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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊
した即応予備自衛官でもあります。
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こんにちは、エンリケです。
きょうから、堂下提督の連載再スタートです。
今回のテーマは「リーダーシップ」
私も含めた一般人の多くが、
軍人さんから聞きたいはなしのひとつといえましょう。
仕事や人生の場で実際に活かせる
自己啓発そのものだからです。
この連載が、その期待に応えてくれることは
いうまでもありません。
さっそくどうぞ↓
ご質問がご感想はこちらからどうぞ。
http://okigunnji.com/url/169/
エンリケ
追伸
文中で取り上げられている、
加藤友三郎元帥の見識には、ほとほと感服しました。
感想や疑問・質問やご意見などなど、
お便りはいつでも受け付けています。(堂下)
⇒
http://okigunnji.com/url/169/
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【戦う組織のリーダーシップ(1)】
「今に生きる海軍先輩の教え─加藤友三郎長官の見識─」
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
皆さんこんにちは、海自OBの堂下(どうした)と申します。
昨年10月から今年3月にかけて『戦う組織の意思決定入門』と題
して連載させていただきましたが、お蔭さまで近く並木書房から
同じタイトルで出版の運びとなりました。今回は、前回の連載で
カバーできなかった「リーダーシップ論」について、旧海軍のエ
ピソードなど織り交ぜながらお話ししたいと思います。よろしく
お付き合いください。感想・質問などお聞かせいただければ幸い
です。
海軍が海上自衛隊に残した多くの遺産の中で、リーダーのあり方
についての教えは、時を超えて今日もなお輝きを失わないものの
ひとつです。この教えは、海上自衛隊の中に脈々と引き継がれて
いますが、海軍出身者とその直接の指導を受けた世代が引退して
久しく、平成の海上自衛隊を担ってきた私たちの世代は、上の世
代からの指導か、書籍、講話録などを通じてしかその教えは知り
得なくなっています。
本連載では、これら海軍の先輩方の教えのうち、現代の「戦う組
織」のリーダーにとって参考になると思えるものを紹介していき
たいと思います。
▼私見:「海軍式リーダーシップ」とは何か?
まずは、戦う組織のリーダーに求められるものは何か?というこ
とについて考えてみます。これまで40年近くにわたってさまざま
な海軍の先輩のリーダーシップ論に接してきました。そのたびに
「これだ!」と思うこともあれば、当時の自分としては咀嚼(そ
しゃく)しきれなかったものもありました。
しかし、今となってみると、それぞれをリーダーシップ論全体の
幅と奥行きの中に位置づけ、自分なりに理解できるようになった
気がします。もともとは海軍の先輩の誰かの考えがもとになって
いるのですが、これらをひっくるめて次の4つの側面(資質・個
性・役割・モード)から捉えて、「海軍式リーダーシップ」と呼
ぶことにします。
4つの資質: 「知識」「見識」「胆識」「節操」
2つの個性: 「理性」「感性」
3つの役割: 「象徴」「決裁者」「先輩」
2つのモード: 「有事」「平時」
それぞれの側面にはいくつかの要素やパターンを挙げていますが、
実際にはこれらの間に無数の中間型があり、それぞれが独特のリ
ーダーシップのスタイルを作り上げるわけです。
私が広島県江田島市にある幹部候補生学校長(海自に入隊したて
の防衛大学校や一般大学出身者を1年間教育)を命じられた時、
ある先輩から『活眼活学(かつがんかつがく)』という本をいた
だきました。安岡正篤(やすおかまさひろ)という東洋思想家の
著書です。この人は戦前、海軍大学校や水雷学校で講義をし、
「海軍の安岡正篤、陸軍の大川周明」といわれたほどの人物で、
戦後は政財界に多くの敬仰者を持ったそうです。
おそらく、「君はこれまで艦隊とか市ヶ谷とかの切った張ったの
世界でやってきて、人の教育なんて考えたこともなかっただろう。
これで少しは勉強してはどうか」という親心だったと思います。
そこから50歳の私のにわか勉強が始まるわけですが、その安岡
正篤は、同書の中で、戦後の「難局」を救う人物に必要な4つの
資質について述べています。これらはそのまま戦う組織のリーダ
ーに必要な資質であると思います。
▼プロとして必要な「知識」
まず、「知識」です。安岡は「知識というものは、薄っぺらな
大脳皮質の作用だけで得られます。学校へ入って講義を聞いてお
るだけでも、あるいは参考書を読むだけでも得ることができます。
しかし、これは人間の信念とか行動力にはなりません」と述べて
います。
確かに真面目に勤務さえしていれば、知識とか技能というものは
早い遅いの違いはあってもある程度は身につくものでしょう。また、
そうでなければ「プロ失格」といわれても仕方なく、戦う組織は成
り立ちません。
▼「知識」を生かすための「見識」
もうひとつの必要とされる資質は「見識」です。「ある1つの
問題についても、いろいろの知識を持った人が解答をします。し
かし事に当たってこれを解決しようという時に、こうしよう、こ
うでなければならぬという判断は、人格、体験、あるいはそこか
ら得た悟り等が内容となって出て参ります。これが見識でありま
す」と、知識と見識の違いを説明しています。
大事なのは知識をどう生かすのか、どういう場合に適用するのか
ということであり、洞察力、直感、信念、リスク感知能力、他者
の立場を理解する共感力などから生まれてくるものが見識という
ことだと理解できます。
明治43年、岩国沖で訓練中の第6潜水艇が沈没、佐久間艇長の
「小官ノ不注意ニヨリ陛下ノ艇ヲ沈メ部下ヲ殺ス、誠ニ申訳無
シ…」という遺書のことをご存知の方も多いと思います。
当時この遺書は大変有名になり、日本中に同情を巻き起こしま
した。呉での合同葬儀のあと、義損(ぎえん)金の募金と記念碑
の建立が決定され、碑文は佐久間艇長の遺書全文を刻印する方向
で計画されたのも自然の流れといえました。
これに対し、当時呉鎮守府長官の加藤友三郎(のち総理大臣)は、
発起人総代の海軍省副官井出大佐に対して、「眼の前に死の迫り
来るこのような場合において遺書を認(したた)めた艇長の慎重
なる態度には誰も異議がないだろうが、一面において遺書を書く
だけの余裕があるなら、まず艇を浮き揚がらせるための手段にな
お尽くすべき事はなかったか。この遺書にあまりに同情を表する
ことで将来同じような場合に、まず遺書を認め、しかるのちに本
務に取りかかるという心得違いの者が出てくる恐れはないのか。
(中略)是非遺書を彫刻したいとの諸君のご希望ならば敢えて反
対はしないが、個人としては希望しない。(現代語訳:著者)」
と異議を唱えました。
これは大勢が同情論に大きく傾くなか、海軍の将来を見据えた冷
静な判断であり、リーダーとして必要な見識の好例といえると思
います。
ちなみに、完成した碑文に艇長遺書の刻印はなく、事故に関する
簡単な記述と艇員全員の階級氏名が刻印されました。また、平時
の訓練における殉職で永くその栄誉を称えられる例は佐久間大尉
以降には見られなくなりました。(山本政雄2等海佐「第六潜水
艇沈没事故と海軍の対応」(『防衛研究所紀要』2005年3月)
(以下次号に続く)
(どうした・てつろう)
【著者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共政策論修士、
防衛研究所一般課程修了。護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、
護衛艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等として海上勤務。陸
上勤務として内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)出向、米中
央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長(初代)、幹部候
補生学校長、防衛監察本部監察官、自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴
地方総監、横須賀地方総監等を経て2016年退官(海将)。
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