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令和8年9月12日(第4582号)
ウェルビーイングを測定するためのシンプルな8つの質問
―Flourishing Scaleとは?ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2637字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、原稿の執筆。
久しぶりに午後がまるまま空いていたので、
ひたすら没頭することができました。
また研修プログラムの開発。
夕方からは雨でしたが、10kmのランニングなど。
あと一息で、ボツになった原稿の
第二の「初稿」が出来上がります。
もう2年経ってしまったのに、まだ初稿。
なんと長いことか…。
しかし、終わらないマラソンはない、ということで
一歩ずつ足を前に出していきたいと思います。
がんばろう。
*
さて、本日のお話です。
今日は、論文のご紹介です。
テーマは「ウェルビーイング」です。
最近、企業の中でも「ウェルビーイング」という言葉を、
ずいぶん耳にするようになりました。
ウェルビーイングは、しばしば「持続的な幸福」と訳されます。
少し乱暴に言えば、
「人はどれくらい幸せに、よりよく生きているのか」を
捉えるための考え方です。
たとえば、仕事に対する活力や熱意を示す
「エンゲージメント」が、生産性やパフォーマンスと
関わることは、これまで多くの研究で示されてきました。
そして近年では、そうした仕事上の成果だけではなく、
その土台にある「人そのもののウェルビーイング」を
高めようとする企業も増えているように感じます。
一方で、少し難しいのが、
「では、ウェルビーイングって、どうやって測るの?」
ということです。
幸せと一言でいっても、その中身はいろいろあります。
たとえば、ポジティブ心理学の父とも呼ばれる
マーティン・セリグマン博士は、
ウェルビーイングを構成する要素として、
有名な「PERMA」を提唱しました。
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<ウェルビーイングを構成する要素 ーPERMAー>
・P=Positive Emotion(ポジティブ感情)
・E=Engagement(エンゲージメント)
・R=Relationships(人間関係)
・M=Meaning(意味・意義)
・A=Accomplishment(達成)
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なるほど。こうして分けてみると、
私たちが「幸せ」と呼んでいるものは、
実はかなり多面的であることがわかりますね。
そして、だからこそ測るのが少し難しいとも言えそう。
そんな中で今回ご紹介したい論文が、
ウェルビーイングをわずか8項目で捉える
「Flourishing Scale(フラリッシング尺度)」なるものです。
シンプルなのですが、これがなかなか面白く、
また使いやすい尺度なのです。
ということで、早速中身をみてまいりましょう。
それでは、どうぞ!
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<今回の論文>
タイトル:New Well-being Measures: Short Scales to Assess Flourishing and Positive and Negative Feelings
(新しいウェルビーイング尺度:フラリッシングおよびポジティブ・ネガティブ感情を評価する短縮尺度)
出版:Social Indicators Research, 2010年
著者:Ed Diener, Derrick Wirtz, William Tov, Chu Kim-Prieto, Dong-won Choi, Shigehiro Oishi, Robert Biswas-Diener
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■Flourishing Scaleとは何か?
今回の論文では、ウェルビーイングを測定するために、
2つの尺度が開発されています。
一つが「Flourishing Scale(FS)」。
もう一つが「Scale of Positive and Negative Experience(SPANE)」です。
(SPANEはポジティブ・ネガティブな感情経験を測定する尺度ですが、
今回は特に前者のFlourishing Scaleに注目したいと思います)
「Flourishing(フローリッシング)」とは、
日本語では「繁栄」「開花」「満ち足りた状態」などと訳されます。
つまり、単に「今、気分がいい」ということではありません。
「自分の人生には意味がある」
「良い人間関係がある」
「自分の活動に夢中になれている」
「未来に希望を持っている」
などなど、もう少し広い意味での
「人生がうまく機能している状態」を捉えるものです。
そして、その状態を、8項目で測るのが「Flourishing Scale」です。
■Flourishing Scaleの8項目とは
<回答方法>
それぞれの項目について7段階で評価します。
1=強く反対
7=強く賛成
そして、8項目を合計し、8~56点の範囲で評価します。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<Flourishing Scale尺度>
1.【人生の目的】:私は意義と目的のある人生を送っている
(I lead a purposeful and meaningful life)
2.【人間関係】:自分の対人関係は協力的で実りあるものである
(My social relationships are supportive and rewarding)
3.【没頭・関与】:私は日々の活動に熱中し、関心を持っている
(I am engaged and interested in my daily activities)
4.【他者貢献】:私は他者の幸福やウェルビーイングに積極的に貢献している
(I actively contribute to the happiness and well-being of others)
5.【能力・有能感】:私は自分にとって重要な活動において能力があり、やり遂げることができる
(I am competent and capable in the activities that are important to me)
6.【自己尊重】:私は良い人間であり、良い人生を送っている
(I am a good person and live a good life)
7.【楽観性】:私は自分の将来に対して楽観的である
(I am optimistic about my future)
8.【他者からの尊重】:人々は私を尊重してくれている
(People respect me)
※【 】内は領域であり、質問項目ではありません。
※日本語訳は、著者による独自訳です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
こうして並べてみると、
「幸せ」と一言で表現していたものが、
少し具体的に見えてくる感じがしないでしょうか。
人生の意味。人間関係。没頭。他者への貢献。
有能感。自己尊重。楽観性。他者からの尊重。
確かにこのあたりが満たされていると、
「自分の人生はなかなか良い状態にある」と思えそうです。
■この8項目で、本当にちゃんと測れるのか?
一方、気になるのは、
「たった8項目で、本当にウェルビーイングなんて測れるの?」
という点です。
研究では、米国とシンガポールの6つの大学から集められた
大学生689名を対象に検証が行われました。
その結果、以下のようなことがわかりました。
・Flourishing Scaleは、8項目で明確な1因子構造を示した。
・内部一致性を示すCronbach's αは.87だった。
・約1か月後にもう一度回答してもらった
再テスト信頼性はr=.71だった。
・Ryffの心理的ウェルビーイング尺度とはr=.73、
基本心理的欲求充足尺度とはr=.78と、
既存のウェルビーイング関連尺度とも強い関連が確認された。
つまり、信頼性や妥当性を示すさまざまな分析から見ても、
「短いけれど、かなりちゃんと測れている」ということです。
これは実務で使うことを考えると、
かなりありがたい特徴です。
50問、100問ある尺度は研究としては精緻でも、
企業研修や実際の現場では、
なかなか回答してもらうことが難しかったりしますが、
8項目であれば、活用もしやすいです。
■まとめと感想
今回ご紹介したFlourishing Scaleは、
わずか8項目でありながら、人生の意味、人間関係、
没頭、他者貢献、有能感、自己尊重、楽観性、
他者からの尊重といった、
幅広い側面からウェルビーイングを捉える尺度です。
個人的には、この「短さ」と「幅広さ」のバランスが、
とても使いやすいと感じています。
ちなみに私自身も、強みを活用する介入の効果を
検討する際などに、このFlourishing Scaleを
成果指標の一つとして使っています。
個人的な研究でも用いていますが、
やはり8項目という短さは、
回答者の負担を考えても非常に扱いやすいと感じます。
ウェルビーイングは重要だと言われても、
それだけでは少し抽象的です。
しかし、こうした尺度を使うことで、
「自分にとって、今どこが満たされているのか or いないのか」
を見つめるきっかけにもなります。
研究として測定する際はもちろんですが、
自分自身の生活を振り返る問いとして眺めてみても、
なかなか興味深い尺度だと思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:121km
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