配信日時 2026/09/23 01:28

「キャリアへの自信」は、どこから生まれるのか? ―大学生1,512名を追跡した研究ー【カレッジサプリ】

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令和8年9月22日(第4592号)


「キャリアへの自信」は、どこから生まれるのか?
 ―大学生1,512名を追跡した研究ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3231字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

さて、先日は、小学生の学習における
「自己効力感」についてご紹介しました。

復習になりますが、自己効力感とは、
簡単にいえば「自分ならできそうだ」と思える感覚のことです。

心理学者のアルバート・バンデューラは、
自己効力感を形づくる主な情報源として、
次の4つを挙げています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<自己効力感を形作る4つの情報源>

・達成経験:自分でやってみて、できた経験

・代理経験:他者ができる姿を見ること

・言語的説得:周囲から「あなたならできる」と言われること

・感情的・生理的状態:不安や緊張、気分、体調などの状態
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、この中でも最も重要だとされているのが、
「自分でやってみて、できた」という「達成経験」です。

では、これは小学生の学習に限った話なのでしょうか。

今回ご紹介するのは、中国の大学生1,500名以上を対象に、
「キャリア決定自己効力感」がどのような経験によって
支えられているのかを、約8ヶ月にわたって調べた研究です。

先日ご紹介した小学生の研究ともつながる、
興味深い結果が見えてきました。

ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<本日の論文>
タイトル:Sources of self-efficacy in career contexts: a longitudinal perspective(キャリア場面における自己効力感の源泉:縦断的観点から)
掲載誌:Current Psychology, Volume 44, Pages 7393–7403
出版年:2025年
著者:Biru Chang, Xiao Zhong, Zhijing He
所属:南京師範大学、山西医科大学
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■30秒でわかる本論文のポイント

・中国の大学生1,512名を対象に、
 キャリアに関する学習経験と自己効力感の関係を、
 約8ヶ月にわたって調べた

・最も強く、一貫して自己効力感と関連していたのは、
 「自分でやってみて、できた」という個人達成体験だった

・周囲からの肯定的な言葉や、
 キャリアを考える際の前向きな感情も、
 時間を超えて自己効力感と関連していた

・一方、他者の姿から学ぶ代理学習には、
 有意な関連が見られなかった

一言でいえば、キャリアへの自信を支えるうえでも、
「自分でできた経験」が最も重要であり、
周囲からの励ましや前向きな感情も、
その自信と継続的に関わっていたという研究です。



■研究の背景と目的

この研究で扱われているのが、
「キャリア決定自己効力感」です。

これは簡単にいえば、

ーーー
キャリア決定自己効力感:
「自分は、必要な情報を集め、選択肢を検討し、
自分なりのキャリアを決めていける」
ーーー

と思える感覚のことです。

キャリア決定自己効力感は、
キャリアについて積極的に探索することや、
意思決定の質、目標設定、ウェルビーイングなどと
関わる重要な要因とされています。

一方、こうした感覚は、
何もないところから突然生まれるわけではありません。

その土台には、これまでに経験してきたこと、
周囲から受け取った言葉、
キャリアについて考えたときの感情などがあります。

これまでの研究は、一時点における相関を調べたものが中心でした。
そのため、それぞれの経験とキャリア決定自己効力感の関係が、
時間を超えて続くのかは十分に明らかになっていませんでした。

そこで本研究では、4ヶ月おきに3回の調査を行い、
主に次の2点を検討しました。

ーーー
1.キャリア学習経験を測る尺度は、
  時間が経っても同じ物差しとして使えるのか

2.どのような経験が、
  キャリア決定自己効力感と強く、継続的に関連するのか
ーーー


■研究の方法

研究では、中国にある同程度の規模の2つの大学で、
1学年にわたる縦断調査を実施しました。

調査は4ヶ月間隔で3回行われています。

・T1(初回):1,737名

・T2(4ヶ月後):1,605名

・T3(8ヶ月後):1,512名

最終的な分析対象は1,512名で、
平均年齢は19.95歳、女性が75.5%を占めていました。

調査では、「キャリア決定自己効力感」と、
その土台となる次の5つの「キャリア学習経験」を測定しました。

ーーー
<キャリア学習経験>

・個人達成体験:自分自身で何かを成し遂げた経験

・言語的説得:周囲から受け取った励ましや肯定的な言葉

・代理学習:友人や他者の姿から学ぶ経験

・肯定的情緒:キャリアを考えるときに生じる前向きな感情

・否定的情緒:キャリアを考えるときに生じる不安や緊張
ーーー

また、「初回と4ヶ月後、8ヶ月後で、
同じ概念を同じように測れているか」を確認する、
縦断的測定不変性も検証されました。



■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:「個人達成体験」が、最も強く関連していた

キャリア決定自己効力感と最も強く、
一貫して関連していたのが「個人達成体験」でした。

その関連の強さを示す数値は、
初回がβ=0.26、4ヶ月後がβ=0.23、
8ヶ月後がβ=0.24でした。

時間が経っても、その大きさはほとんど変わっていませんでした。

つまり、「自分で何かを選んだ」「実際に行動してみた」
「難しいことを乗り越えた」「小さくても前に進めた」
といった達成経験が、
「自分ならキャリアを考え、決めていけそうだ」という感覚と、
持続的に結びついていたということです。


◯わかったこと2:「周囲からの肯定的な言葉」も、継続的に関連していた

「言語的説得」も、初回から8ヶ月後まで、
一貫してキャリア決定自己効力感と正の関連を示しました。

「あなたなら、できると思う」

「こんなところが、仕事で活かせそうだね」

「その選択は、あなたらしいと思う」

こうした重要な他者からの肯定的な言葉も、
キャリアに向き合う自信を支えている可能性があります。

達成経験ほど強い関連ではありませんでしたが、
その関係が8ヶ月後まで続いていたことは、興味深い点です。

(研究者らは、この結果には、
人間関係や他者のニーズを重視する中国の集団主義的な文化背景が
影響している可能性も指摘しています)


◯わかったこと3:「前向きな感情」も、自己効力感と関連していた

キャリアについて考えたときに生じる「肯定的情緒」も、
3つの時点すべてで、
キャリア決定自己効力感と正の関連を示しました。

将来について考えたときに、
希望や楽しさ、前向きな気持ちを持てること。

それ自体も、
「自分ならキャリアを選んでいけそうだ」という感覚と
結びついていたようです。


◯わかったこと4:「代理学習」と「否定的情緒」の関連は限定的だった

一方、友人や同年代の人の姿から学ぶ「代理学習」は、
いずれの時点でも有意な関連を示しませんでした。

他者の成功は、
「自分にもできそうだ」と励みになることがあります。

一方で、「それに比べて、自分は何も決まっていない」と、
焦りやプレッシャーを生むこともあります。

誰をモデルとして見るのか。
その相手との距離はどの程度なのか。
相手の成功を自分に重ねられるのか。

こうした条件によって、
代理学習の働きは変わるのかもしれません。

https://assets.st-note.com/img/1789027058-7Jp8rPO1BmSnUcLEHtWd3Cj0.png?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85

PME(個人的達成経験)が最も強く、一貫して
CDSE(キャリア決定自己効力感)に影響していた



■まとめと感想

改めてこの論文を見てみると、
先日ご紹介した小学生の学習における自己効力感の研究と、
よく似た結果が示されています。

小学生であっても、大学生であっても、
最も重要なのは、やはり
「自分でやってみて、できた」という経験でした。

12歳から20歳へと年齢が上がり、
テーマが学習からキャリアへと変わっても、
達成経験の重要性は変わらないのでしょう。

ただ、20歳になれば、たぶん、
それなりに経験が小学生の時より増えています。

一方で、これまでに自分が乗り越えてきたことや、
工夫して前に進んだことは、意外と気付いていないもの。

だからこそ、考察にも書かれていた
「過去の成功経験を振り返ること」という実践的示唆に
意味があるのだと思います。

経験しただけでは、
それを達成経験として認識できていないこともあります。

自分の歩みを振り返り、
「確かに自分は、これをやってきた」と意味づけること。

これは、経験学習をポジティブな観点から振り返る、
「ポジティブ・リフレクション」という考え方にもつながります。

できなかったことから学ぶだけではなく、
「何ができたのか」「何が前進につながったのか」にも目を向ける。

そうして過去の経験を、
自分の未来を支える材料へと変えていくことが、
キャリアへの自信につながる一助になるのかもしれません。

本論文の考察から、そんなことを感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:247km

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