたいこと知らないことわからないことあるのなら、
こちらからお知らせください。
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【戦う組織のリーダーシップ─今に生きる海軍先輩の教え─(10)】
「海軍こぼれ話(2)海軍大佐はなぜ四本線か?」
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
前回の自衛艦旗の話に関して、なぜ日章の中心がずれているのか
という質問をいただきました。いろいろ調べても具体的な理由付
けには行き当たらないのですが、一般的に旗というものは旗竿に
取り付けて風にはためいた時の見え方も重視するものです。その
観点からはデザインの中心を旗竿側に近づけることは合理性があ
ると考えられ、実例としても多数あります。おそらくこのあたり
が正解ではないかと思います。
余談ながら、艦艇に掲げられた自衛艦旗は強風のために徐々に旗
の端の方からちぎれてなくなってしまいます。荒天時には一夜に
して半分近くになってしまうこともあるのですが、ちぎれてしま
っても自衛艦旗の日章はなんとか残っているのを見て、実用的な
観点からも中心をずらした効果があるなと実感したことがありま
す。
▼『マスター・アンド・コマンダー』?
さて、今回は「海軍大佐の袖章はなぜ4本なのか?」です。海
軍の伝統を語る時、その国の海軍旗と階級制度の由来を知ること
は大事なことだと思います。一般人にとっては「海軍オタク」っ
ぽい話でしょうが、このメルマガ読者の皆さんなら興味を持って
もらえるかもしれないと考えご紹介します。
2003年のラッセル・クロウ主演のアメリカ映画『マスター・アン
ド・コマンダー(Master and Commander: The Far Side of the
world)』を記憶されている方もおられると思います。パトリッ
ク・オブライエンの海洋冒険小説をもとにして、アカデミー賞10
部門にノミネートされた作品。ナポレオン戦争(1803〜1815年)
中の英海軍フリゲート「サプライズ」と強力な仏私掠船「アケロ
ン」との戦いを描いていました。当時、私もこのタイトルの意味
がよくわからないまま楽しんだのですが、小林幸雄著『イングラ
ンド海軍の歴史』と出会うまではこれが階級の名称だとは知りま
せんでした。
▼キャプテンの登場
英海軍は「海軍の母」といわれるほど各国の海軍のありように大
きな影響を与えてきましたが、中世初頭までの英海軍では「マス
ター(Master)」が運航を指揮する軍艦に「キャプテン(Captain)」
を指揮官とする兵士たちが乗り組んでいました。「キャプテン」
は兵士の指揮官で、敵艦に接舷して乗り込んで戦ったり、陸戦
隊として戦う「陸者(おかもの)」であり、艦の運航を指揮す
る「マスター」を指揮する権限はありませんでした。つまり軍艦
は戦闘力である兵士の運搬手段に過ぎなかったわけです。
イギリス近代海軍の開祖といわれるヘンリー7世(1485年即位)
の頃になると、軍艦に大砲を搭載するようになり、軍艦そのもの
が戦闘能力を持つことになりました。そうなると軍艦の運用その
ものが戦闘を直接左右することになり、運用術(シーマンシップ)
と戦闘術を融合させるための一元指揮の必要性が生まれました。
そこで艦における唯一最高の意思決定者としての「キャプテン」
が登場し、「マスター」は航海長としての役割を担うことになっ
たのです。
▼配置・職務から階級へ
その後の海軍の発展の中で軍艦の士官は「キャプテン(Captain)」
とその補佐役の「ルテナント(Lieutenant)」、「マスター(Master)」
とその補佐役の「セコンドマスター(Second Master)」と分化し
ていきました。これらの士官の分類は配置であると同時に職務を
表したものであり、階級ではありませんでした。当時の海軍では、
戦争が終わり平時になって配置を離れたら海軍士官としての職も
失うこととなり、その身分は不安定なもので、3次にわたる英蘭
戦争(1652〜74年)の際などの士官不足は顕著なものでした。
そこで英蘭戦争後に、平時に職を離れた士官に対しても前職の
俸給に応じた恩給を出す「半給制度(Half Pay)」が始まりまし
た。当初はほとんどの士官が恩給を受け取れましたが、財政ひっ
迫のため1700年にはその対象を制限せざるを得なくなり、それま
でアルファベット順だった名簿を半給を支給する優先順に並べた
名簿に変える必要性が生まれました。ここにおいて士官職の格付
け、同一配置における先任序列の概念が生まれ、階級制度が確立
することになりました。
それぞれの階級名称の起源を簡単にみてみます。
「Captain(海軍大佐)」は、ラテン-フランス系のCaputが
Capitanus、Capitaineと変化し、「Captain」になったとされてい
ます。
「Commander(海軍中佐)」は、第一次英蘭戦争で士官が払底した
際、商船士官を雇い入れたものの戦意不足で戦闘にならなかった
ため批判が起こり、やはり海軍士官が必要ということになり、主
として中・小型艦の艦長配置としての「Commander and Master
(指揮官兼航海長)」が生まれました。これがいつか「Master
and Commander」と変化、1674年には正規の配置となり、1794年
には中・小型艦にも「Master」が配置されるようになったことか
ら「兼航海長」が外れて「Commander」となりました。映画の設
定は1805年となっており、エンドロールでは、キャプテン、ルテ
ナント2人、マスターの配役が出て、マスター・アンド・コマン
ダーは出てきません。映画のタイトル『マスター・アンド・コマ
ンダー』はおそらくパトリック・オブライエンの小説のシリーズ
名称をそのまま使ったものと思われます。
「Lieutenant Commander(海軍少佐)」は、大型艦では複数の
「Lieutenant」のうち最先任者が「First Lieutenant」として副
長格として処遇されていました。ところが「新参者」の
「Commander」が出現したため、「First Lieutenant」への「慰
撫策」として俸給加俸がなされ、その対象者が1914年に至り正規
の階級となったものです。
「Lieutenant(海軍大尉)」は、フランス語のLieu(代わりに)
とtenant(supporter)が合体してCaptainの補佐役という意味で
できました。
最も下位の「Sub- Lieutenant」は、士官候補生(Midshipman)の
任用制度の変遷を経て1861年に正規の階級とされました。
▼制服の制定
それぞれの階級がどのようにして成立してきたかをざっと見てき
ましたが、いよいよ袖章の本数の話です。それまで自前であった
制服が正式に制定されたのが1748年で、兵科士官の袖に渦巻の飾
りをつけることが正式化されたのが1860年です。1863年になると
士官は金筋を袖に巻くこととされ、下位から順にサブルテナント
が1本、ルテナントが2本、コマンダーが3本、キャプテンが4
本とされたのです。なお、ルテナントコマンダーはルテナントと
同じ扱いで2本でしたが、1974年に2本半をまくこととされ、今
日に至っています。
このような英海軍の階級と袖章のシステムを他の諸国の海軍が倣
うことになったのはいうまでもありません。「伝統」とされるも
のの中には、なぜそうなったかよくわからないものも多いのです
が、この大佐の「四本線」は、英海軍の長い歴史に基づいて成立
したもので、単なるトリビアではなく、その組織のDNAを反映
したものとも言い得る面白さが感じられると思いますがいかがで
しょうか。お付き合いありがとうございました。
(つづく)
(どうした・てつろう)
【著者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共政策論修士、
防衛研究所一般課程修了。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、
護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸
上勤務として内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)出向、米中
央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長(初代)、幹部候
補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴
地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。
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