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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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【2月10日配信】桜林美佐の国防ニュース最前線
「憲法改正、加憲で自衛隊は国を守れるのか?」
市川文一元陸自武器学校長
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
こんにちは、エンリケです。
二十六回目の面白兵器技術は、
「対戦車誘導弾」の五回目。
きょうの主役はMMPMです。
さっそくどうぞ。
エンリケ
追伸
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意外と知られていない面白兵器技術(26)
「対戦車誘導弾(その5)『中多(中距離多目的誘導弾)MMPM』」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
今回で対戦車誘導弾の説明は終了します。ATMは、各種誘導
弾のなかでも、最も単純なシステムですから、説明も分かりやす
かったのではないかと思います。次回からの地対空誘導弾になる
と、システムが複雑になり説明もやや専門的になりますが、シス
テムの基本は同じです。
というよりは、小銃から最新鋭のミサイル防衛システムまで、
兵器としてのシステムの基本は同じです。最も単純な兵器である
小火器はほとんどの操作が人力ですが、火砲、戦車砲、誘導弾と
システムが複雑になると、人力が機械に置き換わります。誘導弾
は、さらに、真っ直ぐにしか飛ばない弾丸が、左右上下に方向を
変えられる機能が追加されます。
兵器(火力)システムを単純化すれば、目標を捉えて、目標を
照準し、弾を発射し、目標に命中させるのが基本です。小銃の場
合は人が目標を捉え、目標までの距離を判断し距離に応じて射角
をとります(通常、照星と照門で調整します)。目標が移動して
いる場合は、移動方向のやや先に照準を合わせます。そして弾を
発射するという一連の操作をほとんど人が行ないます。
これが今回紹介する最新鋭の「中多(中距離多目的誘導弾)」
や、次回からの対空誘導弾では、人が行なってきたことのほとん
どを機械が処理します。目標をレーダーで捉え、コンピューター
が目標を追随して、射撃のための諸元を計算します。最新鋭のシ
ステムであれば、最適なミサイル発射時期をコンピューターが計
算し、自動でミサイルを発射します。
発射されたミサイルは、誘導方式によって若干違いはありますが、
目標を追随し、目標の将来位置とミサイルの自己位置の差をなく
すようにコンピューターが計算して目標まで誘導されます。後は
目標を破壊するための最適なタイミングで信管が作動します。
専門的で難しくなるのは、機械やコンピューターがどのように
作動し、データを処理するかの部分です。兵器の解説が専門的で
難しい場合は、システムの基本に戻ることにより、重要な部分だ
け抜き出して読み取ることができます。
読者のYさんから、ご所見をいただきました。ありがとうござ
います。そのなかで、国内の防衛技術・生産基盤の脆弱性が国の
安全を左右するというご意見をいただきましたが、まさに「我が
意を得たり」です。
本連載の前書きでも、兵器を輸入することの問題と国産の重要性
を説明してきましたが、一般的にはなかなか理解されないのが実
態です。防衛省においても、省の委員会まで立ち上げて議論して
きたことですが、防衛技術・生産基盤の弱体化は進む一方です。
限界が来てからでないと理解されないのかもしれません。
さて、本題の兵器技術は、対戦車誘導弾の最後、5回目の「中多」
です。陸自では最新のATMです。車載のままミサイルを発射できる
のも特徴ですが、実は、最初に開発された64MATも車載のまま発射
できます。戦い方や運用が変化することにより、装備品の形態が
変化していくということです。
▼ 陸自最新のATM「中多(中距離多目的誘導弾)」
陸自の最新の対戦車誘導弾が中距離多目的誘導弾です。「中多」
「MMPM」と呼ばれていますが、「中多」と呼ばれることが多いと
思います。ここで初めて、○○式という名称がなくなりましたが、
これは防衛省内の装備品開発の手続きの違いによるものです。
○○式と付くのは、通常、「装備品の制式に関する訓令」に基づ
いて開発されたものです。現在では、「装備品の制式に関する訓
令」が廃止されたため、○○式という名称を付ける必要はありま
せんが、16式機動戦闘車のように、慣例的に○○式の名称を使用
している装備品もあります。
「中多」は、対戦車用(上陸用舟艇や建造物内の目標にも使用す
るため多目的という名称を使っています)としては、陸自では初
めてレーダーを搭載しました。レーダーを搭載しているというこ
とは、レーダーで目標を捜索・照準できるということです。当た
り前と言えば当たり前ですが、過去のMATは人が目標を捜索してい
ましたから、画期的です。レーダーに加え赤外線画像による捜索・
照準も可能です。
ミサイルは、第3世代の「打ちっぱなし」で目標の赤外線を捉
えて誘導されます。同時に、2.5世代の「中MAT」のように照準器
からのレーザー照射による反射波で誘導することもできます。レ
ーダーで捉えられない見通し外の射撃も可能ということです。当
然、この場合は、照準手が目標の見える場所でレーザー照射をし
なければなりません。
また、レーダーによる追随・照準と合わせて、ミサイル発射後
の空中ロックオンが可能であり、多目標に対し連続して射撃がで
きます。前々回の「軽MAT」の説明では省きましたが、軽MATの場
合は照準した時にロックオンすることが必要です。つまり、照準
の段階でロックオンできなければミサイルは発射できません。同
じ第3世代でも「中多」ではこの点が改良され進化しています。
ミサイルは6発の搭載ですから、ほぼ同時に6目標に対処できる
という優れものです。しかも、すべてのシステムが高機動車1両
に積まれており、車載のままの射撃が可能なため、目標発見即射
撃という瞬間交戦性にも優れます。MPMSの場合も車載のまま射撃
可能ですが、システム全体が車両6両に積載されているため、シ
ステム構成に時間がかかります。射距離も運用も違いますから単
純に比較できませんが、「中多」は非常に取り扱いやすいシステ
ムです。
車載のままの射撃以外にも、システムを地上に設置しての射撃
も可能なため、各種戦闘に対応できます。捜索・照準も2タイプ、
ミサイルの誘導も2タイプ、射撃要領も車載と地上設置の2タイ
プということで、過去の誘導弾と比べ、運用の幅が格段に広がり
ました。
(次回に続く)
(いちかわ・ふみかず)
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。
退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に
出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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