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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【2月10日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「憲法改正、加憲で自衛隊は国を守れるのか?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
こんにちは、エンリケです。
三十回目の面白兵器技術は、
「地対空誘導弾」の5回目です。
携帯式地対空誘導弾には
<金属製の板が組み合わさった箱>
がありますね。
これ、何でしょう?
答えは本文中にあります。
さっそくどうぞ。
エンリケ
追伸
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意外と知られていない面白兵器技術(31)
「地対空誘導弾(その5)
『ミサイル本体(1)』」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
前回に引き続き、防衛予算の仕組みについて説明します。前回
の締めくくりが「防衛費増額の是非を議論しても無意味である」
ですから、ここだけ切り取ると誤解を生じますのでさらに一歩踏
み込んで説明します。民主主義国で予算増額の是非について議論
ができないのはあり得ないことです。
正確に表現すると「防衛費歳出予算増額の是非の議論は無意味で、
議論すべきは新規後年度負担」ということになります。防衛省ホ
ームページ「31年度概算要求」の説明資料3ページに防衛予算額
が書かれた表が上下に2つありますが、上の表が歳出予算で下が
新規後年度負担です。議論の対象は上の表ではなく下の表です。
歳出予算は年度内に支払いをする経費です。人件費、光・熱・水
道料費、事務経費等の国の機関で使用する経費のほとんどが歳出
予算です。国の予算の半分以上を占める年金や保険の支払いに関
する経費や国債の返済のための経費も歳出予算です。
これに対して、年度内に契約しても年度内に支払いせずに、次年
度以降に支払いする予算が新規後年度負担です。建物の建設や、
高額の装備品のように年度内にものができあがらない場合、次年
度以降に納品、支払いになります。国の契約では、納品後の支払
いが原則です。支払いのための予算は歳出化という名目で編成さ
れますが、国に支払い義務がある経費です。
防衛予算概算要求資料に戻ります。歳出予算は5兆300億円で増額
は3,500億円ですが、新規後年度負担は2兆5,000億円で増額は
5,200億円です。そして、イージスアショアの取得経費2,352億円
を含めた、防衛省の概算要求資料に書かれている防衛力増強に関
する経費のほとんどが、新規後年度負担の2兆5,000億円に含まれ
ています。
防衛予算を報道する場合に話題となるのは、31年度であればイー
ジスアショアやF-35戦闘機、グローバルホークの取得です。これ
らの取得経費はほとんどが新規後年度負担であり歳出予算には含
まれていませんが、予算額として報道されるのは、ほとんどが歳出
予算です。国の予算は歳出予算で編成されるため、防衛予算も歳
出予算を示さないと他の予算との比較ができないという、やむを
得ない事情もあります。
代表的な報道は、「防衛省は31日、2019年度予算の概算要求を過
去最大の5兆2986億円とすると決めた。18年度当初予算に比べ2.1%
増えた。陸上配備型の迎撃ミサイルシステムイージスアショア
2基の取得関連経費2352億円を盛り込んだ。(日経新聞)」とい
う記述で、ここでは日経新聞の記事を例にしましたが、ほとんど
のメディアが同じです。
この記述であれば、イージスアショア2基の取得関連経費2,352億
円が概算要求の5兆2986億円に含まれていると読み取れますが、
前述で説明したように概算要求の歳出経費には含まれていません。
(続く)
さて、本題の兵器技術は地対空誘導弾の5回目、ミサイル本体で
す。最も単純な地対空誘導弾システムである携帯SAMは、構成品
に占めるミサイルの割合が80%~90%です。極論すると、誘導弾
の場合は、固定さえできればミサイルだけでも発射できます。
ミサイルの中にほとんどの機能が詰め込まれています。弾薬との
大きな差異がここにあります。当然、値段も高くなります。
▼SAMの誘導方式
地対空誘導弾(ミサイル)の特性も対戦車誘導弾と同様に誘導
方式が最も特徴的です。対戦車ミサイルでは、手動誘導から始ま
り打ちっぱなしまで世代で区分されましたが、対空ミサイルには
厳密な世代区分はありません。国産初の81短SAMは、発射後にミサ
イルが航空機の赤外線を捉えて自ら誘導する打ちっぱなしです。
また、初期の対空ミサイルでも手動誘導のものはありません。
(射距離と目標のスピードから、常識的に手動誘導はできません
が)
初期の地対空誘導弾といえば、日本でも現役のホーク(Hawk)
です。現在のホークは改良型ですが、誘導方式はセミアクティブ
レーダー誘導方式で初期型と変わりありません。ATMの初期型は
手動ですが、SAMは初期型から電波誘導という高度な技術が使われ
ていました。
SAMの誘導方式にはアクティブ、セミアクティブ、パッシブの
3種類があります。アクティブはミサイル自体が電波を放射して
目標からの反射波に誘導されます。セミアクティブは地上装置か
ら電波を放射します。パッシブは目標が発する電波や赤外線をミ
サイルが捉えて誘導されます。
さらに誘導に使う媒体により、光波誘導と電波誘導に分かれます。
SAMの誘導方式はこれらの組み合わせで分類されます。光波誘導
は、ミサイルが目標の赤外線もしくは可視光画像を捉えて目標に
誘導されるパッシブ誘導方式のみです。ATMのように目標に赤外線
を放射して、目標から反射された赤外線をミサイルが感知して誘
導するような方式はありません。
電波誘導には、地上装置から目標に向けて放射された電波の反射
波に誘導されるセミアクティブ誘導方式、ミサイルから目標に向
けて放射された電波の反射波に誘導されるアクティブ誘導方式、
目標の航空機などから出される電波を捉えて誘導されるパッシブ
誘導方式があります。中間段階の誘導では、地上装置からの信号
で直接誘導弾を誘導するセミアクティブ方式もあります。
88式短SAMは、初期型と改良型があり、初期型は、赤外線パッシ
ブホーミング、改良型は、赤外線、可視画像パッシブホーミング、
アクティブ電波ホーミングの2弾種です。ミサイル以外も改良さ
れていますが概観はほとんど同じで、自衛官でも直接扱っている
人以外は区別できません。11式短SAM、中SAMはアクティブ電波ホ
ーミングの1弾種です。
91式携帯地対空誘導弾(PSAM)は赤外線、可視画像パッシブホ
ーミングです。世界的にも有名な携帯式対空誘導弾スティンガー
も赤外線ホーミングのパッシブ誘導で、携帯用はほとんどが光波
誘導です。
電波誘導の場合、セミアクティブ誘導の地上から信号を送る方式
であれば大型のレーダーと地上装置が必要になります。アクティ
ブ誘導のミサイルから電波を放射する方式ではミサイルが大型に
なります。個人が携帯できる重量に収まりません。
日本も当初、スティンガーを装備していましたが、現在は国産の
PSAMです。スティンガーと同様に光波、パッシブ誘導ですが、赤
外線と可視光を併用しており、赤外線の放出が低い目標や航空機
正面に対する射撃が可能となるとともに、敵航空機が行なうSAMへ
の妨害などの対抗手段に対しても強くなっています。
携帯式地対空誘導弾の概観で面白いものがあります。金属製の
板が組み合わさった箱のようなものが付いています(「携帯式対
空誘導弾」で検索)。折りたたみ式になっているため、たたんだ
状態ではわかりませんが、すべての携帯SAMに同様の形状のもの
が付いています。さて、これは何でしょうか?
これは、敵味方識別装置用のアンテナです。航空機が敵か味方か
を目視で識別するのは極めて困難です。間違って、味方機を撃墜
する危険性があります。目標を撃墜する目的だけであれば必要の
ない装置ですが、友軍相撃を防止するためには必要不可欠です。
(次回に続く)
(いちかわ・ふみかず)
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に
出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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