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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【2月10日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「憲法改正、加憲で自衛隊は国を守れるのか?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
こんにちは、エンリケです。
三十二回目の面白兵器技術は、
「地対空誘導弾」の6回目です。
携帯SAMの命中精度に関する記述。
目からうろこでしょう。
こういう真実を知れば知るほど、
視野は広がり、洞察力も上がります。
さっそくどうぞ。
エンリケ
追伸
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意外と知られていない面白兵器技術(32)
「地対空誘導弾(その6)『ミサイル本体(2)』」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
前回、前々回に引き続き、防衛予算の仕組みについて説明しま
す。防衛予算でさらに誤解を招くのが、人件費の変動が防衛予算
全体に大きく影響することです。防衛費に占める人件費の割合は
45%弱で、防衛費の半分近くを占めます。自衛官の給与が増え人
件費が増えると自然と防衛費は増額になり、議論の対象になりま
す。増額は議論になるが減額は議論にならないのも、大きな問題
です。
この現象も前回に指摘しました「歳出予算は防衛予算の議論の
対象にならない」という理由の一つです。以前、人件費で面白い
話がありました。子供がいるほとんどの世帯に子ども手当が支給
されたとき、当然、自衛官にも子ども手当が支給されました。人
件費が増えますから防衛費も増えます。この仕組みがよく知られ
ていないため、防衛費増額がマスコミで話題として取り上げられ
たのです。
日本の安全保障を語るうえで非常に重要な要素である防衛費が、
子ども手当の支給で議論の対象になってしまうというのは、非常
にお粗末な話です。防衛予算の議論自体が、増えたか減ったかが
問題となるだけで、内容が議論になることは国会でもマスコミで
もほとんどないことが、このような現象を引き起こしている大き
な原因です。
そもそも、国会の予算委員会で年度予算に関してまともな議論が
されている様子をテレビ中継で見ることがほとんどないほど、国
会が機能不全を起こしているのが問題なのだと思います。国会で
の議論は、ほとんどが政局がらみに集約されてしまっています。
特に、安全保障に精通している政治家は数少ないため、防衛費の
中身が国会で議論されることは、ほとんど皆無です。
さて、本題の兵器技術は地対空誘導弾の6回目、ミサイル本体の
2回目です。映画などでは、戦闘機がミサイルを回避した後もミ
サイルが180度旋回して追随する場面がありますが、実際にはあり
得ません。地対空誘導弾は通常はロケットモーターを使うため、
長時間は飛翔できませんし、速度が速いため短時間で反対方向ま
で旋回するのはほとんど不可能です。地対空ミサイルが当たるか
当たらないかは1発勝負です。
▼ミサイルの飛翔速度と旋回性能
ミサイルの性能を大きく左右するのは、目標を捉えて、目標に
追随する装置であることは間違いありませんが、ミサイルの飛翔
速度と旋回性能もミサイルの性能を大きく左右します。目標が同
じ速度で同じ方向に飛行しているのであれば、飛翔速度や旋回性
能はそれほど問題となりません。現在のコンピューター技術を持
ってすれば、目標の将来位置とミサイルの飛翔経路を正確に計算
し、風や空気密度による誤差をミサイルの誘導装置が修正しなが
ら、100%近い確率で命中することができます。
しかし、実際の航空機などの目標は、飛行速度も変化し、飛行
経路も変わります。狙われているとわかれば回避行動もとります。
目標の飛行経路が変化したら、ミサイルの速度が目標よりも遅い
場合追随できません。目標が回避行動で旋回した場合、ミサイル
の旋回能力が目標の旋回能力を超えていなければ、目標において
いかれます。
地上から打ち上げるミサイルは、当初、重力に逆らって速度を
上げなければいけないため、大きな推進力が必要となります。
特に低空域用のSAMは、十分な加速時間が得られないため、ロケ
ットモーターの点火前にブースターと呼ばれる発射薬でミサイル
を撃ち出す方式もとられます。
携帯SAMの場合は、加えて、当初からロケットモーターが点火する
と、射手にブラスト(噴射炎)がかかるため、ブラストの影響の
ない距離を飛翔させてからロケットモーターに点火する必要があ
ります。
中SAMなどの最近のミサイルでは、垂直にミサイルを打ち上げ、
目標の上空から重力を利用しながら高速で目標に接近する方式も
とられます。上空から目標に接近すれば、かなりの高速化が可能
で命中精度も上がります。また、ミサイルを垂直発射する利点は、
発射してから全周すべての方向にミサイルを誘導でき、同時多目
標対処が可能となります。
ミサイルの旋回性能を左右するのは、翼の形状、大きさ、数、位
置、制御などです。形状などでわかりやすいのが、初期型のSAM
であるホークの翼はミサイル下方の噴射口側に4枚付いています
が、これが、中SAMになると噴射口側に4枚、頭部側に4枚の8
枚の翼により制御しています。翼の大きさも小さく、速く細かな
制御も可能です。
ミサイルの旋回性能に関しては、航空機のように人間が関与しな
いため、ミサイルが機械的に耐えられる最大加速度まで高めるこ
とができます。航空機で加速度をかけ過ぎるとブラックアウトと
いってパイロットの視界が真っ暗になり、操縦不能の状態に陥り
ます。したがって、飛行性能については、圧倒的にミサイルが有
利であり、航空機の回避行動だけでSAMを回避するのは困難です。
航空機がSAMに対処するには、レーダーに捉えられないステルス
性能とミサイルの追随を妨害する手段が決め手となります。
ただし、ミサイルの高速性能と旋回性能も、目標に近接しなけれ
ば能力は発揮できません。レーダーで目標を捉えた後、目標近傍
までにいかに早くミサイルを誘導するかが命中精度を高める大き
な要素となります。
中SAMのような垂直発射式の場合は、地上装置からの指令で目標近
傍まで誘導しますが、短SAMの場合は、射撃統制装置が計算して目
標の将来予測位置に発射します。携帯SAMでは、人間が将来予測位
置に発射しなければなりませんから、射手には高い能力が求めら
れます。携帯SAMの命中精度に射手の高い練度が必要であること
は、意外と知られていない真実です。
(次回に続く)
(いちかわ・ふみかず)
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に
出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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