配信日時 2026/10/15 18:14

本当に効果的な勉強法とは? ―10種類の学習法を比較した研究からわかったこと―【カレッジサプリ】

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令和8年10月16日(第4617号)


本当に効果的な勉強法とは?
―10種類の学習法を比較した研究からわかったこと―


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話:4049字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、朝から12kmのランニング。
その他、2件のアポイントと執筆でした。

夜は、ランナー仲間であり、
同じ「サブ3」を目指す大学院の同窓生と
情報交換ミーティングでした。

一見マニアックな、でもとても大切な
ランニングの練習法や工夫を教えてもらって、大変勉強になりました。
(Sさん、ありがとうございました!)

*

さて、急にですが、最近は本当に便利になりましたね…。

自分が知らない領域でも、生成AIに
「このテーマの代表的な論文を教えて」と聞けば、
あっという間に候補が出てきます。

もちろん、内容の確認は必要ですが、
「学びの入口」がこれほど身近になったことには驚かされます。

▽▽▽

そんな中でご紹介したいのが「学び方」についての超有名な論文です。
2013年に発表された、「さまざまな学習方法の有効性を比較した有名なレビュー論文」でございます。

これまでにも「経験学習」や「観察学習」など、
自分の経験を振り返ったり、他者を観察したりする学び方についてご紹介してきました。

一方、「学ぶ」とキーワードで思い出されるのは、
自分で目標を立て、計画を考え、学習を進めていく
「自己調整学習」ではないかと思います。
いわゆる学生時代のテスト勉強なども、その一つかと。

たとえば、教科書にアンダーラインを引く、
自分で要約してノートにまとめる、何度もテキストを読み返す。
こうした勉強方法は、誰もが一度は試したことがあると思います。

……では、これらの方法は、本当に効果的なのでしょうか?

今回の論文では、10種類の代表的な学習方法について、
その有効性を検討しています。

結論からいうと、特に評価が高かったのは
「テスト練習」と「分散学習」でした。
一方、馴染みのある「ハイライト」や「再読」は、
意外にも低い評価となっていました。

ということで、早速中身を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!

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<本日の論文>
・タイトル:Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology
(効果的な学習技術による学生の学習改善:認知心理学および教育心理学からの有望な方向性)
・掲載誌:Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58
・出版年:2013年
・著者:John Dunlosky、Katherine A. Rawson、Elizabeth J. Marsh、Mitchell J. Nathan、Daniel T. Willingham
・所属:ケント州立大学、デューク大学、ウィスコンシン大学マディソン校、バージニア大学
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■30秒でわかる本論文のポイント

・代表的な10種類の学習方法について、先行研究を幅広くレビューし、
有用性を「高・中・低」の3段階で評価した。

・最も有用性が高かったのは「テスト練習」と「分散学習」の2つだった。

・「なぜ?」を考える精緻化質問や、自分の言葉で説明する自己説明などは、
中程度の有用性と評価された。

・一方、ハイライト、下線引き、再読、要約などは、
総合的に低い有用性と評価された。

・ただし、低評価の方法がすべて無意味ということではなく、
学習する内容や使い方によって効果が異なる点には注意が必要である。


■研究の背景と目的

さて、そもそも、なぜこのような研究が行われたのでしょうか。

背景には「効果的な学習方法が研究で明らかになっているにもかかわらず、
教育現場や学習者に十分に知られていない」という問題意識がありました。

心理学では、100年以上にわたって学習方法の研究が行われてきました。
しかし、学校では「何を学ぶか」は教えられても、
「どう学べば効果的なのか」は、意外と体系的に教えられていません。

そこで研究者らは、誰でも比較的簡単に実践できる10種類の学習方法を取り上げ、
「どの方法が、どのような条件で有効なのか」を整理することにしたのでした。


■研究の方法

本論文では、認知心理学・教育心理学における多数の先行研究をレビューし、
10種類の学習技術を比較しました。

評価にあたっては、学習者の年齢や能力、教材の種類、学習条件、
記憶や問題解決などの評価課題において、
どれだけ幅広く効果が認められるかを検討しています。

そのうえで、有用性を「高・中・低」の3段階に分類しました。

さて、気になる結果はどうだったのでしょうか。


■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:最も有用性が高かったのは「テスト練習」と「分散学習」

10種類のうち、最高評価となったのは、次の2つでした。

・【テスト練習】:問題を解いたり、自分で思い出したりして、
記憶から情報を取り出す

・【分散学習】:一度にまとめて学ぶのではなく、
時間を空けて繰り返し学ぶ

まず「テスト練習」は、これは、単にテストで点数を測るのではなく、
「テストをすること自体が学習になる」という考え方です。

たとえば、本を読んだあと、すぐに読み返すのではなく、
本を閉じて「何が書いてあったっけ?」と思い出してみる。
あるいは、問題集を使って、学んだ内容を自力で答えてみるという、
「思い出す行為」が、記憶の定着を促します。

次に「分散学習」です。
たとえば、試験前日に5時間まとめて勉強するよりも、
1時間ずつ日を分けて学ぶほうが、長期的な記憶保持には有効だというものです。

こちらも、なんとなく経験的には理解できますが、
幅広い研究で支持されているという点が興味深いところです。


◯わかったこと2:「なぜ?」を考える、自分で説明する方法も有望

続いて、「中程度の有用性」と評価されたのは、以下の3つでした。

・【精緻化質問】:「なぜそうなるのか?」を自分に問いかける

・【自己説明】:学んだ内容や問題の解き方を、自分の言葉で説明する

・【インターリーブ学習】:異なる種類の問題を混ぜて練習する

「自己説明」は、たとえば、何かの概念を学んだあとに、
誰かに教えるつもりで説明してみることですね。

また、「インターリーブ学習」は、あまり聞きませんが、
野球でたとえると「ストレート、カーブ、フォークがランダムに飛んでくる球を打つ」
みたいな、混ぜこぜにする学習方法です。

こうした学習方法にも一定の効果が認められていますが、
2013年時点では、実際の教育現場での検証や効果の汎用性について、
まだ研究が十分ではない部分もあり、「中程度の評価」となりました。


◯わかったこと3:ハイライトや再読は、意外にも「低い評価」

さて、個人的に最も印象的(そしてちょっと悲しかった)だったのが、ここです。
「有用性が低い」と評価されたのは、次の5つでした。

・【要約】:学んだ文章の要点をまとめる

・【ハイライト】:下線引き重要な部分に線を引く

・【キーワード法】:語呂やイメージで記憶する

・【イメージ利用】:文章の内容を頭の中で視覚化する

・【再読】同じ文章を繰り返し読む

どうでしょうか。
特に、「要約」とか「ハイライト」、皆さま、やっていませんでしたか?

学生時代、重要なところに蛍光ペンを引いたり、
ノートにきれいにまとめたりすることは、
むしろ「勉強を頑張っている」行為の象徴だったように感じます。

しかし、これらの方法は、使い方によって効果があっても、
幅広い条件で一貫した学習成果を示すという点では、
「評価が低い」となりました。

もちろん、「要約が上手な人には効果がある」という場合もあります。
ハイライトも、文章を整理する補助にはなるでしょう。

ただ「線を引いたから覚えた」「何度も読んだから理解できた」と考えるのは、
少し立ち止まって考える必要があるのかもしれません。


■考察:なぜ、効果が低い学習法を使ってしまうのか?

なぜ、効果が低い学習法を使ってしまうのか?についてですが、
その理由として「学んだつもりになる」という問題があるそうです。

教科書を繰り返し読むと、だんだん文章に馴染んできます。
最初は難しかった内容も、スラスラ読めるようになる。
すると「よし、理解したぞ」と感じます。

しかし、いざ本を閉じて説明しようとすると、
意外と言葉が出てこない。(よくありますね)

文章を見ればわかることと、自分の頭から知識を取り出せることは、
必ずしも同じではありません。

その意味で、学びにおいて大切なのは
「どれだけ時間を使ったか」だけではなく、
「頭の中でどのような処理を行ったか(負荷をかけたのか)」なのだと思います。


■研究の限界

今回の論文は非常に有名な研究ですが、いくつか注意点もあります。

まず、「有用性が低い」という評価は
「まったく効果がない」という意味ではありません。
教材や学習者の特性、使い方によっては役立つ場合があります。

また、中程度と評価された方法についても、
効果が小さいと断定されたのではなく、
当時の研究の蓄積が十分ではなかったという理由が含まれています。


■まとめと感想:「脳に汗をかく」のが大事

改めて今回の論文を読んで、学びというものを、
ステレオタイプ的に「アンダーラインを引く」とか
「自分でノートをまとめる」という方法に頼ってしまうことについて、
もっと自覚的になるべきだな、と感じました。

私自身、こうした再読やハイライトだけではなく、
自分の「脳に汗をかく」ような学習方法こそ、
取り入れていく事が大事なのでしょう。

だからこそ、生成AIにも注意が必要です。
我々は楽をしたいものですが、生成AIは、
認知負荷を下げる方向に私たちを導くこともあります。

ただ、それはもしかすると、学習機会を失ってしまうことにもつながりかねない、
とも感じました。

何か学ぶときは、すぐに答えを聞かずに、
自分の頭で思い出す「テスト練習」をする。
時間間隔を空けて、何度も学んでいく「分散学習」をする。

こうした、ある意味で頭に適切な負荷をかけるアプローチが、
長期的な記憶の定着につながるということに、大変納得した次第です。

私自身、つい効率のよい方法、楽な方法を探しがちですが、
「学んだつもり」で終わらないように、
自分への戒めにしたいと感じさせられる論文でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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【編集後記】
◯今月のランニング:165m

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