こんばんは、坂佐井です。
西欧の神話・歴史・宗教まとめ読み~第15話 十字架刑
すでに十字架を立てる穴は掘られていた。
兵士たちはイエスに没薬を混ぜた葡萄酒を与えたが、イエスは飲まなかった。
イエスの衣服を脱がせ、くじを引いて分け合い、裸の体を太い釘で十字架に打ちつけた。
「うぉぉぉぉーッ」
さすがのイエスもあまりの激痛に、叫び声をあげた。
十字架の頭上には、「ユダヤ人の王イエス」と嘲りの文字が記されている。
イエスは呟いた。
「父よ、彼等をお赦しください。自分がなにをしているか知らないのです」
と。
このとき二人の強盗が一緒に十字架に懸けられた。
イエスを真ん中にして左右の位置だった。
十字架に懸けられて苦しむイエスを見て、群衆の中から、
「おい、救世主なんだろ。だったら自分を救ってみろよ」
罵りの言葉と一緒に笑いが飛ぶ。見世物を見る気分…。
民衆は時としてひどく残酷になるものだ。
その横で強盗の一人が、
「まったくだ。ついでに俺たちも救ってくれ」
と、眼をむいてイエスを睨んだが、もう一人が相棒をたしなめて、
「俺たちは当然の報いよ。しかしこの人は何も悪いことをしちゃいない。イエスさんよ、天国に行くときにゃ俺を思い出してくれよな」
と懇願した。
イエスはやさしい視線を向けて、
「わかった。あなたは今日私と一緒に楽園に行くだろう」
と囁いた。
このあたりの話しが、犯罪者であっても、神を信じ、反省を込めて祈れば赦されるキリスト教の教えに繋がっているのだろう。
ローマの兵士の中に混じって、イエスを悲しげな表情で見つめている者がいた。
マグダラのマリアである。
マグダラはガリラヤ湖畔の町で、彼女はこの町の出身であり、かつては娼婦だったといわれる女性である。
しかしイエスと出会って、改心した。彼女は信仰心が厚く、イエスの足を泣きながら洗い、自分の髪で拭い、そのけなげな心がイエスに認められて、罪が赦された。
イエスの公生活の後半に、マグダラのマリアはイエスの近くにいて、親しく接していた。
イエスの恋人のような存在である。
つい最近では、結婚してイエスの子を身籠ったという説もある・・・真相は定かではないが。
十字架で苦しむイエスを、愛するがゆえの深い悲しみが襲ってくるのを、止めることができず、何もできない自分の力のなさに、ただ涙を流すことでしかなかった。
イエスが十字架に懸けられたのは、午前九時頃。
昼の十二時に空も地も真っ暗になり、それが三時まで続いた。
日蝕かな。太陽は光を失い、異様な静けさが漂う。
イエスが叫んだ。
「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」
その意味は、「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになるのですか」だが、このときイエスの心に去来したものはなんだったのか。
群衆は「エリ エリ」という叫びを聞き違え
「エリヤ様を呼んでいるんだ」
と呟き、偉大な預言者がイエスを救いに来るのを見ようと、暗黒の空を見上げたりしていたらしい。
ローマ兵が葡萄酒を海綿に浸してイエスの口もとに近づけたが、イエスは振り切った。
そして、こう神に懇願した。
「父よ、私の御手に委ねます」
と、声を絞って呟き、息を引き取った。
イエスが本当に死んだのか確かめるため、わき腹に槍で刺してみた。すると激しく血と水が噴出したという。
イエスの神々しい最後を見届けてローマの百人隊長が、
「本当にこの人は神の子だった」
と呟いたのだった。
イエスの死の瞬間に地震が起こり、神殿の垂れ幕がまっ二つに裂け、人々をおののかせたとか。
奇蹟だろうか。
時に西暦三十年四月七日午後三時過ぎの出来事である。
この夜より、イスラエルは過越しの祭りに入ったのである・・・
さて、次回の西欧の神話・歴史・宗教まとめ読みは、イエス・キリスト編最終話、「イエスの復活」をお送りします。
イエスは復活しそして神になった・・・お楽しみに~
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
※クリックだけで配信解除ができます