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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊
した即応予備自衛官でもあります。
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こんにちは、エンリケです。
リーダーと聞くと、
首相とか社長、司令官、将軍、提督といった
「雲の上の存在」を反射的に思い浮かべますが、
実はそうではありません。
有名人だからエピソードも多く、
聞き手も受け入れやすいから、
リーダーシップのたとえ話に使われる機会が
多いだけのはなしです。
家庭をお持ちのお父さんは家庭のリーダーですし、
お母さんは、家内のリーダーです。
2人しかいない係の係長さんは係のリーダー。
先輩は後輩のリーダーです。
複数の人が一緒に動く場では、
必ずリーダーが生まれ、
リーダーシップの発揮が不可欠となります。
リーダーやリーダーシップというのは、
何も職場でだけ発揮されるものではなく、
日常生活のなかで活かされ使われる生きた知恵なんです。
ですから、どんな人も、
リーダーの心構えや覚悟などなど、
リーダーシップに関するあれこれを
意識して吸収する癖をつけておくことは、
あなたがいつリーダーになっても
とっさの判断や行動に活かすことにつながりますので
有益です。
さっそくどうぞ
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【戦う組織のリーダーシップ─今に生きる海軍先輩の教え─(5)】
「リーダーに求められる3つの顔『象徴』『決裁者』『先輩』(1)」
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
前回は、山本五十六と井上成美を取り上げました。どちらも海
軍を代表するリーダーであり、わずかばかりのエピソードで分か
ったつもりになるのも危ない話ですが、一方で実際に当人に接し
た人々が後輩のために書き伝えている重みということもあります。
いずれにせよ、「理性」と「感性」がリーダーの個性とリーダー
シップのスタイルを規定する基本的な軸であり、それらは優劣や
選択の問題ではなく、戦う組織のリーダーとしてどちらも備える
べきものであり、その人なりの「混合比」で発揮されるものだと
思います。
さて、今回は「4つの資質」「2つの個性」に引き続き「3つ
の役割」についてです。リーダーにはさまざまな役割が求められ
るものですが、これを「象徴」「決裁者」「先輩」の3つの役割
に分けてみる考え方です。3つの顔とも言えるかもしれません。
海軍の先輩は、この役割や顔を、場面や相手に応じて正しく使い
分け、間違わないようにしなければならないと教えています。ま
ずは、それぞれの役割を1つずつ見ていきたいと思います。
▼第1の役割:「象徴」
まずは、「象徴」としての役割です。リーダーというものは、外
に対しては組織を代表し、内に対しては組織の中心となり、気風、
慣習、道徳、価値観の規準を示すものです。いうまでもなく、リ
ーダーの風貌、挙措(きょそ)、言葉などが、そのままその組織
全体の印象や評価を大きく左右する場合があるのは、私たちが
日々テレビや新聞を見て感じるところであり、ゆるがせにできな
いものです。
米内光政(大将)(海相、首相)(兵29)は、同期生からは
「グズ政」とあだ名され、候補生の時は、面倒くさがり屋で無口
だったことから「牛のような奴」と艦長にいじめられたりしまし
た。平凡な成績(68番/125名)で海軍兵学校を卒業した彼は、小
泉信三(第7代慶応義塾塾長)には、「国に事がなければ、あるい
は全く世人の目につかないままで終わる人であったかもしれない」
とさえいわれています。若き日の彼が見いだされ、海軍のリーダ
ーとなったきっかけはいったい何だったのでしょうか? 有竹修
二著『昭和の宰相』では、次のように山梨勝之進大将(兵25)に
語らせています。
「加藤友三郎元帥の葬儀の時、海軍の儀仗隊を指揮する一人の
偉丈夫(いじょうふ)を見た。それは余人でない米内であった。
堂々たる体軀、端正な風貌、太い号令、厭味のない挙措、自分
はなんということなしに、こういう人間が将来の日本の海軍を
背負うようになるのではないかと考えた。自分はそれまで米内
をあまりよくは知らなかったが、それ以来米内を注意するよう
になった。偶然に刻まれた印象は案外当るものだ」
儀仗隊を指揮する米内を見て山梨が注目し、順次段階を踏ませて
見極めて、将官への道を開いていったのでしょうか。もちろんそ
の本領が「外見」だけでなかったことは、海軍大臣時代などの評
価を見るまでもありません。
米内はたまたま偉丈夫として見いだされたのですが、リーダー
に相応しい風貌はこれだというものがあるとは思いません。事実、
リーダーたちの風貌は持って生まれたものを反映して百人百様で
す。しかし、山梨が「なんということなしに」考えたように、リ
ーダーに相応しい風貌には、単に姿かたちだけでない「持ち味」
のようなものが備わっているべきではないかと思います。
▼「風貌」と「表情」
海軍では「海軍の将来は中・少佐の方寸(ほうすん、胸中のこと)
にあり」という言い方があったといいます。ある海将が中佐で海
軍省軍務一課に着任されたところ、当時の課長から「君の起案し
た文書は何ら手を入れずに上司に上げる」といわれたそうです。
この課長の言葉は、中佐たるものは、中佐に相応しく日本海軍を
背負って立つ「風尚」(ふうしょう:相応しい持ち味、気高さ)
と気概をもって仕事をせよという意味だったということであり、
このように言われた本人はおのずと奮起したに違いありません。
この「風尚」こそ、山梨が「なんということなしに」考えた「持
ち味」のひとつではなかったかと思います。この中佐のように海
軍省勤務でなくとも、おのおのが置かれた配置でその配置を意義
あるものにしようという気構えで仕事に取り組めば、時を経て年
輪を重ねるように徐々に「持ち味」が備わり、リーダーらしい
「風貌」が作られてくるのではないでしょうか。「4つの資質」
の「見識」「胆識」もおのずと磨かれてくるというものでしょう。
「風貌」が時間をかけて人に彫り込まれるようなものだとすれ
ば、それを時に応じて相手に対して表すのは「表情」ではないか
と思います。「顔は心の窓」という言葉もあります。リーダーの
表情ひとつで職場や組織は明るくも暗くもなりえますし、部下た
ちは直接言葉を交わさずともその表情からリーダーの心理状態を
察することができるのです。
これは海軍に限った話でもありませんが、危急に際しては、部下
はまず指揮官の顔を見るといわれます。艦橋における艦長の不安
な顔、慌てた表情は、たちまち艦内に伝染し、それはやがて艦内
全般に広がり、大げさに言えば、一艦を不安、パニックに陥れる
ことにもなりかねません。「リーダーは努めて楽観的であれ」と
いう教えはこのことを言っています。
そもそも表情とは、文字どおり情(心)が顔に表れたものですか
ら、心にもない笑顔は作り笑いであって、作り顔はすぐに見透か
されてしまいます。したがって、リーダーに相応しい顔になり、
相応しい表情をするためには、その源である心の修練が大切であ
るということになります。化粧だって「仕上げは心の化粧」とい
うそうです。
(つづく)
(どうした・てつろう)
【著者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共政策論修士、
防衛研究所一般課程修了。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、
護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸
上勤務として内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)出向、米中
央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長(初代)、幹部候
補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴
地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。
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