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令和8年9月23日(第4593号)
「自分ならできる」は、学業成績につながるのか?
―59研究 1万4,755名のメタ分析からわかったこと
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3571字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、先日より「自己効力感と学業の関係」についてお伝えしています。
今日も引き続き、このテーマにまつわる論文をご紹介したいと思います。
今回の研究は、大学生を対象とした59件の研究を
系統的にレビューし、そのうち51研究、
合計1万4,755名のデータをメタ分析したものです。
そして本研究では、その感覚と成績との関連だけでなく、
両者の間にどのような学習行動や心理的要因が
存在するのかも整理しています。
ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
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<本日の論文>
タイトル:The Relation of Academic Self-Efficacy to University Student Academic Performance: A Systematic Review(学業的自己効力感と大学生の学業成績との関係:系統的レビュー)
掲載誌:Educational Research Review, Vol.17, pp.63–84
出版年:2016年
著者:Toni Honicke, Jaclyn Broadbent
所属:School of Psychology, Deakin University(ディーキン大学心理学部/オーストラリア)
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■30秒でわかる本論文のポイント
・学業的自己効力感と学業成績には、中程度の正の相関があった(r=.33)
・両者をつなぐ重要な要因として、
「努力を続ける力」「深く考える学習」「先延ばしの抑制」など
が挙げられた
・不安などのネガティブ感情や神経症傾向は、
その好影響を弱める可能性があった
・学業的自己効力感は固定的なものではなく、
経験やフィードバックを通じて変化する
・ただし、横断研究が多いため、
自己効力感が成績を高めるという因果関係までは断定できない
■研究の背景と目的
自己効力感は、心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した概念です。
「ある行動を、自分はうまく実行できそうだ」と感じる信念を意味します。
学業の場面でいえば、
「この科目を理解できそうだ」
「この課題をやり遂げられそうだ」と思える感覚が、
学業的自己効力感にあたります。
これまでの研究でも、
学業的自己効力感とGPAには中程度の関連があることが
示されてきました。
一方で、研究によって結果には大きなばらつきがありました。
また、なぜ自己効力感が成績と結びつくのか、
その間にある仕組みも十分には整理されていませんでした。
そこで本研究では、主に次の3点を明らかにしようとしました。
ーーー
1.学業的自己効力感と学業成績の関連の強さを、
改めて定量的に確かめること。
2.両者をつなぐ媒介要因や、
関係の強さを変える調整要因を整理すること。
3.縦断研究を通じて、
自己効力感と成績の時間的な関係を検討すること。
ーーー
■研究の方法
研究チームは、PsycINFO、ERIC、MEDLINE、Scopus、
Web of Scienceなどのデータベースを用いて、
2003年9月から2015年3月までに発表された研究を検索しました。
対象となったのは、
「大学生を扱い、学業的自己効力感と学業成績の両方を測定した定量的研究」
です。
最終的に59件の研究が系統的レビューの対象となり、
そのうち相関データを利用できた51研究、
合計1万4,755名分のデータがメタ分析に用いられました。
分析にはランダム効果モデルを用い、
GPAや試験得点といった成績指標の違い、
自己効力感尺度の違い、研究デザインなどが、
結果のばらつきに関係するかも検討しました。
また、媒介要因や調整要因については、
研究数が十分ではなかったため、統計的な統合ではなく、
各研究の結果を質的に整理しています。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:学業的自己効力感と成績には、中程度の関連があった
メタ分析の結果、学業的自己効力感と学業成績の間には、
中程度の正の相関が確認されました(r=.33)。
つまり、「自分は学業課題をやり遂げられそうだ」と
感じている学生ほど、成績も高い傾向があったということです。
ただし、これはあくまで「関連」です。
自己効力感が成績を上げたと、
因果関係まで断定できるわけではありません。
良い成績を取った経験によって、
自己効力感が高まった可能性もあります。
おそらく実際には、
両者が互いに影響し合う循環的な関係なのでしょう。
◯わかったこと2:自己効力感は、努力や学習方法を通じて成績とつながる
特に重要な媒介要因として挙げられたのが、
「努力調整」です。
これは、課題が難しかったり、退屈に感じたりしても、
必要な努力を保ち続ける力を意味します。
学業的自己効力感が高い学生は、
「もう少しやってみよう」と粘りやすくなります。
その結果、学習量や取り組みの質が高まり、
成績にもつながっていくと考えられます。
また、情報を丸暗記するだけではなく、
既に知っていることと関連づけて理解する
「深層学習戦略」や、自分の理解度を振り返る
「メタ認知」の活用も、
両者をつなぐ要因として示されました。
さらに、高い自己効力感は、
「学業上の先延ばしを抑える」ことを通じて、
成績と結びつく可能性も報告されていました。
◯わかったこと3:感情や性格によって、影響の強さは変わる
自己効力感が高ければ、
いつでも同じように力を発揮できるわけではありません。
不安、恥、絶望などのネガティブな感情が強い場合、
自己効力感が成績に及ぼす好影響が
弱まる可能性が示されました。
また、神経症傾向が高い学生では、
自己効力感が高くても、
不安や抑うつによってパフォーマンスが下がる傾向が
報告されています。
反対に、感情を理解し調整する「感情的知性」が高い場合や、
十分な学習時間を確保できている場合には、
自己効力感と成績の関係が強まる可能性がありました。
「できそう」という認知だけではなく、
感情を整えることや、
実際に学習時間を確保することも大切なのでしょう。
◯わかったこと4:自己効力感は、測る時期によって予測力が変わる
縦断研究では、学期の最初に測った学業的自己効力感よりも、
中盤から終盤に測った自己効力感のほうが、
成績を強く予測する傾向が示されました。
学期の初めは、まだ授業や課題を十分に経験していません。
そのため、「自分ならできそうだ」という感覚も、
実際の経験に基づいていない可能性があります。
しかし、小テストや課題、教師からのフィードバックを経験
すると、自分の力について、
より現実的な判断ができるようになります。
自己効力感は、
経験を通じて育ち、変化していくものだということです。
◯わかったこと5:成績や尺度の測り方によって、結果にばらつきが生まれる
研究間の結果には、かなり大きなばらつきがありました。
その一部は、GPA、科目成績、試験得点など、
何を「成績」とするかによって説明されました。
また、学業的自己効力感をどの尺度で測るかも、
結果の違いに大きく関係していました。
「自己効力感」とひとくくりにしても、
大学生活全般への自信を尋ねるのか、
特定の科目や課題への自信を尋ねるのかによって、
測っているものは微妙に異なります。
研究や教育実践で自己効力感を扱う際には、
「何に対する自己効力感なのか」を具体的に捉えることが
重要だとわかります。
■まとめと感想
本論文を読みながら、まず思ったのは、
「やっぱり、そうだよな」ということでした。
自分は勉強ができる。
あるいは、難しくてもやり遂げられる。
そんな信念を持っている人ほど、
実際に努力を続けやすくなり、成績も高くなる。
これは、感覚的にも納得できます。
これまで勉強ができたという経験があれば、
「次もできるかもしれない」と思える。
そして、もう少し粘ってみようと思える。
その努力が次の成功体験につながり、
さらに自己効力感が高まっていく。
まるで、雪だるまが転がりながら、
少しずつ大きくなっていくようです。
だからこそ、「最初の小さな成功体験」が
大切なのだと思います。
いきなり大きな成果を求めるのではなく、
ベイビーステップで「できた」を積み重ねる。
そして、その経験を振り返り、
「確かに、自分は前に進めた」と認識することが
大事なのでしょう。
*
また、レビューで取り上げられた研究の中には、
親の関与が自己効力感と学業成績の関係に
影響する可能性を示したものもありました。
この話から、以前に見た「強みに基づいた子育て」の研究を思い出しました。
親が子どもの強みを認めることで、
子どものエンゲージメントが高まり、
それが学業成績につながるという話です。
※参考記事:
「強みに基づいた子育て」は学力に影響を与えるのか?論文の結論はコレだ!
https://note.com/courage_sapuri/n/nfaafabf13989
「自分ならできる」という感覚の大切さ。
そして、それをどう育てるのがよいのか。
そんなことを、改めて考えさせられた論文でございました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n372805e0a1c3?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:247km
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