配信日時 2018/08/22 20:00

【意外と知られていない面白兵器技術(27)】「地対空誘導弾(その1)『ミサイルの機能とシステム構成』」 市川文一

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【2月10日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「憲法改正、加憲で自衛隊は国を守れるのか?」
市川文一元陸自武器学校長
 https://youtu.be/D_md0ZSJNds


こんにちは、エンリケです。

二十七回目の面白兵器技術は、
「地対空誘導弾」のスタートです。

まずは、ミサイルの機能とシステム構成の
お話からです。

さっそくどうぞ。

エンリケ

追伸
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意外と知られていない面白兵器技術(27)

「地対空誘導弾(その1)『ミサイルの機能とシステム構成』」

市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに

今回から地対空誘導弾の説明になります。対戦車誘導弾は、世代
別に、古い世代から順に新しい世代へと説明してきましたが、地
対空誘導弾では、システム構成ごと説明します。地対空誘導弾の
システムが複雑なのと世代区分が明確ではないためです。最もわ
かりやすい説明方法を選んでいますので、兵器の種類で説明要領
が違うことについては、ご了承ください。

さて、対戦車誘導弾の場合は地上目標のため、射距離も限定され
ますが、対空誘導弾の場合、目標は低高度から高高度までさまざ
まです。低高度目標を迎撃するための誘導弾は当然、高高度は対
応できませんが、高高度目標を迎撃するための誘導弾も低高度は
対応できません。大は小を兼ねません。

したがって、防空を考える場合は、高高度から低高度までの多層
で、複数のシステムを重複して使用します。単一器材ですべてに
対応できる訳ではありません。また、高高度用のシステムは、死
角も多くなります。この死角を埋めるために低高度用のシステム
も必要となります。

以上のような地対空誘導弾の特性はシステムの技術にも影響を与
えています。地対空誘導弾に限らず、運用の特性を踏まえると兵
器に使用されている技術も理解しやすくなりますが、システムが
複雑になるほど、その効果は大きくなります。

対戦車誘導弾との特性や運用の違いを頭の片隅に置きながら読ん
でいただくと理解が進むと思います。地対空誘導弾の第1回目は
システム全般です。

▼地対空誘導弾の構造と機能

 今回から、地対空誘導弾の技術を連載します。対戦車誘導弾が
ATM、MATと呼称されているように、地対空誘導弾はSAM(Surface 
to Air Missile:サム)と呼称されます。現在陸自で装備されて
いるものでは、03式中距離地対空誘導弾が中SAM、81式、11式短距
離地対空誘導弾が81短SAM、11短SAM、93式近距離地対空誘導弾が
近SAM、91式携帯地対空誘導弾がPSAMです(PSAMのPはPortable)。

 中SAM、短SAM、近SAM、PSAMと逐次射程が短くなります。大は小
を兼ねるで、中SAMがあればほかは必要ないだろうという誤った意
見がありますが、それぞれのミサイルに特性があり大は小を兼ね
ません。たとえば、長い射程のミサイルは近い距離は有効射程外
です。死角も多くなります。榴弾砲で100m先が撃てないのと同じ
です。

 これに対しては、遠距離ですべて撃墜すれば近距離は必要ない
だろうという反論がありますが、ミサイルの命中率は100%では
なく、撃ち漏らしが当然あります。目標が多数の場合は対処でき
ない場合もあります。また、長距離用ミサイルは低高度に死角が
多くなります。多層にシステムを配置しての防空は世界的には軍
事常識です。

 これら4種類のSAMはすべて国産ですが、陸自で最初に装備され
たSAMは、米国製のホーク(Hawk)です。現在でも現役で使用され
ています。1959年から運用が開始されていますから、60年近く使
用されている訳です。ただし、概観はほとんど同じでも、逐次改
良されているため中身は初期型と現行のものではまったくの別も
のです。

 ホークの後継として開発されたのが中SAMですが、システムが高
価なのと防衛予算が制限されているため、更新が進まずホークを
使い続けているというのが実態です。開発国のアメリカではすで
に使用されていませんが、世界的に見ると10か国以上がホークを
装備し現役で使用しています。

SAMは高価な兵器であり、各国とも最新のSAMを装備するための予
算がないのは、日本と同じ事情です。ただし、ホークを装備して
いる国でSAMを国内開発できるのは日本だけです。ほかの国が最新
のSAMを装備するには輸入するしかありません。戦車を開発できる
国は世界で数か国しかありませんが、SAMであればさらに少数です。
中距離から携帯まで国産しているのは世界では片手ほどです。兵
器を国産できる技術力は防衛力の一部で、これが抑止力としても
働きます。

▼目標発見から撃墜まで

 さて、SAMのシステム構成ですが、基本的な部分は共通です。
ただし、近距離のSAMになると機械式の部分を人が担当します。
たとえば、携帯式のPSAMであれば、兵器としてのシステムは、照
準機構とミサイルのみです。目標を捉え、目標を狙い、目標方向
にミサイルを向けるのは人力です。ATMでいうと軽MATに非常に近
いシステムです。

 システムの基本構成は、(1)目標を捉えるレーダー、
(2)目標を追随、照準し、ミサイルを誘導する射撃統制(管制)
装置、(3)ミサイルを搭載・発射する装置、(4)ミサイル本体
です。あとは電源を供給する電源装置やミサイルを運搬、装塡す
る装置などがあります。さらに、これら1つ1つのSAMを集中的
にコントロールするための指揮統制装置などもシステム構成品と
する場合もあります。

 目標発見から目標の撃墜までの流れの一例を簡単に説明します。
目標を発見するためのレーダーは全周を捜索するために通常回転
させます。この時にレーダーが捉える目標はすべての航空機です。
ここで射撃統制装置が敵味方を識別し、敵機を追随します。敵機
の危険性を機械が判定するシステムもあります。敵機の危険性や
部隊の配置などを総合的に判断して目標を指定します。目標を指
定するとレーダーは目標方向に固定されます。射撃命令により発
射ボタンを押すと、指定された目標に向かいミサイルが発射され
ます。なお、目標の指定は、指揮系統を通じて行なわれる場合も
ありますし、システムが自動的に判断する場合もあります。

ミサイルは、地上の射撃装置からの指令により、または、自ら目
標を捉えて誘導されます。ミサイルが目標を捉える方法も、
(1)目標が発する赤外線を捉える、(2)地上装置から目標に電
波を発してその反射波を捉える、(3)ミサイル自らが目標に電
波を発してその反射を捉える、という3種類が主要なものです。

ミサイルが目標に接近すると信管が目標との近接を感知して作動
します。対空ミサイルの場合は、直撃ではなく弾頭の破裂による
破片効果で目標を撃墜するのが一般的です。


(次回に続く)

(いちかわ・ふみかず)

 
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。

退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に
出演。 https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
 https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
 https://youtu.be/D_md0ZSJNds
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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