配信日時 2026/09/28 19:44

手書き VS キーボードはどちらが優れている? ー学習効果の比較実験からの発見(2014)ー【カレッジサプリ】

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令和8年9月28日(第4598号)


手書き VS キーボードはどちらが優れている?
 ー学習効果の比較実験からの発見(2014)ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3493字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

皆さまは、「紙やメモ」を、どれくらい使っていますでしょうか?

今は、タブレットやスマホ、PCなどのデジタルデバイスが
かなり使いやすくなりました。

わざわざ、紙&ペンで書かなくても、
タイピングしてNotionなどのクラウドにまとめて保存したほうが、
後々検索しやすかったり、AIに読み込ませて整理したりできる。

効率という意味では、
デジタルのほうが便利な場面も多いいのではないでしょうか?

しかしながら、「紙を使ったほうが良い場面もある」と
感じる人もいるのではないかと。

私も実際そうなのですが、何かの勉強会などに参加したときは、
タイピングで文字をまとめるよりも、
紙&3色ペンで絵や図を書いたりしたほうが、
その学びの瞬間に自分が何を感じ、何を学び取ったのかが
思い出しやすいな、と感じています。

では、果たして「ペンはキーボードよりも強い」のか?

このことについて、手書きノートとラップトップ(PC)による
ノート作成を比較した、2014年の有名な研究を紹介します。

ということで、早速中身を見てまいりましょう。それでは、どうぞ!


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<本日の論文>
タイトル:The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking
(ペンはキーボードよりも強し:手書きノート作成のラップトップに対する優位性)
掲載誌:Psychological Science, 2014年, Vol.25, No.6, pp.1159–1168
著者:Pam A. Mueller, Daniel M. Oppenheimer
所属:Princeton Universityほか

※2018年に一部の数値計算について訂正記事が出ていますが、
研究の定性的な結論には変更はありません。
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■30秒でわかる本論文のポイント

・本研究では、大学生を対象に3つの実験を行い、
 手書きとPCでノートをとった場合の学習成果を比較しました。

・結果、PCでノートをとった学生は、
 手書きの学生よりも多くの情報を書き残していました。

・一方で、PCでは講義内容をそのまま「丸写し」する傾向が強く、
 概念を理解したり応用したりする問題では、
 手書き群のほうが高い成績を示しました。

ポイントは単純に「紙がすごい」ということではなく、
「ノートをとるときに、自分の頭で要約し、整理し、
自分の言葉に変換することが、学習に重要である」
ということのようです。



■研究の背景と目的

ノートをとることには、大きく2つの意味があると考えられてきました。

(1)ノートを書く行為そのものによって、
  情報を理解・記憶する「符号化」の効果。

(2)ノートを後から見返すための「外部記憶」としての効果

です。

これまでの研究でも、講義内容をそのまま書き写すよりも、
自分なりに要約したり、言い換えたり、構造化したりしたほうが、
理解が深まりやすいことが知られていました。

ここで問題になるのがPCです。

PCは手書きよりも高速で入力できます。
そのため多くの情報を残せる一方で、
話された内容をそのまま入力する「逐語的な転写」が
起こりやすいのではないか。

そこで本研究では、インターネットなどの気が散る要素を排除した上で、
「手書き」と「PC」というノートの媒体そのものが、
理解や記憶にどのような違いを生むのか、を検証しました。



■研究の方法

研究では、大学生を対象に3つの実験が行われました。

実験1では、プリンストン大学の学生65名がTED Talkを視聴し、
紙とペン、またはPCを使って自由にノートをとりました。

その後、事実を覚えているかを問う問題と、
内容を理解・応用できるかを問う問題に回答しました。

実験2ではUCLAの学生151名を対象に、

ーーー
・手書き群

・PC群

・「丸写しせず、自分の言葉で書いてください」と指示されたPC群
ーーー

の3群を比較しました。

実験3ではUCLAの学生109名を対象に、
講義から1週間後にテストを実施。

「自分のノートを10分間復習できる群」と
「復習しない群」に分けて、長期的な記憶も調べました。

また、それぞれのノートについて、
講義内容とどれくらい同じ言葉が並んでいるのかを分析し、
「丸写しの程度」も測定しました。



■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:概念理解では、手書きのほうが成績が高かった

まず興味深かったのが、
単純な事実を覚えているかどうかについては、
手書き群とPC群で大きな差がなかったことです。

一方、「なぜそうなるのか」
「この考え方を別の場面にどう応用できるか」といった
概念理解を問う問題では、手書き群のほうが高い成績を示しました。

つまり、PCで記録したからといって何も覚えられないわけではありません
違いが表れたのは、より深く考える必要がある問題でした。


◯わかったこと2:PCは「たくさん書ける」が「丸写し」になりやすい

PC群は、手書き群よりも圧倒的に多くの単語を書き残していました。
そして、ノートの量が多いこと自体は、
テスト成績にプラスに働いていました。

しかし、その一方でPC群では、
講義で話された言葉をそのまま入力する
「逐語的な重複」が大幅に増えていました。

つまり、「量が増えるメリット」と
「考えずに丸写しするデメリット」が
同時に存在していたということです。

そして概念理解においては、
後者の悪影響のほうが大きかったと考えられます。


◯わかったこと3:「丸写ししないで」と言っても、あまり変わらなかった

実験2では、PCを使う学生に対して、
「講義内容をそのまま書き写さず、
自分の言葉でまとめてください」と事前に伝えました。

ところが、結果として丸写しの割合は、
普通にPCを使ったグループとほとんど変わりませんでした。

タイピングが速いからこそ、
ついつい「聞いたものをそのまま記録する」という
行動になってしまうのかもしれません。


◯わかったこと4:1週間後に復習したときも、手書きが有利だった

個人的に最も興味深く、示唆的な内容が実験3です。

1週間後に、自分が作ったノートを10分間復習してから
テストを受けた場合、手書き群はPC群よりも、
事実問題・概念問題の両方を含む総合成績が高くなりました。

たくさん書かれたPCのノートよりも、
自分で選び、整理しながら作った手書きノートのほうが、
復習するときにも有効だった可能性があります。



■考察

この研究を読んでいて、キーワードになると感じたのが、
「自分の言葉に変換する」ということです。

手書きは、タイピングほど速く書けません。
ゆえに、話されたことを全部書こうとしても、追いつきません。

その結果、「これは何が大事なのだろう」
「一言でまとめると何だろう」
「これはさっきの話とどうつながるのだろう」と
考えざるを得なくなります。

ある意味では、この「遅くならざるを得ない状況」が、
学びにおいては良いのかもしれません。

効率が悪いからこそ、頭を使います。
それが学習を促すということです。



■この研究の限界

もちろん、この研究だけで
「勉強では絶対にPCを使ってはいけない」とまでは言えません。

研究で使われた講義は7~15分程度の動画が中心であり、
実際の大学講義のような90分授業とは条件が異なります。

また、現在ではタブレット+ペン、AIによる整理、
デジタルでの図解など、
2014年当時には一般的でなかった方法も増えています。

PCを使いながら、自分の言葉でまとめたり、
図解したりする場合には、
違った結果になる可能性もあると思われます。



■まとめと感想

本研究で示唆された「話された言葉を丸写しする」という
機械的な転写が、符号化、つまり記憶や理解のプロセスを
損なうという点は、個人的にも納得度の高いものでした。

「自分の言葉で要約する」
「自分の中で、具体的な学びを概念としてまとめなおす」
このプロセスが、こと「学習」という観点では重要なのだな……と、
当たり前のようですが、改めて発見になりました。

現在では、AIによって、
バラバラの自分の思考をただ垂れ流すように入力しても、
勝手に「概念化」してくれるようになりました。

ただ、当たり前ですが「学習する」ということは、
そのプロセスで「脳に汗をかく」ことによって
学びが深まるわけです。

だからこそ、「この時間は、記録ではなく学習する時間だ」と
意図する場面では、あえて紙とペンを用意してみる。

そして、その瞬間瞬間で学びの内容を要約したり、
概念化したり、絵や図にしてみたりする。
そうした時間を楽しむことも、重要なのではないかと思いました。

その上で、自分なりにまとめた内容に誤りがないかを
AIにチェックしてもらう。

そんな役割分担が、バランスとして
ちょうどよいのかもしれません。

学習においては、効率や時短だけがすべてではない。
そんなことを考えさせられる論文でした。

(といいつつ、実はこの後に発表される、
同じ実験をケント州立大学らの研究者が行った
「直接追試」の論文では、この結果は実は否定される内容となっていま。
こちらはまた明日ご紹介いたします)

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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https://note.com/courage_sapuri/n/nb65344acf8f6?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:296km

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