〇〇〇〇さん
こんばんは、坂佐井です。



西欧の神話・歴史・宗教まとめ読み



さて、今回は、「貞女の鑑、ルクレティアの悲劇」をお送りする。



ロムルスが作った王政制度は、7代まで続いたが、やがて新しい力が王政に終止符が打たれる。



その中心には、ある一人の女性の犠牲があったのである・・・



＝貞女の鑑、ルクレティアの悲劇＝



あるとき、王子であるセクストゥス・タルクィニウスのとこで、宴会があり、王の甥のタルクィニウス・コラティヌスの姿もあった。

　

この宴会での話題は、もっぱら女性の長所や短所などを語り合い、そして自分の妻の自慢話しに、花を咲かせていた。

　

そんなさなか、コラティヌスは、

　

「わが妻のルクレティアは、他のどの婦人よりも、優れている。
それが嘘だと思うなら、どうか馬に乗って、私についきてほしい」

　

ワインを飲んでいたので、かなり酔っていたであろう・・・仲間たちは興味本位に、馬に乗って、ついていくことにした。

　

しかし、その前に、留守を守る自分たちの妻も、見に行くことにした（笑）
　


何をやっているんだか！！

　


そこで彼らが見た光景は、妻たちの豪華な宴会だった・・・夫の不在をいいことに、彼女たちは毎晩大騒ぎしていたのだ。

　

そういえば昔に、「亭主元気で留守がいい」などという流行語が流行ったが2500年前にも同じような光景が、繰り広げられていたんですね（笑）

　

しかし、コラティヌスの妻ルクレティアは、すでに夜中になっていたにもかかわらず、糸を紡いでいたのだ。



夫のコラティヌスは、得意になって言った。

　

「わが妻こそ、女性の鑑である。模範とすべき女である」

　

このとき、セクストゥス・タルクィニウスはこの女を、奪い取ろうと野心を抱いたのである・・・人の妻に目をつけるとはね・・・


　
数日後、セクストゥスは、コラティヌスの留守中に、家を訪れた。
　


ルクレティアは、夫の仲間を客人として、疑いもなく、家に招き、語り合い、そして食事をともにした。

　

そして、夜も遅くなると、セクストゥスは、泊めてもらうことになった。

　

深夜・・・家中が寝静まった頃、セクストゥスは、ルクレティアの寝室に忍び込んで、興奮を抑えきれずに、ルクレティアにささやいた。
　
　

「ルクレティアよ、私はあなたを奪い取りに来た。
大声をあげてはならない。
もし、声を発したなら、この剣で、あなたを刺し殺す」

　

彼女は抵抗した。



しかし屈強な男の前では、どうにもならなかった。
　


セクストゥスは、ひどいことに暴力を用いてルクレティアを犯したのである。

　

ルクレティアは、事の起こりに呆然となり、そして激しく泣いた・・・
　


深い悲しみに暮れ、自分の運命を呪った。

　

彼女は、ローマにいる父と、戦争に赴いている夫に、手紙を送った。
　


「きわめて不幸で、重大なことがおきてしまいました」・・・と

　


すぐに父と、夫のコラティヌスは、王の甥のブルートゥスを伴い、ルクレティアの元へ駆けつけた。
　
　

夫は何が起こったのか、ルクレティアに尋ねた。
　


すると、涙を見せながら、妻は話し始めた。

　

「私は、もうきれいな体ではありません。
あなたの妻は悪人によって、汚されました。
しかし、信じてください。
私の体は汚されても心は清浄なままです。
私は自らの死によってそのことを証明します。
最後に、私を暴力によって汚した犯罪者は、セクストゥス・タルクィニウスです」

　

彼女は用意していた短剣を取り出すと、自分の心臓に突き刺した。
　


ルクレティアは、そのまま、帰らぬ人となった・・・

　
このとき、怒りを抑えきれなくなったのは、夫よりもむしろ、王の甥であるブルートゥスだった。



彼は、ルクレティアに刺さった短剣を抜くと高々とかかげながら、この行為に王の一族に対して、支配権をなくすことを誓った。

　

ブルートゥスは、元老院にこの出来事を報告すると、王の退位と王家の追放を提議した。

　

最初に触れたが、もともとがエトルリア系の王の横暴に、嫌気をさしていた時だったのでこの事件は、いいきっかけとなる。

　

タルクィニウス王は、この報を聞いて、すぐさまローマに急いだが、ブルートゥスの提議に、軍も賛同し、王に反乱した。王は命からがら、エトルリアに逃れるのが精一杯であった。

　

こうしてローマの王政は終焉を迎え、新たに共和制の時代へと、突入していくのである。



以後は、王に代わって二人の執政官（コンスル）が国を指導した。

　
　
さて、肝心のルクレティアを犯したセクストゥス・タルクィニウスはどうなったかと言うと、ガビイという町に逃れたが、情報がもたらされていたのだろう。



ガビイの市民たちによって、哀れ、殺されてしまったのである。

　

ルクレティアは、この気高い死によって、貞女の鑑として、歴史に名を残し、さまざまな西洋美術の格好の主題となったのである・・




「次回予告」

さて、次回第4話は、「孤軍奮闘のハンニバル」をお送りします。
大きくなっていくローマに対し、敢然と戦いを挑み、ローマを混乱に陥れることに成功するハンニバルの戦いをお送りします。




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