配信日時 2026/10/01 10:09

「仲間との関係性」は、学習への意欲やウェルビーイングとどうつながっているのか? ーフィンランドの高校生への研究ー【カレッジサプリ】

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令和8年10月1日(第4601号)


「仲間との関係性」は、学習への意欲やウェルビーイングとどうつながっているのか?
 ーフィンランドの高校生への研究ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 4356字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は1件のアポイント。
また研修の企画とランニング12kmでした。

遅めの夏休みを終えて、リフレッシュでき、
またランニングシーズンに入ってきたので、
自己ベスト目指して、追い込んで行きたいと思います。

*

さて、本日のお話です。

本日は「学習」にまつわる、ある論文をご紹介したいと思います。
テーマは、「仲間との関係性と学習のつながり」についてです。

勉強というと、「一人で机に向かって頑張るもの」というイメージもあります。
一方で、学びの場には「仲間」の存在もあります。

では、こうした「仲間との関係性」は、
学習への意欲やウェルビーイングと、
どのように関わっているのでしょうか?

ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!


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<本日の論文>
タイトル:Peer relationships and study wellbeing: upper secondary students' experiences(仲間関係と学習ウェルビーイング:後期中等教育(高校)生の経験)
掲載誌:Social Psychology of Education, Volume 27, Issue 6, pp.3097–3117
出版年:2024年
著者:Lotta Tikkanen, Henrika Anttila, Sanna Ulmanen, Kirsi Pyhältö
所属:ヘルシンキ大学 大学教育・学習センター(フィンランド)・タンペレ大学 教育文化学部(フィンランド)・ステレンボッシュ大学 高等・成人教育センター(南アフリカ)
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■30秒でわかる本論文のポイント

・本研究では、フィンランドの高校生280名を対象に、
 「仲間との関係」と「学習ウェルビーイング」の関連を調べました。

・仲間との関係を「学習サポート」「つながり感」
 「認知的共感」「感情的共感」という4つの観点から捉えたところ、
 生徒は大きく3つのタイプに分類されました。

・その結果、4つすべてが高い「機能的プロファイル」の生徒は、
 学習エンゲージメントが最も高いことがわかりました。

・一方、仲間との関係性が全般的に低い「孤立プロファイル」に加えて、
 「相手の考えは理解できるし、勉強も助け合える。
 しかし、感情的なつながりが弱い」という生徒も、
 学習エンゲージメントが低く、
 冷笑や不適応感が高い傾向が示されました。

つまり、「勉強を助け合えるか」だけではなく、
「仲間と感情的につながっていると感じられるか」も、
学習ウェルビーイングを考える上で重要かもしれない、
というお話です。


■研究の背景と目的

近年、生徒の「学習ウェルビーイング」の低下が課題となっています。

論文では、フィンランドの高校生のおよそ21%が
バーンアウトを経験しているという先行研究も紹介されています。

また、COVID-19による休校などを通じて、
生徒同士の人間関係が希薄化したことも、
この問題に影響した可能性があります。

そこで注目されるのが、「仲間との関係」です。

仲間との良好な関係は、学習バーンアウトを防ぎ、
学習へのエンゲージメントを高める「資源」になり得ると考えられています。

ただし、一口に「仲間との関係」といっても、
いくつかの側面があります。

・勉強を助け合えること。

・自分が仲間から受け入れられていると感じること。

・相手が何を考えているのか理解できること。

・そして、相手の感情に共鳴できること。

これまでの研究では、こうした要素を個別に扱うものが多く、
「一人の生徒の中で、これらがどのように組み合わさっているのか」は、
十分に検討されてきませんでした。

そこで本研究では、「仲間からのサポート」「つながり感」
「認知的共感」「感情的共感」という4つの要素から、
生徒の仲間関係のパターンを明らかにし、
それぞれが学習エンゲージメントやバーンアウトと
どのように関連しているのかを検討しました。


■研究の方法

研究対象となったのは、フィンランドの後期中等教育、
いわゆる高校に通う生徒280名です。

生徒たちに自己報告式の質問紙へ回答してもらい、
「仲間との関係」と「学習ウェルビーイング」を測定しました。

ーーー
◯測定尺度(1):仲間関係の構成要素

・学習サポート(SUP): 仲間同士で勉強を助け合い・与えられる度合い。

・つながり感(REL): 仲間から承認され、尊重され、
 つながっていると感じる度合い。

・認知的共感(CE): 仲間が何を考え、感じているかを
 頭で理解・認識する能力。

・感情的共感(AE): 仲間の感情状態に感情的に共鳴し、
 共感・チューニングする能力。
ーーー

◯測定尺度(2):「学習ウェルビーイング」

・学習エンゲージメント:活力、熱意、没頭

・学習バーンアウト症状:疲弊、冷笑(シニシズム)、不適応感
ーーー


■主な結果(わかったこと)

仲間関係の構成要素を調べて、
プロファイルとして以下の3つのグループにわけました。

ーーー
<3つの仲間関係プロファイルの抽出>

1.機能的プロファイル(Functional profile / 大多数):
仲間サポート、つながり感、認知的共感、感情的共感の
全項目において高い値を示すグループ。

2.孤立プロファイル(Isolated profile / 少数派):
4つの構成要素すべてにおいて低い値を示すグループ。

3.感情的に無関係プロファイル(Emotionally unrelated profile / 少数派):
学習サポートや認知的共感は高いレベルにあるものの、
感情的共感とつながり感が顕著に低いグループ。
ーーー

この3つのプロファイルと、学習ウェルビーイングとの関連を調べたところ、
興味深い違いがみられました。


◯わかったこと1:良好な仲間関係を持つ生徒ほど、学習エンゲージメントが高かった

「機能的プロファイル」の生徒は、
「孤立プロファイル」「感情的に無関係プロファイル」と比較して、
学習エンゲージメントが高いことがわかりました。

つまり、勉強を助け合うだけではなく、仲間とのつながりを感じ、
お互いの考えや感情を理解し合える生徒ほど、
学習に対して活力や熱意を持ち、
没頭しやすい傾向があったということです。


◯わかったこと2:「感情的につながっていない」生徒も、バーンアウトのリスクが高かった

興味深いと感じたのが、
「感情的に無関係プロファイル」の存在です。

このグループは、仲間からの学習サポートや認知的共感は高い。
つまり、「勉強を助け合うこと」はできるし、
「相手が何を考えているのか」も理解できてます。

しかし、「感情的共感」と「つながり感」が低い。

このグループでは、「機能的プロファイル」と比べて、
学習への冷笑(シニシズム)や不適応感が高い傾向がみられました。

これは、表面的にはうまく協力できていたとしても、
「自分は仲間とつながっている」
「自分はここで受け入れられている」という感覚がなければ、
学習ウェルビーイングは必ずしも高くならない可能性を示しています。


◯わかったこと3:「疲弊」については、仲間関係による違いがみられなかった

ちなみに、「疲弊(Exhaustion)」については、
3つのプロファイルの間で統計的に有意な差はみられませんでした。

研究者らは、「冷笑」や「不適応感」は
学校での人間関係や社会的な経験と関連しやすい一方で、
「疲弊」は勉強量や課題の負荷など、
より全般的な学習負荷に影響される可能性を指摘しています。


■考察

この研究から見えてくるのは、
「仲間との関係が大事」と一言でいっても、
その中身はもう少し細かく見ていく必要がある、ということです。

特に面白いのが、
「認知的共感」と「感情的共感」の違いです。

「あの人はいま、こういうことを考えているんだろうな」と
頭で理解することと、
「そう感じるのもわかるな」と感情的に共鳴することは、
似ているようで違う、ということ。

そして本研究では、前者があったとしても、
後者や「つながり感」が低い生徒たちは、
学習エンゲージメントが低く、
バーンアウトの一部の症状が高い傾向がありました。

だとすると、学校において必要なのは、
単に「グループワークを増やす」「勉強を教え合う」といった機会だけではなく、
お互いの価値観や考え方、あるいは「なぜそう感じるのか」を語り合う、
そうした、もう一歩深い交流の機会も大切なのかもしれません。


■この研究の限界

もちろん、この研究にもいくつかの限界があります。

まず、本研究は1時点で測定した「横断研究」です。
そのため、「良好な仲間関係が学習エンゲージメントを高めた」と
因果関係を断定することはできません。

逆に、もともと学習へのエンゲージメントが高い生徒だからこそ、
周囲と良好な関係を築きやすかった可能性もあります。

また、対象者はフィンランドの高校生280名であり、
性別や学年、学習トラックなどによる違いを
十分に検討できていません。

したがって、今回の結果をそのまま日本の高校生などに
一般化することには慎重になる必要がありそうです。


■まとめと感想

今回の研究で個人的に面白かったのが、
「仲間との関係が良い」ということを、
「学習サポート」「つながり感」「認知的共感」「感情的共感」
という4つの要素に分けて捉えていたところです。

「仲間関係」を、こうした観点から見ることができるんだな、
と非常に興味深く感じます。

そして、その中でも特に、
「認知的共感」と「感情的共感」を分けて捉えていること。
そして、「感情的に無関係プロファイル」という
グループが見出されたことでした。

相手が何を考えているのかは、頭では理解できている。
勉強で助け合ってもいる。

でも、実は、感情的には共感できていなかったり、
「仲間から承認され、尊重されている」と感じられていなかったりする。

そうすると、学習に対する冷笑や不適応感が
高くなりやすい傾向があるというのは、
なかなか興味深い結果だなと思いました。

そういう意味で、お互いが「何を考えているのか」を
表面的に理解するだけではなく、承認し合う機会を設けたり、
「なぜ自分はそう感じるのか」という、
もう少し深い部分について語り合える機会を設けることも、
大事なのだろうなと思います。

現在、私自身も高校のリーダーシップの授業を担当させていただく中で
そうした時間を設けていますが、こうしたものも、
間接的に学習ウェルビーイングに役立っているのかなと思えて、
嬉しく感じる研究でもありました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n389b9f697490?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:308km

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