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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊
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こんにちは、エンリケです。
まさかソクラテスのことばが出てくるとは
思いませんでした。
今日も実に面白いですね。
あなたのリーダーシップ体験談も
ぜひ聞かせてください。
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【戦う組織のリーダーシップ ─今に生きる海軍先輩の教え─(3)】
「リーダーの条件:「感性」と「理性」」
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
前回までに、リーダーに必要な4つの資質として、「知識」
「見識」「胆識」「節操」を見てきました。今回からはリーダー
シップのスタイルの重要な側面であるリーダーの「個性」につい
て考えてみます。
▼海軍「考課表」にみる個性の見方
海軍では、人事行政を適正公平に行なうため、最低1年に1回
「考課表」を作成し、個人の人物、識量、技能、希望などを把握
していました。この「考課表」は、高等武官用、特務士官・准士
官用、下士官・兵用それぞれに3種類の様式が定められていまし
た。
そのうち、海軍の中枢となり、多くの人を指揮統率する配置に
つく高等武官については、人物評価、統率能力、性行(性質と普
段の行動)、技能について記載することになっており、このうち
「個性」に相当する「性行」については、「人格、気質、欲望、
趣味、感情、操行(品行、素行のこと)、態度、動作、言語、服
従、調和等について色彩の明らかなるものを記注する」とされて
いました。
当時の具体的な記載例を見ることはできませんが、特務士官・
准士官、下士官・兵用にはあらかじめ選択肢が示されていました
ので、「性行」と「能力」の項目について拾ってみると指揮官ク
ラスの個性をどう把握していたか推測のヒントにはなりそうです。
「性行」についての項目は次のようになっていました。
「人格」:優良、物足らず、高潔、洗練、犠牲的、自己本位、
公私明瞭、礼儀正し、心服さる、人望あり、押で行く、部下を愛す
「気質」:温和、真面目、円満、快活、剛直、磊落、怜悧、
慎重、軽率、沈着、優柔不断、心配性、グズ、大まか、細かい、
派手、直情径行
「欲望」:寡欲、恬淡、名誉心強し、金銭欲強し、わがまま
「趣味」:凝る方、勝負事、読書、甘党
「感情」:意思強し、情に脆い、短気、溺れ易し、侠気あり、
自惚れ強し
「操行」:方正、家庭的、遊ぶ方、酒癖悪し、金遣荒し、
吝嗇(りんしょく)
「態度・動作」:厳正、軽快、質朴、不遜、敏捷
「言語」:明瞭、口下手、寡言、おしゃべり
「服従・調和」:円満、社交的、孤立的、上に良く下に悪し、
上に悪きも下に良し、不平、雷同
「能力」については、次のような項目でした。
「判断力」:正確、速し、小事に捉わる、遅し
「注意力」:綿密、普通、鋭し、鈍し
「能率」:計画的、能率よし、着眼よし、無駄あり
「実行力」:作業力大、確実、粘り強し、永続せず
▼2つの個性:「理性」と「感性」
海軍の評語の中には、当時の価値観を反映したようなものや海
軍がどんな点を重視していたか示すような面白い言葉が散見され
ます。ただ全体としてみてみると、「性行」については、コンプ
ライアンス、セクハラ、パワハラなどを直接問う項目がないほか
は、現在の私たちのリーダー層に対する評価の視点とあまり変わ
らないと思います。一般的な日本人による日本人に対する人物評
価ともいえるでしょう。
一方、「能力」については、上級士官らしい視野の広さ、論理
性、独創性などが求められたと思いますので、ここに挙げた准士
官以下用の項目に加えてもう少し幅広い視点で評価がなされたの
ではないかと思います。
私たちは、リーダーの個性やそのリーダーシップの型を「理」
と「情」の2つの側面から見て「理性の指揮官」とか「情の統率」
などということがあります。海軍においても、人物評価の軸は、
「性行」面と「能力」面から行なわれており、これはそれぞれ
「感性(情)」面と「理性(理)」面を評価するものといえ、
「理」と「情」の側面から見る考え方が基本になっていることが
伺えます。
理性とは、「道理に基づいて考え判断し、行動する能力」であ
り、感性は「印象を受け入れ反応する能力、感受性」です。リー
ダーの人格や気質は千差万別で、さまざまな「評語」で表現し得
ると思いますが、「感性」と「理性」をそれぞれどのように有し
ていて、判断や行動におけるその比重はどうなのかということが
リーダーの個性とリーダーシップのスタイルを規定する基本的な
軸であるといえると思います。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「指揮官は、敵にとって
は悪魔であり、味方にとっては天使である」と表現しました。ま
た彼は、「将軍は、(中略)奇策縦横で活動的で注意細密で剛毅
で機敏でなくてはならず、柔和であるとともに残忍であり、率直
であるとともに策謀的であり、慎重であり狡獪であり、浪費的で
あり、掠奪的であり、気前よしであり、欲深であり、用心堅固で
あり攻撃的であり、その他たくさんのことに、あるいは生まれな
がらに、あるいは学習によって、(中略)練達していなければな
らぬ。」と語っています。(『ソークラテースの思い出』)
これは、指揮官の人格や気質には、常にこうでなければならな
いという一定の「型」があるわけではなく、ある幅の中で状況に
応じて相反するような特質を発揮しなければならないということ
を言った言葉だと思います。状況に応じた使い分けについては、
のちの連載で「役割」と「モード」という整理でお話ししたいと
思いますが、重要なことは理性だけでも感性だけでもダメで、両
方を状況に応じたバランスで発揮することであると思います。
今回は、理屈っぽい話にお付き合いいただきましたが、次回は、
日本海軍のリーダーに見る「感性」と「理性」について、山本五
十六と井上成美の例を見てみます。
(つづく)
(どうした・てつろう)
【著者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共政策論修士、
防衛研究所一般課程修了。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、
護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸
上勤務として内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)出向、米中
央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長(初代)、幹部候
補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴
地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。
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