配信日時 2026/10/14 07:02

強みを活かす研修に、効果はあるのか? ー組織における21件の強み介入研究からわかったことー【カレッジサプリ】

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令和8年10月15日(第4615号)


強みを活かす研修に、効果はあるのか?
ー組織における21件の強み介入研究からわかったことー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話:3135字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は早朝から13kmのランニング。
また午前中に打ち合わせや研修企画、
午後からは高校のリーダーシップの授業でした。

高校の授業がだいぶ本番に向けて、ボルテージが上っております。
(私だけでないことを祈ります…笑)
学生たちとも何度も顔を合わせて行く中で、
だんだん距離が近くなってきたのも、嬉しいものだなあと思うこの頃です。
引き続き、頑張ります。


*

さて、本日のお話です。
本日は「強みに関するある論文」をご紹介します。

内容は「強みの介入のメタ分析」です。

「組織における強み活用介入の有効性を、
 21件の研究から分析した結果、どんなことがわかったのか」
 
という2023年の比較的新しい論文です。

ということで、どんなことがわかったのか。
早速中身を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!

=======================
<本日の論文>
タイトル:Effectiveness of strengths use interventions in organizations: A pre-registered meta-analysis of controlled trials
(組織における強み活用介入の有効性:対照試行の事前登録メタ分析)
掲載誌:Applied Psychology: An International Review, 72巻4号, pp.1653–1693
出版年:2023年(オンライン公開:2022年)
著者:Delia Vîrgă, Andrei Rusu, Zselyke Pap, Laurențiu Maricuțoiu, Luca Tisu
DOI:https://doi.org/10.1111/apps.12451
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■30秒でわかる本論文のポイント

・組織で働く人を対象にした、
 強み活用介入の対照試行21件をメタ分析した。

・介入直後には、強みの活用、個人の資源、
 職場のウェルビーイングなどに小さな効果が見られた。

・ただし,強みの活用に対する効果は、
 追跡調査では減衰が見られ、統計的に有意ではなくなっていた。

・一方、個人の資源やウェルビーイングには、
 追跡時にも効果が確認されたものがあった。

・介入期間が長いほど、
 追跡時の個人の資源や職場のウェルビーイングへの
 効果が大きい傾向が見られた。

という内容です。



■研究の背景と目的

本研究の背景についてですが、
ポジティブ心理学やポジティブ組織行動学の広がりとともに、
従業員の強みを見つけ、職場で活かすための介入が
注目されてきました。

しかし、これまでの研究には、
対照群を設けずに介入の前後を比べたものもありました。

その場合、「介入による効果なのか、
時間の経過や別の要因による変化なのか」を
切り分けにくいことがあります。

また、「介入直後に見られた効果が、
その後も続くのか」についても、
十分にはわかっていませんでした。

そこで本研究では対照群を設けた研究に絞って、
強み活用介入の効果を、
以下の観点で分析しています。

ーーー
1.介入直後だけでなく、
追跡調査で効果が維持されているか

2.介入期間や参加者の年齢によって
効果に違いがあるか
ーーー


■研究の方法

研究者たちは、従業員を対象に
強みの同定や活用を促した介入研究を収集しました。

そのうち、対照群があり、
成果を数値で評価できるなどの基準を満たした
21件の対照試行を分析対象としています。

成果は、以下のような項目を測定しました。

ーーー
・Behavioral outcome: 強みの活用度(Strengths Use)

・Personal resources: 自我効力感、レジリエンス、
 楽観性、自律性など

・Well-being: ワーク・エンゲージメント、
 仕事満足度、バーンアウト軽減など

・Performance: 主観的・客観的職務パフォーマンス
ーーー

研究ごとの結果を統計的に統合し、
介入直後と追跡調査の効果を
それぞれ算出しています。



■主な結果(わかったこと)


◯わかったこと1:介入直後には「強みを活用する行動」が増えていた(追跡調査では効果量が減衰した)

強みを活用するための行動には、
介入直後に小さな効果が見られました(d=0.37)。

しかし、追跡調査では効果量が小さくなり、
統計的に有意とはいえなくなっていました(d=0.15)。

強みを活用する方法を学んでも、
その後の行動として続けるには、
介入だけでは足りない場合があるのかもしれません。


◯わかったこと2:「個人の資源」には、追跡時にも効果が見られた

自己効力感などの個人の資源については、
介入直後に中程度の効果が見られました(d=0.53)。

追跡調査でも、小さいながら
効果が確認されています(d=0.33)。

強みを活用する行動そのものへの効果は
追跡時に明確ではなくなっていた一方で、
自分の中にある資源には、
効果が残っていたという結果です。


◯わかったこと3:「ウェルビーイング」には、小さな効果が続いていた

職場のウェルビーイングには、
介入直後と追跡調査の両方で、
小さな効果が確認されました
(介入直後 d=0.31、追跡時 d=0.27)。

生活全般のウェルビーイングについても、
介入直後と追跡時のどちらにも、
小さな効果が見られています
(介入直後 d=0.24、追跡時 d=0.18)。


◯わかったこと4:「仕事のパフォーマンス」への効果は小さく、追跡時には明確ではなかった

仕事のパフォーマンスには、
介入直後に小さな効果が見られました(d=0.28)。

一方、追跡調査では統計的に有意な効果は
確認されませんでした(d=0.22)。

強みの介入が、すぐに仕事の成果を大きく高めるとまでは、
この結果からはいえなさそうです。


◯わかったこと5:介入期間や参加者の年齢によって、効果に違いが見られた

介入期間が長い場合、
追跡調査時の個人の資源や職場のウェルビーイングへの効果が、
より大きい傾向がありました。

また、参加者の年齢が若いほど、
介入直後の個人の資源への効果が
大きい傾向も示されました。

ただし、これは研究全体の中で見られた関連です。

「若い人には必ず効果が高い」
「長期間の介入なら必ず効果が続く」と
言い切れるものではありません。



■考察

今回の結果からは、強み活用介入が、
強みを使う行動や個人の資源、
ウェルビーイングに、
一定のよい影響をもたらす可能性がうかがえます。

一方で、効果の大きさは全体として
小から中程度であり、
成果の種類によっても異なっていました。

強みを活用する行動への効果は
追跡時に明確ではなくなる一方、
個人の資源やウェルビーイングでは、
追跡時にも効果が確認されたものがあります。

また、介入期間が長い研究ほど、
追跡時の効果が大きい傾向も示されています。

強みを知る機会を一度設けるだけでなく、
日々の仕事で使う機会や、振り返る機会をつくることが、
効果を保つうえで関係しているのかもしれません。

ただし、メタ分析でわかったのは
研究間に見られた傾向です。

上司の支援や業務の設計など、
どのような環境が強みの活用を後押しするのかについては、
さらに検討が必要です。



■まとめと感想

私もこれまで、ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)やVIA、
また個人的に作成した強みのアセスメントなどを使って、
さまざまな強みの介入を行ってきました。

その後、ウェルビーイングなどの指標を見てきた経験もあります。

今回の研究結果を読んで、
強みの介入がウェルビーイングや個人の資源、
つまり自己効力感や楽観性などを高めるという傾向は、
私自身が見てきたものとも重なるように感じました。

一方で、介入終了後の追跡調査では、
強みを活用する行動への効果が小さくなり、
統計的に有意とはいえなくなっていました。

強みには、前向きな気持ちや
「やってみよう」という意欲を引き出す力がありますが、
それを継続して使っていくには、
やはり、やりっぱなしでは難しいところがあるようですね
(当然と言えば当然ですが)

日常の仕事に落とし込むために、
マネジメントや職場の仕組みにどう組み込めばよいのか。

より効果的な介入方法についても、
実に探求しがいのあるテーマだな、と思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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【編集後記】
◯今月のランニング:135m

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