---------------------------------------------------------------------------
皆さまの1日を5%元気にするビジネス系メルマガ『カレッジサプリ』
---------------------------------------------------------------------------
令和8年9月9日(第4579号)
トラウマに「意味」を見出すことは、本当に心を癒すのか?
―30年間の研究が示した、意味の探求と回復の関係
株式会社カレッジ 紀藤康行
---------------------------------------------------------------------------
※このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合は大変お手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。
(本日のお話 3150字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、高校のリーダーシップの授業の実施でした。
ちょうど、付属小学校の保護者の方が、
学校選びの参考にされるとのことで授業参観に来られており、
教室の後にお母さんたちが並ぶ中で授業をするという新鮮な体験でした。
「今学期のリーダーシップ目標」を一人ずつ前に立って宣言する様子は、
エモい(?)様子だったのでしょうか、かなり人が集まっておりました。
こうした学校選びを意識されるお母さんの気持ち、
わかるよな…と、保護者の気持ちになった時間でもありました。
後期の高校の授業も、頑張りたいと思います。
その他13kmのランニングなど。
*
さて、本日のお話です。
私たちの人生には、時に「逆境」と呼ばれる出来事が訪れます。
突然の喪失、事故、生命を脅かす病気。
あるいは、自然災害や事件など、
多くの人が同時に巻き込まれる出来事。
こうした経験は、誰の人生にも起こり得るものです。
そして、そのような出来事に直面したとき、
私たちは思わず考えてしまいます。
「なぜ、自分が?」
「この出来事には、どんな意味があるのだろう?」
「苦しい経験に意味を見出すこと(Finding Meaning)」は、
そこから立ち直るために必要な営みにも思えます。
そして実際、これまで多くの理論において、
苦しい出来事への適応を支える
大切な行為の一つと考えられてきました。
しかし今回の論文を読むと、
実はそう単純ではないことがわかります。
「意味を”見出せた”こと」は、
より良好な心理的適応と結びついている。
一方、答えの出ないまま「意味を”探し続ける”こと」は、
かえって苦痛を長引かせる可能性がある。
そして、そもそも意味を探さない人も
良好に適応することがある、というのです。
ということで、早速その中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
==========================
<今回の論文>
タイトル:Searching for and Finding Meaning Following Personal and Collective Traumas(個人的および集団的トラウマ発生後における意味の探求と発見)
著者:Roxane Cohen Silver、John A. Updegraff
所属:カリフォルニア大学アーバイン校、ケント州立大学
掲載:The Psychology of Meaning(American Psychological Association)、2013年
==========================
■30秒でわかる、この論文のポイント
・トラウマ後に「なぜ自分が?」と意味を探すことは一般的だが、
全員に起こる反応ではない
・「意味を見出せた」人は、
その後の抑うつやPTSD症状などが低い傾向にあった
・一方、答えが見つからないまま「意味を探し続ける」ことは、
反芻や心理的苦痛と結びついていた
・意味を探さなかった人も比較的良好に適応しており、
「意味を見出さなければならない」わけではない
■なぜ人は、つらい出来事に意味を求めるのか
私たちは、「世界はある程度安全で、予測可能で、
理にかなっている」という前提を持って暮らしています。
しかし、突然の事故や喪失は、
こうした前提を一瞬で打ち砕きます。
なぜ、こんなことが起こるのか。
世界は本当に安全なのか。
こうして、信じていた世界観と
目の前の出来事にズレが生まれます。
そのズレを埋め、世界に秩序を取り戻そうとする営みを
「意味の探求(searching for meaning)」と
学術的には呼びます。
■30年間の研究から、何がわかったのか
本論文は、「意味の探求」について、
著者らが約30年にわたって行ってきた研究を
まとめたレビューです。
対象は、脊髄損傷を負った人、
性的虐待を経験した女性、遺族などに加え、
山火事、学校での銃乱射事件、
9.11同時多発テロなどの
集団的トラウマを経験した人々でした。
研究では、意味を探したか、答えを見出せたかと、
抑うつ、不安、反芻、PTSD症状などとの関係が
調べられました。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:意味を探すこと自体が、回復につながるわけではない
まず興味深いのは、「意味の探求」は一般的ではあるものの、
普遍的な反応ではなかったことです。
たとえば、脊髄損傷患者102名を対象とした研究では、
事故から3週間がたっても54%が
「なぜ自分が?」と自問しておらず、
8週間後でも46%が意味を探していませんでした。
そして、意味を探していた人ほど、
事故について強く反芻し、不公平感を覚え、
抑うつ、怒り、不安を多く報告していました。
苦痛が強いからこそ意味を探していた可能性もあり、
単純な因果関係とは言えません。
ただ、「意味を探すことは、それ自体がよいこと」とは
限らないようです。
◯わかったこと2:重要なのは「探したか」よりも「見出せたか」
一方で、意味を探した末に何らかの答えを見出せた人は、
心理的な適応が比較的良好でした。
見出された意味は、「神の計画だった」「運命だった」
「人生とはそういうものだ」
「この経験から人間関係の大切さに気づいた」など、
さまざまです。
重要なのは、どの説明が正しいかではありません。
本人なりに出来事を位置づけ、
折り合いをつけられたこと自体が、
回復と関わっていたのです。
◯わかったこと3:時間がたてば、意味が見つかるとは限らない
SIDS(乳幼児突然死症候群)で
子どもを亡くした親を追跡した研究では、
喪失から1カ月時点で65%、
3カ月と18カ月時点では75%が、
意味を見出せていませんでした。
この結果から、意味を見出せる人は
比較的早い段階で見出す一方、
時間がたてば自然と答えが見つかるとは限らないことが
示唆されます。
また、喪失後の早い段階から意味を探さなかった親は、
意味を探していた親よりも、
その後18カ月にわたって良好な状態を保っていました。
つまり、回復には少なくとも二つの道があるのかもしれません。
自分なりの意味を見出すこと。
そして「これは、ただ起こったことなのだ」と、
答えのない問いから離れることです。
■「なぜ」から離れ、支えのある場所へ
では、意味を見出せず、
「なぜ自分が?」という問いから抜け出せないときは、
どうすればよいのでしょうか。
論文では、支援的で共感的な人間関係の重要性も
示されています。
安心できる相手に体験や感情を話すことは、
感情を整理し、自己理解を深める助けになります。
苦しい出来事を無理やり肯定する必要はありません。
意味の探求が反芻のループになっているのなら、
「なぜ起きたのか」から、
「今、誰に話せるか」「これから自分をどう支えるか」へ
問いを移すことも、一つの選択肢なのでしょう。
■まとめと感想
この論文を読んで特に印象に残ったのは、
「意味を見出せたこと」は心理的適応に役立つ。
しかし、答えの出ないまま「意味を探し続けること」が、
いつも助けになるわけではないという点でした。
意味を見出せる場合、その形は
「神の意志」「運命」
「喪失の中に見つけた肯定的なもの」など、
人によって異なります。
宗教性やスピリチュアリティは、
理不尽な出来事を既存の世界観に統合する枠組みとして
働く可能性もあるようです。
そうした拠り所を持つ人は、
それを活用することも支えになるのでしょう。
一方で、答えが見つからない人に
「この経験の意味を考えよう」と促すことは、
場合によっては酷なことでもあります。
意味が、すっと見つかるなら、
それに支えてもらえばよい。
しかし、見つからないのであれば、
そこにこだわりすぎなくてもよい。
「意味を見出さなければならない」という新たな宿題を、
自分に課さなくてもよいのです。
そんなときは、意味を探すことよりも、
安心して感情を吐露できる人や場所につながること。
自分の痛みを、
支援的で共感的に受け止めてもらうこと。
そのほうが、次の一歩につながる場合もあるのだと思います。
「意味を見出すこと」と同じくらい、
「意味を見出さなくてもよい」と知ることも大事である。
私はどちらかというと、
スピリチュアリティ的な特性が強い面があるので、
「意味を探し、見出すこと」は大事と思っている人でした。
しかし、30年の研究によれば、
こうした逆境にも意味を見出していない人も、
半分以上はいる研究もあり、
人による違いがあるんだな、
ということも興味深かったです。
そんなことを考えさせられた論文でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/ne334bc087870?app_launch=false
==========================
【編集後記】
◯今月のランニング:96km
【メルマガのご感想について】
メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
皆さまのメッセージが励みになります!ぜひお気軽にメッセージくださいませ。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
メルマガ「カレッジサプリ」公式サイト
https://www.courage-sapuri.jp/
★バックナンバーはこちらから読めます★
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、
研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合はお手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。
【メルマガ登録・解除について】
※メールアドレスの変更について
⇒「現在のメールアドレスの配信停止」→「新アドレスでの登録」にてご対応お願い申し上げます。
※メルマガのご登録はこちらから
⇒
https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=HSfoIRnMfw
※メルマガの配信停止はこちらから
⇒
https://1lejend.com/stepmail/delf.php?no=HSfoIRnMfw