配信日時 2026/09/10 07:28

「価値観」とは、いったい何なのか? ―代表的な価値観研究をまとめてみたー【カレッジサプリ】

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令和8年9月10日(第4580号)


「価値観」とは、いったい何なのか?
 ―代表的な価値観研究をまとめてみたー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3788字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、朝に原稿の執筆。
また午後は、外部パートナーとして
企業内大学の設立に関わらせていただいている会社様への
開発中の研修プログラムのデモの実施でした。

やってみると、想像していなかった発見があり、実に興味深いです。
開校が楽しみでございます…!

また夜は、坂道ダッシュ&ランニング15kmでした。

*

さて、突然ですが、皆さまに質問です。

「あなたの大切な『価値観』はなんですか?」

そう聞かれたら、なんと答えるでしょうか。
この「価値観」なるもの、しばしば自己理解や
キャリアの探求出てくるキーワードです。

他にも、心理学の文脈で、
「自分が大切にしたい価値観を書き出すこと」が、
幸福感や自己理解、人とのつながりと関わるという研究
https://note.com/courage_sapuri/n/n3d6cf03e19f1
もあります。

あるいは、チームビルディングとして「価値観カード」から
大切な言葉を選び、互いに紹介し合う。
そんな場面を目にしたことがある人も、
いるのではないでしょうか。

***

しかし、改めて考えてみると、
そもそも「価値観」とは何なのでしょうか。

また、どのような種類があり、
研究ではどう整理されてきたのでしょうか。

気になって代表的な理論やツールを調べると、
同じ「価値観」でも、その目的や捉え方には
興味深い違いがあり、
「へえー!」と感動していたのでした。

ということで、今日は、価値観について調べた論文を、
ざざっと概観してみたいと思います。

ちょっとマニアックな内容ですが、好きな人は好き(なはず)。

それでは、どうぞ!



■30秒でわかる、今回のお話

・「価値観」には、多くの研究と歴史がある。

・まず、Rokeachは、価値を「人生で実現したい状態」と
 「そのための行動様式」に分けた

・次に、Schwartzは、価値を単なる一覧ではなく、
 両立や葛藤を含む「円環構造」として捉えた

・そして、PVQ-RRは、人物描写との類似度から、
 改訂版の19価値を測定する質問紙である

・Personal Values Card Sortは、精密な測定よりも、
 対話や行動につなげる実践ツールとして使いやすい

という形です。
なんだか、いっぱい登場人物とツールがありますね…。

一つずつみていきましょう!



■価値観研究は、どのように発展してきたのか

人間の価値観を類型化しようとする試みは、
20世紀初頭から見られます。

大きな節目の一つとなったのが、
社会心理学者Milton Rokeach
(ミルトン・ロキーチ)の研究です。

Rokeachは1973年の著書『The Nature of Human Values』で、
「Rokeach Value Survey(RVS)」を体系化しました。

さらにShalom H. Schwartz(シュワルツ)は、
1992年に10の基本価値と、
その関係性を表す円環構造を提示しました。

その後、理論は19価値へ細分化され、
測定質問紙の「PVQ-RR」が開発されました。

一方、2001年にはニューメキシコ大学の研究者らが、
対話や行動につなげる実践ツール
「Personal Values Card Sort」を公開しました。

大まかに整理すると、次のようになります。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●Rokeach Value Survey(RVS)
・目指す状態とそこへ至る行動様式
・価値の優先順位を知る

●Schwartzの基本的価値理論
・価値同士の両立・葛藤を円環で捉える
・研究/文化・集団比較

●PVQ-RR
・ある人物と自分がどれほど似ているかで
 19価値を測る心理測定
・国際比較

●Personal Values Card Sor
・多様な価値語から大切なものを選ぶ
・内省、対話、キャリア支援
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)

なんだか、英単語が乱発していて、
しかも超絶抽象的なので、
イメージしづらいかもしれません。

なので、それぞれ詳しくどういう特徴があるのかを
見ていきましょう。



■RVS ―「何を実現したいか」と「どう生きたいか」

RVSの面白いところは、
36の価値を二つに分けた点です。

人生で実現したい状態である「終末的価値」と、
そこへ至るうえで望ましい行動様式である
「手段的的価」です。

それぞれ18項目を重要な順に並べます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◯終末的価値(目指したい状態)

快適な生活/刺激的な人生/達成感/平和な世界/
美しい世界/平等/家族の安全/自由/幸福/
内的調和/成熟した愛/国家の安全/楽しみ/救済/
自尊/社会的承認/真の友情/知恵

◯手段的価値(大切にしたいあり方)

向上心/広い心/有能さ/明るさ/清潔さ/勇気/
許し/援助/正直さ/想像力/自立/知性/論理性/
愛情深さ/従順さ/礼儀/責任感/自己統制
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

たとえば「達成感を得たい」は終末的価値、
「責任感を持って取り組む」は手段的価値です。

普段ひとまとめにしている価値観を、
目的と手段に分けると、
生き方の輪郭が一段くっきりするように感じます。



■シュワルツの基本価値 ―価値観は円環状につながる

Schwartzは、価値を
「個人や集団の人生における指針となる、
状況を超えた目標」と捉えました。

基本の10価値は、次のとおりです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
自己方向づけ/刺激/快楽主義/達成/権力/安全/
同調/伝統/博愛/普遍主義
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

特徴的なのは、
これらが円環状に配置されることです。

近い価値は両立しやすく、
反対側の価値は葛藤しやすい。

たとえば、「自己方向づけ」「刺激」は
変化への開放性に、
「安全」「同調」「伝統」は現状の維持に関わります。

どちらが正しいという話ではなく、
どちらも大切だからこそ、私たちは迷うのです。

ちなみに、この研究に続く「PVQ-RR」では
価値語を直接尋ねず、人物描写を示して
「自分にどれほど似ているか」を答えます。

抽象語の好みだけで選ぶことを避ける、
興味深い測定方法です。



■価値観カード――測るよりも、話して行動につなげる

ニューメキシコ大学の
Personal Values Card Sortの現行公開版には、
83の価値語と自由記入用の「Other Value」があります。

すべてを縦に並べず、
近い内容を便宜的にまとめると以下のようになります
(公式分類ではありません)。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◯自分の成長・挑戦:
達成/冒険/挑戦/創造性/成長/知識/熟達/目的/
情熱/リスクテイク

◯自律・自分らしさ:
自律/独立/非同調/開放性/柔軟性/本物らしさ/
自己受容/自己理解/自尊感情

◯人との関係:
受容されること/家族/友情/親密さ/愛されること/
愛すること/恋愛/一対一の関係/人気

◯他者への配慮・貢献:
ケア/思いやり/貢献/協働/寛大さ/援助/育成/
奉仕/許し/寛容/世界平和

◯規律・信頼:
正確さ/コミットメント/礼節/信頼性/義務/
忠実さ/正直/勤勉/秩序/責任/自己統制/節度

◯安定・心身の充足:
快適さ/体力/健康/内なる平和/安全/安定/余暇/
独りの時間/質素・簡素/マインドフルネス

◯喜び・美・刺激:
魅力/美/変化/興奮・刺激/楽しさ/ユーモア/
快楽/性

◯社会・精神的な価値:
権威/環境との調和/名声/神意/希望/謙虚/正義/
権力/合理性/現実主義/スピリチュアリティ/伝統/
徳/富
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

使う際は、気になる語を15~20個選び、
似た語の違いを自分の言葉で説明して、上位5~7個に絞る。

最後に「この価値を大切にするなら、来週、何をするか」
までアクションをプランを考えるのがおすすめだそうです。



■まとめと感想

整理すると、価値観研究は、
Rokeachによる価値の優先順位の研究を経て、
Schwartzらの「両立や葛藤を持つ動機づけの体系」へと
発展しました。

一方、Personal Values Card Sortは、
精密な測定よりも、
本人が大切にしたい方向を日常の行動へ結びつける
対話ツール、と位置づけられそうです。

「価値観」という言葉をよく使うわりに、
その中身を立ち止まって考えたことは
案外少なかったなと思いました。

「人生で何を実現したいか」と
「そのために、どのような自分でありたいか」を分けると、
確かに輪郭がはっきりします。

また、「挑戦」と「安定」、「自律」と「協働」のように、
価値同士がぶつかることもあります。

迷うのは、軸がないからではなく、
「大切なものが一つではないから」なのかもしれません。

Schwartzの体系に「達成」「権力」「体面」が
含まれていることにも、なるほどと思いました。

自分が重視しない価値も、
誰かにとっては人生の指針になりうる。

価値観を知ることは、
他者の見ている世界を理解することにもつながりそうです。

こうした整理をカードとして手元に持っておくと、
研修やキャリア面談でも使い勝手がよさそうです。

私自身、試してみたいと思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/ndaf9ad78a640?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:111km

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