配信日時 2020/12/17 22:00

【号外版】第10話 大国主の神の国譲り(後編)


〇〇〇〇さん
こんばんは、坂佐井です。



古事記は素敵なファンタジー



さて前回、アメノワカヒコの葬儀を行ったところで、終わった。



高天原の天照大神は、息子を出雲に治めるという当初の目的が、全く進んでいないことに、嘆いていた。



前回まで色々と、使者を送って、出雲のオオクニヌシと話し合ってきたが、進展がなく、埒があかないので、ついに、そうついに、天照大神は、武力行使をおこなう決断をした。



武の神であるタケミカズチノオとアメノトリフネというこれは鳥のように速く走る船。その二人が、出雲へとやってきた。



つまりは、陸軍と海軍が動いたようなものである。



出雲は伊那佐の浜にたどり着くと、タケミカズチノオは、長剣を海の上につきたてると、その切り先の上に、あぐらをかきながらオオクニヌシに迫った。(お尻が痛くないかなあ)



「国を譲るのか、譲らないのか」



「・・・・」



オオクニヌシは黙ってしまった・・・



「あなたが治めている出雲は、そもそも天照大神の子が、治めるべきところなのだ。違うかね」



なんと無茶苦茶なー! 



オオクニヌシもそう思ったにちがいない。



でも高天原の強大な武力の前に、戦うことは避けたかった。
そこで得意の、のらりくらり戦法を取ることにした。



「私だけでは、判断できません。まずは息子のコトシロヌシに聞いてみましょう。でも今は漁に出ているので、いませんけど」



と、とりあえず態度を保留した。



しかし、アメノトリフネはすぐに、船を出しコトシロヌシを連れてきた。



コトシロヌシは、おそらく脅しもあったと思うが、完全に戦意を喪失していて、



「はい、どうぞ、どうぞ、私は天照大神の御子に差し上げてもかまいません」



そういうと、逆手にポンと手を打って、垣根の中に、隠れてしまった。



この逆手にポンと手を打つという行為は、呪いをかけたとも言われている。



コトシロヌシは承諾したものの、1人、一方的な高天原の論理に異を唱えた者がいた



それはもう1人の息子、タケミナカタである



タケミナカタは暴れん坊だった。彼は意気揚々と、交渉の場に現れると、



「お前たち、ここから出て行け!!」



そういうと、タケミカズチノオの手を取って握り潰そうとした。



ところが、タケミカズチノオの手は氷の刃であり、冷たくて痛くて、握れなかった。



「どうした、それでおしまいか」



今度は逆にタケミカズチノオが、タケミナカタの手を取って握ると、あっさりと引っ張られ、体もろとも投げ飛ばされてしまった。



歴然とする力の差に、恐れをなしたタケミナカタは逃亡した。
しかし、タケミカズチノオは後を追う。



とうとう、信濃の諏訪湖の近くに追い詰められ、殺されそうになる。



「お許し下さい。出雲国は、天照大神の御子に献上することに賛成します。私も絶対にこの地から外には出ません・・」



必死の命乞いに、タケミカズチノオは、命は助けてあげた。



余談だが、この逸話が元になって、諏訪湖から一歩も出ないと約束をしたタケミナカタは、諏訪大社の祭神となっている。



それにしても、ずいぶんと遠くまで、逃げたもんである。



ついに、追い詰められたオオクニヌシは、



「わかりました。この国を天照大神に譲ります。
ただ一つの住まいとして、壮大な社をお造りください。
しっかりとした土台石の上に、太い高い柱で、屋根を天に届くぐらいの高さで、美しく飾って下さい。
私は、そこに隠居します」



せっかく築き上げた出雲の国を、ついに譲り渡すことを決意した。



オオクニヌシもさぞかし、くやしかったろうし、無念だっただろう。一生懸命築き上げたのだから・・・



この社を建てることを条件に、オオクニヌシは、天照大神に仕えることを約束した。



これを受けて、タケミカズチノオは、御殿を建てた。



これが、現在の出雲大社である。



かくして、天照大神は、高天原でホッと胸を撫でおろし、かねてからの計画通り、我が子アメノオシホミミの命を、地上へと派遣するのであった・・・つづく



=次回予告=

「第11話 天孫降臨」

天照大神が、ついに子孫を高天原から、日本へと降臨させます。
ここから、日本の歴史が始まるのである。
次回をお楽しみに~




~マメ知識~出雲大社が建てられた本当の理由・・・


出雲大社って、聞いたことぐらいはあるだろう。



でも、実際にはどんな社なのか、知る人は少ない。



昔はそれこそ、横浜のランドマークタワーなどが建つ前の大昔では、日本の高層建築物は、この出雲大社だということは、常識だった。



それは、古くから伝わる言葉に、「雲太・和二・京三」というのがある。



これは出雲太郎・大和二郎・京三郎といい、日本の建築物を、大きい順に表わしている。



雲太はもちろん、出雲大社のことであり、大和二郎は、奈良にある東大寺大仏殿、京三郎は、京都の大極殿のことで、平安時代の口ずさみという本に出てくる。



出雲大社とは、日本で一番高い建築物だったのだ。



現在では観光名所として名高い出雲大社は、24メートルしかないが、大昔には、100メートルの高さがあったという。



さすがにこれは構造的に不可能だが、48メートルという高さで、実在した可能性が高いとされる。



そうなると、奈良の当時の大仏殿が、45メートルだったので、一番高い建築物になる。



もっとも今の社殿とは違い、天に向かって真っ直ぐ伸びた柱の上に、火の見櫓のようなものが、ちょこんとのっかっているようなものであったとされている。



実際に出雲大社では、当時のものと思われる巨大な柱の遺構が発見されているので、巨大建造物が実在したことは間違いないだろう。



しかし、約束とはいえ、このような日本で最大の建造物を敗者のために、なぜ建造したのだろうか!?



それは、本文で触れたような、古事記の話しのようなきれいな結末ではなかったのではないかと思われる。



日本は昔から、祟りを恐れる歴史がある。
実際に今でも、縁起をかついだりするのだから、祟りを恐れる民族であることに、異論はないだろう。



オオクニヌシは、自分が築いた国を、天照大神の一方的な命令によって、国を奪われた。



神話では国譲りとされていて、オオクニヌシは隠居したことになっているが、実際は処刑されたのではないだろうか!



つまり、オオクニヌシは、納得した死を与えられることなく、死んだのではないだろうか。



そして、天照大神率いる大和朝廷は、オオクニヌシの祟りを恐れて、出雲大社という巨大な出雲大社を築いたのではないだろうか。



以上のような、説はいろいろな人が、唱えている説であり、自分も、基本的にはそうだったのではないかと、思っている。



古事記や日本書紀とは、勝者側の都合のいいように編纂できるし、きれいごとに話しを収めることは、たやすい。



そんなことを、考えながら読むと、真実かどうかはともかく古事記っておもしろいですよね!!





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