配信日時 2026/10/18 06:55

今週の一冊『時空を旅する遺伝子』【カレッジサプリ】

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令和8年10月18日(第4620号)


今週の一冊『時空を旅する遺伝子』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話:2582字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、はじめての
「5000mタイムトライアル」のレースに参加してきました。

結果は、18分52秒(1kmあたり3分46秒)とのことで、
今年の目標であるフルマラソンのサブ(3時間切り)のスピードの目安は、
一旦クリアできたので、自信となる材料が増えました。

それにしても、めちゃくちゃきつかった…。
自分もですが、みんな、よく好き好んでやるよな、と思います。

*

さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

タイトルからもわかるように、本書は「遺伝子」や「DNA」にまつわる、
生物学のお話です。

免疫システム、ミトコンドリア、意図的な細胞死、
遺伝子の突然変異などなど、
一見、私たちの日常に関係なさそうなのですが、
我々のビジネスシーンや、生きるという哲学にも紐づけて、
ユーモラスに語られている本で、楽しく読ませていただきました。

ということで、中身を紹介していきたいと思います。
それでは、どうぞ!

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『時空を旅する遺伝子 ~最新分子生物学の不思議ワールド』

西田 徹 (著)  / 日経BP社
https://www.amazon.co.jp/dp/4822282368?tag=se&linkCode=ogi&th=1&psc=1&language=ja_JP
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■免疫システムは「帰納法」で自分を守っている?

まず興味深かったのが、「免疫システム」の話です。
免疫とは、ご存じのとおり、
ウイルスや細菌などの異物から私たちの身体を守る仕組みです。

攻撃しないのは「自己」、攻撃するのは「非自己」です。
がん細胞のように、もともと「自分の細胞」でありながら
異常をきたした細胞もあります。

(免疫がそれを攻撃することもありますが、
免疫の監視をすり抜けて増殖してしまうこともある)

じゃあ、免疫システムは、どうやって「自己と非自己」を
見分けているのかというと、
「帰納法」的に見極めているとたとえています。

(ちなみに念のため、「帰納法」とは、
さまざまな個別の事例から、共通する規則性や法則を見いだす考え方です)

「免疫システム」は、非常に多様な対象を識別しながら、
何を守り、何に反応するかを、生まれてから今に至るまで、
調整をし続けています。

その仕組みは、遺伝子に組み込まれている切れ味のよい一般論から
結論を見出す「演繹法」というよりも、「帰納法」である…と。

つまり、風邪を引く、病気になる、ウイルスへの感染諸々の、
膨大な事例から一般化を行う帰納法になぞらえているわけです
(あくまでたとえとして紹介されていました)。


■ミトコンドリアとの共存は、遺伝子の「M&A」である

もう一つ、おもしろかったのが「ミトコンドリア」の話です。
ミトコンドリアは、私たちの細胞の中に存在し、
エネルギー産生に重要な役割を果たす細胞小器官です。

このミトコンドリアは、もともと別の生物だったものが、
太古の昔に別の細胞の中に取り込まれ、
共生するようになったと考えられています。

これを、我々のビジネスシーンで例えると、
企業の「M&A」になぞらえています。

これはハードだけでなく、ソフトもそうです。
西洋で開発された、ビジネスのノウハウが、
いつの間にか企業の中に所与のものとして組み込まれていく。

そうして取り込まれていく様子は、
まるで「ミトコンドリア」のようだ…という著者の着想が、
なんとなく分かる気がして、興味深かったです。

抽象度は違えど、似た現象は、色んなところで起こっていますね。


■「性」という、混沌とした仕組み

そして、もう一つ印象に残ったのが、「性」に関する話です。
生物の繁殖という観点から考えると、
有性生殖には、なかなか非効率なところがあります。

基本的に、単性生殖のほうが、安定しているし、ミスも少ない。

有性生殖は、相手を探さなければならないし、
時間もエネルギーもかかる。
単純に自分のコピーを増やすだけなら、
無性生殖のほうが効率的に見えることもあります。

では、なぜ有性生殖という仕組みが存在するのか。

その重要な意味の一つが、
「遺伝的な多様性を生み出すこと」であると述べます。

異なる遺伝情報が組み合わされることで、
さまざまな特徴を持つ個体が生まれる。
そこに、「混沌(カオス)と可能性が、同時に生み出される」と述べます。

一見、無駄に見えるものが、長い時間軸で考えると、
重要な意味につながることがある。

生命だけでなく、組織にも通じるものがあるように思います。


■我々は「意図的に」生命を閉じていく?!

また、「生命の回数券」ヘイフリック限界という話も面白かったです。

正常な体細胞には「ヘイフリック限界」と言われる、
「分裂回数の制限」が設けられていると言います。

それは「命の回数券」のようなもので、
最初には100あったのが、1回分裂すると20消費される。

具体的には、人間の胎児の線維芽細胞を取り出して培養すると、
約50回分裂してそこで分裂が止まるそうです。

そしてそれがなくなった際に、もう分裂できなくなる
(そしてそれが寿命と関連している)という話が紹介されていました。

興味深いのは、この現象は、染色体の繰り返し配列が、
分裂のたびに減ることが原因とわかってきている中で、
実は「その減ったテロメアを再延長する遺伝子がDNA内にはあるけれど、
意図的に封印されてる」という話です。

ある意味、持っている能力を封印し、
個体が、自動的に生命を閉じていく仕組みが組み込まれているのは、
「私たちの多様性を重要視するためにそうなっている」
とも考えられるそうです。

(ちなみに、正常ではない体細胞の1950年代のあるがん細胞は、
今なお世界の研究室で増殖を続けている、という事例がありました)


■まとめと感想

我々は、「自分という個体」という枠組みの中で、
体験し、感じ、生きて、そして死んでいきます。

私たちの中にある遺伝子は、親から子へ、さらにその先へと受け継がれ、
気の遠くなるような長い時間を旅してきたものであり、
その中で、たまたま我々が誕生したに過ぎない。

大きく考えてみれば、「自分」という存在は、
遺伝子が次の世代へと受け継がれていく、
壮大な物語の、一つの単語のごく一部の”線”でしかないのかもしれません。

個体よりも、大きな人間という全体の未来のために、
私たちの遺伝子にはいろいろなルールが組み込まれています。

そうした視点に立とうとすることは、
ある観点でいえば「無我の境地(自分より大きなものを考える)」
という点にも通ずることがあるのではないか、
そのように本書では述べています。

ただし、その中で、貴重かつ代替が利かないものは、
それぞれの固有の体験である。

それは「我思う、ゆえに我あり」というデカルトの語るような
哲学的姿勢なのではないか、そのように本書が締められており、
遺伝子という旅の中での、「生きる意味」に、
想いを馳せてみた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:186m

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