配信日時 2026/10/20 07:14

「ポジティブ66〜80%、ネガティブ10〜13%」が理想?! ―幸福度を高める「感情比率」の最新研究―【カレッジサプリ】

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令和8年10月20日(第4622号)


「ポジティブ66〜80%、ネガティブ10〜13%」が理想?!
 ―幸福度を高める「感情比率」の最新研究―


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話:3505字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

本日は、ポジティブ心理学にもまつわる、
ある論文をご紹介したいと思います。

テーマは「理想的なポジティブ感情とネガティブ感情の比率は、
一体どれくらいなのか?」というお話です。

これまでも、この感情比率については
さまざまな研究で触れられてきました。

例えば、結婚生活においては、ゴットマン博士が
ポジティブとネガティブの相互作用の比率として
「5対1」が重要だと述べました。

また、かつてポジティブ心理学では
「ロサダ比率」と呼ばれる「2.9対1」という基準も提唱されました
(ちなみに後に数理モデルの問題が指摘され、この論文は撤回されています)。

▽▽▽

さて、今回ご紹介するのは、この理想的な感情比率の最新研究です。

結論からすると、

「ポジティブ感情が多ければ多いほど、
ネガティブ感情が少なければ少ないほどよい」とは、必ずしもいえない

ことが示されました。

その割合は、

「ポジティブ感情が約66〜80%、
 ネガティブ感情が約10〜13%が理想的な感情比率である」
 
とのこと。

さらに、

「自分が理想とする感情」と
「実際に感じている感情」が一致していることが、
人生満足度の高さと関連していた、

という発見でした。

ということで、早速中身を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!


===========================
<本日の論文>

タイトル:Positively Negative: Why Negative Affect is Linked to Higher Wellbeing
(ポジティブなネガティブ感情:なぜネガティブ感情が高いウェルビーイングと関連するのか)
掲載誌:Journal of Happiness Studies, Volume 27, Article 61(2026年)
著者:Jinrui Liu、Ragnhild Bang Nes、Joar Vittersø、Irene J. E. Teulings、Espen Røysamb
所属:オスロ大学、ノルウェー公衆衛生研究所、ノルウェー北極大学
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■30秒でわかる本論文のポイント

・米国の成人352名を対象とした研究では、
 多くの人が「ネガティブ感情が一切ない人生」を理想として選ばなかった。

・人々が理想とした感情の配分は、
 ポジティブ約66〜80%、ネガティブ約10〜13%だった。

・国際サンプル638名の分析では、
 理想よりネガティブ感情が多い場合、
 それが少ないほど人生満足度が高い傾向があった。

・一方、すでに理想よりネガティブ感情が少ない場合、
 さらに減らしても人生満足度との明確な関連は見られなかった。

・最も人生満足度が高かったのは、
「理想の感情」と「実際の感情」が一致している人たちだった。


■研究の背景と目的

ポジティブ心理学では、これまで
「ポジティブ感情を増やすこと」「ネガティブ感情を減らすこと」が、
ウェルビーイングを高める方向性として考えられてきました。

しかし、ここで一つの疑問が生まれます。

「では、ネガティブ感情がまったくない人生が、最も幸せなのか?」
「ポジティブであればあるほど、幸せなのか?」という疑問です。

例えば、悲しみがあるからこそ他者を思いやり、
怒りがあるからこそ不合理な状況を変えようとする。

不安があるからこそ、危険に備えることができる。
自己成長にもつながる。

そんなふうに考えると、「ネガティブ感情」にも役割がありそう。

そこで本研究では、
「人々はどんな感情の割合を理想としているのか?」、
そして「その理想と現実の一致が、人生満足度とどう関係するのか?」
を検証しました。


■研究の方法

本研究では、2つの研究が行われました。

◯研究1:理想の感情比率を調べる(352名)

アメリカ在住の成人352名を対象に、
「ポジティブ感情100%、ネガティブ感情0%の人生」と
「多少のネガティブ感情が含まれる人生」を比較して、
どちらを選ぶかを尋ねました。

また、人生の時間を100%としたときに、
ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル(中立)の感情を
どれくらい配分したいか、という課題も行いました。

◯研究2:理想と現実の一致度を調べる(638名)

国際サンプル638名を対象に、
「実際に感じている感情」と「理想としている感情」のズレを調べました。

ここで使われたのが
「感情の一致(Emotional Alignment:EA)」という考え方です。

例えば「本当はもっと楽しく過ごしたいのに、現実はそうではない」
「もう少し不安が少ないほうがよいのに、実際には不安が多い」といった、
理想と現実のズレを数値化したわけです。

その上で、「人生満足度」「個人的成長」「知恵」などとの関連を分析しました。


■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:人はネガティブ感情が「ゼロの人生」を望んでいない

まず興味深かったのが、研究1の結果です。

人々が理想とした感情の配分は、
測定方法によって多少の違いがあったものの、
概ね以下のようになりました。

ーーーーー
・ポジティブ感情:約66〜80%

・ネガティブ感情:約10〜13%

・ニュートラルな感情:約13〜20%
ーーーーー

例えば、人生の時間を100%に配分する課題では、
ポジティブ66.8%、ネガティブ13.4%、
ニュートラル19.9%という平均値でした。

また、「ネガティブ感情がまったくない人生」を
理想とした人は、全体の12.5%にとどまりました。

つまり、多くの人は「ネガティブなことが一切ない人生」を、
必ずしも望んでいないということです。

人によっては、「ネガティブ感情をたくさん経験するのが理想」
という人(X軸右寄り)もいるのが興味深い。


◯わかったこと2:ネガティブ感情は、減らせば減らすほどよいわけではない

研究2では、ネガティブ感情と人生満足度の関係を調べました。

「自分の理想よりもネガティブ感情が多い人」では、
ネガティブ感情が少ないほど人生満足度が高い傾向がありました。

一方、「すでに理想よりもネガティブ感情が少ない人」では、
さらに減らしても人生満足度が高くなるという
明確な関連は見られなかったのです。

つまり、ネガティブ感情を減らすことには、
ある種の「限界」があるのかもしれません。


◯わかったこと3:人生満足度が最も高いのは「理想と現実が一致している人」

そして、今回の研究で、
もう一つ重要だと感じる発見がこちらです。

ポジティブ感情とネガティブ感情の両方について、
「理想と現実が一致している人たち」が、
最も高い人生満足度を報告していました。

これは、「ポジティブ感情をとにかく最大化すること」よりも、
「自分が望む感情のあり方に近づくこと」が
重要である可能性を示しています。

言い換えれば、幸福の基準は、
単純な感情の量だけでは決まらない、ということなのでしょう。

理想と現実の感情が一致する付近で、
人生満足度が最も高くなる傾向が示された


■研究の限界

ただし、本研究は横断的なデータに基づいているため、
「感情の一致が人生満足度を高める」という因果関係まではわかりません。

また、主に欧米の参加者が中心であり、
日本人にも同じ比率が当てはまるとは限りません。

したがって、「ネガティブ感情を必ず10〜13%にすれば幸福になれる」
という話ではない点には、注意が必要です。


■まとめと感想

さて、今回の論文を読んでの感想は、
「ネガティブ感情というものも、人生においてある程度必要なのだろうな」
ということです。

まさに、論文のタイトルが
「Positively Negative(ポジティブなネガティブ)」となっているように、
「ネガティブ感情を単なる悪者として扱わない」ところが、
面白いと感じました。

例えば、「自己成長」を考えたときに、
「多少のネガティブ感情」があったとしても、
それを自分の挑戦や成長に必要な動力源のように
できる場合もあるとも感じます。

また、

「人々が望む理想の感情比率が、
 ポジティブ66〜80%、ネガティブ10〜13%」
 
という結果は、かつてゴットマン博士が結婚生活における
ポジティブとネガティブの相互作用として述べた「5対1」とも、
遠からず近しい感じがします
(もちろん、測定しているものは異なりますが)。

こうした目安があることも興味深いですし、
それ以上に「自分の望ましい理想の感情体験」と
「現実の感情体験」が近づくことが、
人生満足度の高さと関連するというところにも、納得感がありました。

ポジティブ感情もネガティブ感情も、
どちらも自分の人生を構成する大切な要素である。
そんなことを改めて考えさせられる研究でした。

ちなみに、こうした研究方法もあるんだなあ、
という幅も感じて、面白いなと感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:195m

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