〇〇〇〇さん
こんばんは、坂佐井です。



西欧の神話・歴史・宗教まとめ読み

　

さて、パリスがスパルタの王妃ヘレネを奪い去ったために、トロイアとギリシャの雰囲気は一気に悪くなり、ついに交渉は決裂となって、トロイア戦争が開戦されることになってしまった。

　

前回はトロイアの王女、カッサンドラの悲劇のお話しをしたが、ギリシャにも、悲劇的な結末を迎えた美女がいる。



それは、ギリシャの総帥アガメムノンの長女イピゲネイアである。



因みにアガメムノンは、ヘレネの夫、スパルタ王メネラオスの兄である。

　

ギリシャでは、トロイアの王子パリスに、ギリシャ第一の美女、ヘレネを奪われたことにギリシャの武将たちは、トロイアに向けて、アガメムノンを総帥に、軍船を結集した。

　

その港はアウリス。



軍船は集まったが、なかなかよい風が吹いてくれなくて、出陣ができない状態だった。



ほとほと困っていたアガメムノンは、占い師であるカルカスに尋ねてみると、



「あなたは、女神の使いである鹿を撃ち殺し、狩猟の腕前が、女神に勝ると自慢をしましたね」

　

「確かに、そのようなことがあったな」

　

「よい風が吹かないのは、女神の怒りです」

　

気象庁のないこの時代では、自然現象は、日常におけるおこないが、良いか悪いかが、大きな問題となる。



現代では考えられないことである・・・

　

アガメムノンは、女神の怒りを解く方法を、カルカスに聞くと、

　

「大いなる生贄（いけにえ）が必要です。イピゲネイアを捧げなさい」

　

「なんと！！」

　

イピゲネイアは、アガメムノンの長女である



しかし女神の怒りを収めなければ、総帥としての、立場もなくなる。苦渋の決断であったろう。

　

アガメムノンは、すぐさま故郷のミケナイに使者を送り、イピゲネイアをこう言って呼び寄せた。



「ギリシャ軍第一の武将アキレウスの花嫁にする」

　

そう、アキレウスとは、大神ゼウスがプロメテウスの予言であきらめた美女テティスの息子である。



彼は、女神テティスと人間の父ペーレウスの子であり、神同士の子供として生まれたなら大神ゼウスの力を超えるとも言われた男であった。

　

イピゲネイアは、母クリュタイムネストラと喜び勇んで、港アウリスに駆けつけた。



が、待っていたのは恐ろしい運命であった。

　

この時代に生きる女として、彼女は生贄になる決心をしたのであるが、彼女はどうやって自分を納得させたのだろうか・・・

　

これに対して激怒したのは、アキレウスだった。



彼はこの一件に利用されたことに、腹を立てた。



そしてイピゲネイアを救おうとしたが、逆に

　

「これが、私の定めなのです。どうそトロイアに勝って、ギリシャの誇りをお示しください」

　

そういうと、彼女は、堂々とギリシャのために、火あぶりの生贄に捧げられたのである。



海を望むすばらしい景色が見える丘で・・・


　
戦争とはかくも非情なものである。



トロイア戦争で、悲劇に見舞われるのは、何も戦う男たちだけではない、女性も戦っていたのである。

　

こうして、様々な人間たちの思いが交差しながら、悲劇的な戦争へと突入していくのである。



人間とは悲しい生き物である。



そもそもが、人口が増え過ぎたことが理由で神ゼウスの案で、戦争を起こさせられたと、神話は語っている。

　

人間は、そんな神に振り回されながら、希望という、頼りない言葉を胸に日々を生きるのだ。



ギリシャ神話を読むと、そんな人間のせつない部分を感じてならない。



さて、これで「ギリシャ神話創世記編」は完結である。
この編では１話と２話で神々の話しをした。
オリンポス神々の伝説で、神話のもっとも神話らしい部分でもある。

　

３話～６話までは、トロイア戦争に突入するくだりをお話しした。



これは、「キュプリア」という作品で、キプロス島出身のスタシノスの作といわれ、トロイア戦争の原因や、戦争に突入するまでの出来事を記したものである。

　

トロイア戦争で有名な叙事詩は、ホメロスの「イリアス」だが、これが、次回の「トロイア戦争編」にあたる。

　

トロイア戦争とは、10年にも及んだ戦争で、以前は神話として、創作された世界だと言われていた。



しかしシュリーマンが、トロイの遺跡を発見したために、今では本当にあった戦争だと事実の歴史とされている。

　

そんな実際に起こったトロイア戦争を、次回から「トロイア戦争編」としてお伝えしていく。



どうぞお楽しみに～



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