〇〇〇〇さん
こんばんは、坂佐井です。



「ローマ帝国とキリスト教編」
　　☆西欧の神話・歴史・宗教まとめ読み
　～第8話～　パウロの宣教旅行



　西暦45年　パウロがキリスト教の伝道旅行を始める。

　西暦54年　４代皇帝　クラウディウスが妻に毒殺される。

　
　

　＝パウロの宣教旅行＝



前回、イエスの言葉により、回心したパウロは、一転してイエスの教えを説き始めた。
そんなパウロを見て、みんなが驚いた。
イエスの教えを信ずる人たちのあいだでは、



「うそ。この間まで私たちの仲間を縛り上げてた人じゃない」



「なんか企だてんじゃないのか」

　

おおいに警戒され、疑われもしたが、次第にパウロの真意を知って、疑いを解いていく。
先に私財を投じて初期教会の設立に貢献したバルナバが、



「この人は大丈夫。すばらしい仲間だ」

　

と、パウロを弁護してくれたのもおおいに効果があっただろう。
エルサレムにいた使徒たちもパウロを認知し、これに力を得たパウロは雄弁にイエスの教えを語り、宣教に励んだ。

　

ここでパウロは第一回の宣教旅行へと旅立った。このとき同行者として、リーダーの一人としてバルナバが同行している。

　

キプロス島を経て、現在のトルコ領アタリアも到り、そこから内陸に入り今日のコンヤとその周辺の町々を訪ねている。

　

西暦49年にエルサレムで催された使徒会議は、意味深いものであった。
出席者はペテロやイエスの弟ヤコブなどエルサレム教会の重鎮たち、そしてアンタキヤ教会からパウロやバルナバたちが集まった。

　

善じつめれば、この会議のテーマは、異郷のキリスト教徒にも割礼をほどこすべきかであった。
より正確に言えば、割礼に代表される律法を固く守るべきかどうかである。

　

パウロの考えは、まずイエス・キリストを信ずること。律法を守るかどうかは二義的な問題である。

　

イエス・キリストを信じなければ、律法もなにもないのであり、割礼より先にまずイエス・キリストを信じなさい。
割礼はユダヤ教にとっては大事なことであるが、キリスト教はユダヤ教とは違う。

　

パウロなくしてキリスト教なし、という言葉は、パウロの精力的な布教活動についてのみ、言われるものではなく、神学的な判断によっても言えることであったのである。

　

第二回の宣教旅行ではバルナバと別れ、ギリシャ人の父を持つテモテを連れて行く。
このときの旅は陸路を選んでアンタキアからイコニオンに行き、イエスの霊に導かれて一気にトロイアへ入った。

　

ここはホメロスの叙事詩で名高い、エーゲ海のトルコ側沿岸の町である。

　

席の温まる暇もなく第三回の宣教旅行に出発する。
このときもギリシャにまで足を進めているが、滞在が長かったのは三年間いたエフェソスである。

　

旅の最後はこのときもエルサレムだったが、数日後、パウロは大きな危険に身をさらされる。
エルサレムのユダヤ教徒たちは、



「パウロが来ているのか。勘弁できねえ」

　

宣教の噂は聞こえていただろう。
ユダヤ教徒にとっては、目障りな存在だった。
近親憎悪のような感情もあったろう。かつてはパリサイ派の信徒であり、彼等の仲間だった。

　

それが転向して、今はイエス・キリストを唱え、律法を無視している。
ユダヤ教徒を切り崩してキリスト教に改宗させている。しかもそのエネルギーはただことではない。



「憎っくき裏切り者め。殺してやる。」

　

騒動が起き、エルサレムを統治していたローマ兵が駆けつけ、とりあえずパウロを捕らえて群衆を静めた。

　

それからのやりとりは、イエスの最後に少し似ている。ユダヤ教徒たちは「パウロを殺せ」と叫び、ローマの千人隊長、カエサレア在任中のローマ総督、ユダヤ王ヘロデス・アグリッパスまでがからんで裁判がおこなわれた。

　

諍いの根本は宗教的な対立であり、ローマの法律に照らし合わせてパウロを有罪とする根拠は薄い。

　

パウロはみずからがローマ市民であることを強調し、ローマ皇帝への上訴敢行する。

　

すでに身柄はカエサレアに送られていた。
そこは駐屯軍の拠点となっていた港町であり、パウロは二年間、この町の牢に繋がれ、そののちローマへ護送されたのである。
・・・つづく



さて、次回は、ネロＶＳキリスト教をお送りする。パウロ・ペテロ・ネロの人生最後の悲しい結末をお楽しみに～



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