こんにちは、エンリケです。
2014年にスタートしたこの連載。
記念となる連載200回を迎えました。
毎週記事を提供くださっている
渡邉さんには、感謝の気持ちしかありません。
このコラムはこれからも続きます。
括目してお待ちください。
きょうのコラムは、
創設以来最大の陸自大改編の最終回です。
さっそくどうぞ
エンリケ
▼渡邉さんへのメッセージは
http://okigunnji.com/url/169/
から。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (200)
― 陸上自衛隊大改編(5)―
渡邉陽子
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〇〇さま
こんばんは。渡邉陽子です。メルマガ「軍事情報」で配信していた
だいているコラムが、今回で200回を迎えました。2014年6月からス
タートし、気づけば4年以上にわたって毎週書かせていただいてい
るのですね。管理人様と、つたないコラムを読んでくださっている
読者のみなさまに改めて感謝し、御礼申し上げます。これからも防
衛は私のライフワークです。引き続きお付き合いいただければ幸い
です!
M様
鴻巣市の一件は大変残念な出来事でしたが、募集ポスターが
よくはがされるというお話も、同じくらい残念ですね。
心ない行為に憤りを感じます。
M様のような方の存在は、自衛官にとっても大いに励みになる
と存じます。メッセージありがとうございました。
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○ライター・渡邉陽子とは?
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■陸上自衛隊大改編(5)
今春行なわれた陸自組織改編のお話、最終回です。
今回の改編は、今まで空白地帯であった南西防衛を強化するため意
義あることには違いありません。
しかし、改編により生じるリスクがあるのも事実です。
たとえば人員不足。新しい部隊ができても自衛官の定員が増えるわ
けではないので、人手不足になる部隊が出てくることは避けられな
いでしょう。有事の際はもちろん、災害派遣においても交代部隊や
要員を用意できなくなる懸念があります。
本州の機動打撃力にも不安があります。25大綱で戦車を300両、火
砲を300門まで減らすとしたためです。
戦車と火砲はおのずと北海道と九州に集中し、戦車部隊や特科部隊
が本州から消えます。それは作戦基本部隊の弱体化につながるうえ、
演習等で諸職種をまとめた戦闘団が編成できないということです。
方面総監クラスになって初めて戦闘団を運用するという指揮官も、
今後は登場する可能性があるというのは由々しき事態です。
新編された水陸機動団にも深刻な課題があります。その最たるもの
が「圧倒的な輸送力不足」です。
敵前上陸する専門部隊である米海兵隊の日本版という位置付けなが
ら、米海兵隊が所有している空母と輸送艦の機能を持った強襲揚陸
艦が、水陸機動団にはありません。米海兵隊が海上輸送に関して自
己完結できるのに対し、水陸機動団は海自や空自の輸送力に頼るし
か術がないのです。
AAV7は海自の「おおすみ」型輸送艦3隻を改修して対応しますが、
最終的には52両保有することになっているAAV7は3隻では運びきれ
ません。しかも輸送艦にAAV7が満載されたら、機動戦闘車や戦車、
軽装甲機動車などを上陸させるために使うホバークラフト、LCACを
積むことができなくなってしまいます。
防衛省は2015年から民間輸送船「ナッチャンWorld」と「はくおう」
を20年間の契約で借り上げているものの、有事の際にこれらの輸送
船を最前線へ向かわせるというのは可能なのでしょうか(前線には
行かないという前提での契約になっているようですが…)。自衛隊
発足以来ひたすらに国民の理解を得るために尽くしてきた組織が、
何十年もかけて得た自衛隊への理解と高い評価を一気に突き落とす
ような作戦を取ることができるのでしょうか。
山崎陸上幕僚長も「水陸機動のための輸送、また上陸についてはこ
れから整備していかなくてはいけないという認識は持っている」と
会見で述べていることからも、現状の輸送力のままではせっかくの
水陸機動団も、いざというときにその実力を発揮することは難しい
でしょう。
なお、今年7月の産経新聞には「防衛省が陸上自衛隊に輸送艦を導
入する方向で検討」という記事が載りましたが、それを追随する記
事は見当たりません。ただ「政府が年末に決定する防衛計画の大綱
に反映させたい考え」とまで書いているので、今後の展開には注目
ですね。
オスプレイの配備計画も悩ましい問題です。オスプレイは水陸機動
団を運ぶ主要輸送機として米国から17隻購入、佐賀空港への配備計
画を進めていました。水陸機動団が所在する長崎県の相浦駐屯地と
は約60km、有事の際も迅速な対応が可能な距離です。
ところが今年2月、陸自ヘリAH-64が佐賀県内の民家に墜落する
という事故が起き、それでなくとも遅れていた地元調整がさらに難
航することとなりました。そのため今秋納入される最初の5機は米
軍のオスプレイ整備拠点がある千葉県の木更津駐屯地に暫定配備さ
れることに。相浦駐屯地までの約1000kmという距離によって生じる
ロスは、水陸機動団の部隊展開に影響を及ぼすことは避けられませ
ん。
その後さらに進展があり、佐賀県が配備を容認したので晴れて当初
の予定通り佐賀空港に配備……と順当にはいきません。県は容認し
ても地権者の地元漁協の同意は得られていないため、施設整備に着
手できないのです。さらに暫定配備を検討している木更津駐屯地で
も地元の同意が得られていないとして、今秋としていた米国から日
本へのオスプレイ納入時期が12月下旬以降に延期される見通しとな
ってしまいました。
まだあります。
水陸機動団の運用に絶対不可欠な統合運用にも課題が残ります。島
しょ奪還には護衛艦による艦砲射撃や戦闘機による航空攻撃が欠か
せず、高度な連携が求められます。
ところが海上、空中、そして陸上という3次元の作戦が関わる複雑
な水陸両用作戦を遂行できるほど、現在の自衛隊における統合運用
が機能しているとは言いがたいのが現実です。
実はYS(ヤマサクラ)などの指揮所演習の際ですら、陸自の火力
支援要請に海自や空自が応じるとは限らないそうです(実際に聞い
た言い回しより控えめに表現しました)。
ハード面を整えてもソフト面の課題に対処できない限り、新しい部
隊を発足させて装備を整えても、「日本版海兵隊」としての実力を
発揮することは困難です。ただしこれらの課題はすべて掌握済みの
ため、今後どのように課題解決に向けて対応していくかが注目され
ます。
(陸上自衛隊大改編 おわり)
(わたなべ・ようこ)
□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
http://okigunnji.com/url/101/
を刊行。
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