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令和8年9月24日(第4594号)
「あの話、面白かったよね」で二人の関係が深まる?!
ー「共有された笑い」を振り返る効果ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3601字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
「笑い」が、私たちの健康や人間関係に
さまざまな影響をもたらすことは、
これまでの研究でも知られています。
では、こんな行為はどうなのでしょうか?
ーーーー
二人で「あの話、面白かったよね〜」と、
昔一緒に笑った出来事を思い出して、もう一度笑い合うこと。
ーーーーー
いわゆる、日常的な光景ですが、
実は、この行為が二人の関係にどのような影響を与えるのかを
調べた研究があります。
ちなみに、「関係を深める」というテーマでは、
これまでも、「マンネリを防ぐには、二人で『初めて』に挑戦する?」
という研究などを紹介しました。
[
https://note.com/embed/notes/n06c0ccf9218b?theme=auto
つまり、「二人で何を体験するか」は、
関係性を考えるうえで意外と大切だよ、という話でした。
そして今回の研究が注目したのは、
「共有された笑い」
です。
結論からお伝えすると、
二人で「一緒に笑った出来事」を振り返ったカップルは、
一人で笑った出来事や、
単にポジティブな出来事を思い出したカップルよりも、
その後の関係満足度が高くなっていました。
ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<本日の論文>
・タイトル:The Effect of Reminiscing about Laughter on Relationship Satisfaction(笑いの回想が関係満足度に与える影響)
・著者:Doris G. Bazzini, Elizabeth R. Stack, Penny D. Martincin, Carmen P. Davis
・掲載誌:Motivation and Emotion, 31, 25–34、2007年
・所属機関:Appalachian State University, Department of Psychology
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■30秒でわかる本論文のポイント
・恋愛関係にある52組のカップルを、
4つの条件にランダムに振り分けた
・「二人で一緒に笑った出来事」を振り返ったカップルは、
その後の関係満足度が最も高かった
・単に「二人で楽しかった出来事」を思い出すだけでは、
同じ効果は見られなかった
・また、その効果は単に「気分が良くなったから」だけでは
説明できなかった
つまり、
「一緒に楽しかったこと」ではなく、
「一緒に笑ったこと」を思い出すことに、
何か特別な力があるのかもしれない
というのがこの研究のポイントです。
■研究の背景と目的
これまで「ポジティブな出来事を振り返ること」自体には、
私たちの感情によい影響を与えることが知られてきました。
一方、「笑い」もまた、
人と人とのつながりに深く関係しています。
誰かと一緒に笑うとき、
そこには「同じものを面白いと思っている」という、
一種の共通理解があります。
たとえば、
「これ、面白いよね~」「わかるわかる~」みたいなやり取りは、
言葉以上に「私たちは同じ世界を見ている」という感覚を
生み出しているであろう、ということ。
実際、後年の研究でも、
恋愛関係にあるカップルが同時に笑う
「共有された笑い」が多いほど、
親密さやソーシャルサポート、
関係の質などと関連することが報告されています。
そこで研究者たちは、
「二人で一緒に笑った記憶を振り返ることは、
単に楽しかった出来事を振り返るよりも、
関係満足度を高めるのではないか?」
と考えたのでした。
■研究の方法
研究に参加したのは、
継続的な恋愛関係にある52組の男女のカップルでした。
そして、それぞれのカップルをランダムに、
次の4つの条件に分けました。
ーーー
<グループの割り当て>
1.パートナーと一緒に笑った出来事を振り返る(共有された笑い)
2.パートナー以外の人と笑った出来事を振り返る
3.パートナーと一緒に経験したポジティブな出来事を振り返る
4.パートナー以外の人とのポジティブな出来事を振り返る
ーーー
そして、その出来事について語り合った前後で、
「今の二人の関係にどのくらい満足しているか」を
測定しました。
測定内容は、以下の内容です
ーーー
<測定項目>
・関係満足度(Pre/Post):Johnson & Rusbult (1989) の3項目尺度(相手への魅力、満足度、愛している度合い)を使用。
・気分(Affect)および人生満足度(Life Satisfaction):回想後の一般的な感情状態や人生全般の満足度(1項目)。
・第三者評価・会話コーディング:第三者評定者による回想エピソードのポジティブさ・ユーモア度評価、および録音データからの実際の笑いの回数カウント。
ーーー
研究のポイントは、
「笑い」なのか?、「二人で一緒に経験したこと」なのか?、
それとも単に「ポジティブな思い出」だからなのか?
を比較できるようにしているところです。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:「一緒に笑った記憶」を振り返ると、関係満足度が高まった
もっとも興味深い結果がこちらです。
ーーー
4つの条件を比較すると、
「パートナーと一緒に笑った出来事」を振り返ったカップルは、
他の3つのグループより、
その後の関係満足度が有意に高くなっていた。
ーーー
しかも、
「二人で一緒に経験した楽しい出来事」を振り返ったグループよりも高かった。
つまり、
「昔、旅行に行って楽しかったよね」と振り返ることと、
「あの旅行で、転んで泥だらけになって、めちゃ笑ったよね」と二人で笑った記憶をもう一度味わうことは、
どうやら同じではない、ということです。
◯わかったこと2:ただ「楽しい気分」になったからではなかった
では、一緒に笑った記憶を思い出すことで気分が良くなり、
その結果として「私たちっていい関係だな」と感じただけなのでしょうか。
研究者たちは、この可能性も調べていますが、
しかし、振り返り後の「気分」については、
グループ間で大きな違いはありませんでした。
つまり、「共有された笑い」の効果は、
単純にポジティブな気分になったことだけでは
説明できなかったということです。
■考察
なぜ、「一緒に笑った記憶」を振り返ることが、
二人の関係に影響するのでしょうか。
研究者たちは、
一緒に笑うという出来事には、を論じています。
確かに、長く一緒にいる人との間には、
「外の人には説明しても、たぶん伝わらない笑い」
というものがあります。
「あのときの、あれ(笑)」くらいで
全部わかってしまう、アレです。
(これを「秘密の言語」と論文では呼んでいます)
そうした笑いの記憶には、
「私たちは、同じものを見て、同じように笑ってきた」
という、二人だけの物語を思い出すゆえに、
関係満足度が高まると考えられます。
■この研究の限界
もちろん、この研究だけで
「昔の笑い話をすれば、どんな関係でも良くなる」とまでは言えません。
まず、対象となったのは52組と比較的小規模なサンプルです。
また、大学の心理学授業などを通じて募集された、
異性愛のカップルが対象でした。
世代や文化、結婚年数などによっても
結果は変わる可能性があります。
また、今回測定されたのは、
振り返りを行った直後の関係満足度です。
こうした働きかけが、
数週間、数カ月という長期的な関係性にまで影響するのかは、
この研究だけではわかりません。
その意味でも、
「興味深い最初の一歩」と捉えるのがよさそうです。
■まとめと感想
今回の研究を見て思ったのが、
「共に笑い合うこと」の効果について、
これほどまでに様々な研究があったのだということです。
たとえば、論文の中では、
以下のような話が紹介されています。
・結婚して少なくとも45年になるカップルを対象に、
長続きし、満足度の高い結婚生活に寄与する要因を評価した研究では、
パートナーと頻繁に一緒に笑うことが、
結婚生活の成功理由として挙げられた上位3つの理由の一つだった。
その研究では、約80%が「1日に1回以上、一緒に笑っている」と答えていた。
・FraleyとAronの研究では、
ユーモアの共有が「自己拡張」の媒介効果を通じて、
親近感の認識を高めることが示されていた。
・笑いによる回想は、その独特な性質ゆえに、
パートナー間で「認められている」という感覚を
生み出しやすい可能性がある。
ユーモアは、それを生み出した人たちだけが理解できる、
共通の「秘密の言語」、たとえば「内輪のジョーク」のようなものを作り出すのに役立つ、
とも考えられている。
・こうしたものは
「絆を築くユーモア(Bonding sense of humor)」とも呼ばれ、
その関係に特有のものであり、
客観的にはそれほど面白くないことも多いとされています。
などなど。
こうして並べてみると、
「共に笑い合う」という行為が、
これほどまでに多くの研究者に注目されてきたことが、
個人的にはとても興味深く思いました。
そして同時に、この行為を、
もっと大切にしたいな、と思わされる論文でもありました。
たまには「アレ、面白かったよね~」と思い出し合うこと、
大切にしたいものだ、そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:247km
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