〇〇〇〇さん
こんばんは、坂佐井です。



西欧の神話・歴史・宗教まとめ読み



前回、イエスが馬小屋で生まれたことまでを、お話しした。
　


実はこの後のイエスの幼少期間は、福音書にはほとんど書かれていない。

　

次にイエスが現れたのは、西暦二十八年、成人してヨハネから洗礼を受けたときである。



イエスは三十代だったと思われる。

　

成人したヨハネは俗世間の立身出世などには目もくれず、ヨルダン川流域の荒れ野をすみかとし、駱駝の毛衣をまとい腰に革帯を締め、食するものはイナゴと野蜜だけ、聖者にふさわしい生活を送りながら、



「悔い改めよ。神の国は近づいた」

　

と人々に呼びかけ、求め来る者に洗礼を授けた。



多くの人々がヨハネの叫び声に耳を傾け神への思いをあらたにした。



「これはイザヤの預言かもしれん」


　
だれかが言い、噂は風に乗って広がる。

　

ヨハネは人々の問いに答えて告げた。

　

「私よりも優れた方が、後から来られる。私などは、その方の履物の紐を解く値打ちもない。私は水であなたたちに洗礼を授けるが、その方は聖霊で洗礼をお授けになる」



これはイエスとのことを、言っているのである。


　
やがてイエスその人がヨハネの前に姿を見せて、

　

「私に洗礼を授けてほしい」

　

と願った。

　

襤褸をまとっているけれど、とても神々しい風貌…。ヨハネはその人が誰か、直感的に覚ったに違いない。



畏敬をあらわにして、

　

「とんでもないことです。私こそあなたから洗礼を受けるべきなのに…。あなたがわざわざ私のところへいらっしゃるなんて、おそれおおいことです」

　

と、むしろ辞退の姿勢を示したが、イエスは、

　

「今は止めないでほしい。正しいことをすべておこなうのは、われわれにふさわしいことなのだから」

　

と告げて、ヨハネから洗礼を受けた。



イエスに洗礼を与えた人、それが洗礼者ヨハネである。

　

洗礼を終えたイエスが水の中からあがると、天が開き、聖霊がさながら鳩のようにくだって来てイエスを包む。神の声が聞こえた。

　

「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」

　

と。神の子イエス・キリストの来臨である。


　
救世主の来臨は、人々のあいだで長く望まれていたことであり、その救世主が現れる前に露払いのような役割を担った人が登場し、道を整えるという考えがあったのである。

　

因みにこの救世主がイエスだと信じた人たちがキリスト教であり、今も救世主を待ち望んでいる人がユダヤ教である。


　
洗礼を受けたのち、どことなく威厳のありそうなイエスを見て、ヨハネの弟子二人が、イエスのあとを追って、言った。

　

「私どもは洗礼者ヨハネの弟子ですが、あなた様は、わたしたちが待ち望んでいた救世主なのでしょうか」

　

と尋ねた。



イエスはこのときすでに病人をいやし盲目の人の目を開くなど、いくつかの奇蹟をおこなっていた。

　

イエスは答える。

　

「帰って、あなたが見聞きしたことをヨハネに伝えなさい。目の見えない人は見え、足の不自由な人は歩き、らい病を患っている人は清くなり、耳の聞こえない人は聞こえ、死者は生き返り、貧しい人は福音を知らされる。私につまずかない人はさいわいである」

　

と、表現は少々・・・（笑）だが、答えはイエスとのこと。

　

二人の弟子が立ち去ったあと、イエスは人々に向かってさらにこう続けていった。

　

「あなたがたは何を見に荒れ野へ行ったのか。風にそよぐ葦を見るためか？それともすばらしい衣装を着た人を見るためか？そうではあるまい」

　

さらに、

　

「すばらしい衣装を着て裕福に暮らす人なら宮殿に行けばいくらでもいる。わざわざ荒れ野へ行ったのは、預言者を見るためだろう。それは、よい。だがヨハネは預言者以上のものだ。」

　

さらに、さらに、

　

「イザヤの預言の中に、“見よ、私はあなたより先に遣わし、あなたの前に道を準備させよう“と書いてあるが、その使者はヨハネのことだ」

　


さらに、さらに、さらに、

　

「よくよくあなたたちに言っておく。およそ女から生まれた者のうち、ヨハネより偉大な者はいない。しかし、神の国でもっとも小さな者でも、彼よりは偉大である」

　

大衆はその言葉に耳を傾けたのであった。

　

洗礼者ヨハネは人々に信頼された、ひとかどの聖者であったのだ。



さて、次回の西欧の神話・歴史・宗教まとめ読みは、イエス・キリスト編の第5話、「ヨハネの死」をお送りする。彼はなぜ殺されなければならなかったのか？ぜひ、お楽しみに～




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