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令和8年9月3日(第4573号)
「仲の良さ」だけでは、成果につながらない?!
―「チーム結束性」を測る10項目から考える
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3603字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
現在、あるクライアント先の企業内大学のプログラム開発、
効果測定などに関わらせていただいています。
このプロジェクトが「一緒に作り上げていく」という感覚があって、
非常にやりがいがあるお仕事となっております。
(A社の皆さま、ありがとうございます)
時間としてはカツカツになっていくのですが、
ぜひ良いものにしていきたい、そんなことを思っている次第。
そんな矢先、妻、インフル罹患。
保育園送り迎え、お食事など、研修しながらのワンオペです。
ただ、ランニングは再開しました。
無理をしなければ、良い方向にいけそうなので、
ちょっとずつ戻していきたいと思います。
*
さて、そんなプロジェクトの効果測定の一つで
「チームの結束性」を測定する、様々な尺度を調べております。
チームの結束性が高まると、お互いのために頑張ろうと思えたり、
職場での支援やコミュニケーションが増えたりします。
また、仕事満足度が高まり、ストレスが下がることなども知られています。
では、その「チームの結束性」とは、具体的に何を指すのか?
メンバー同士が仲良く、飲み会にも一緒に行くことでしょうか。
それとも、同じ目標に向かって、一丸となって取り組むことでしょうか。
今回の論文は、「スポーツチームを対象に開発された尺度を、
職場チーム向けに再構成した尺度」を扱ったものです。
その結果、チームの成果と特に強く関わっていたものが見えてきました。
ということで、早速その内容を見てまいりましょう。それでは、どうぞ!
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<今回の論文>
タイトル:THE MEASUREMENT OF COHESION IN WORK TEAMS(ワークチームにおける結束性の測定)
著者:Sally A. Carless、Caroline De Paola
所属:Monash University
掲載誌:Small Group Research, Vol.31, No.1, pp.71-88
出版年:2000年
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■30秒でわかる、この論文のポイント
・スポーツチーム用の「Group Environment Questionnaire(GEQ)」を、
職場チーム向けに再構成した
・チームの結束性は、「タスク結束性」「社会的結束性」
「グループへの個人魅力」の3つに整理された
・その中でも、共通の目標に向かって一丸となる「タスク結束性」が、
仕事満足度やチームの効果性、パフォーマンスと強く関係していた
・職場のチームにおいては、単なる仲の良さ以上に、
「同じゴールを、同じ熱量で見ていること」が重要であると示唆された
■研究の背景と目的
チームの有効性を考えるうえで、「結束性」は重要な要因の一つとされています。
ただし、その捉え方や測定方法は一貫していません。かつては、
メンバー同士が互いに魅力を感じているかといった、
比較的単純な概念として扱われることもありました。
(先日ご紹介した「TMX」もその一つですね)
https://note.com/courage_sapuri/n/nccd762a73e81
一方、その後の研究では、結束性を「共通の課題に取り組むつながり」と
「対人関係としてのつながり」に分ける、多次元的な見方が広がっていきます。
しかし、当時は職場チームを対象に、こうした複数の側面を測定できる尺度が
十分に整っていませんでした。
そこで本研究では、スポーツチーム用に開発されたGEQを職場向けに修正し、
その因子構造と妥当性を検証しました。
■研究の方法
調査対象は、オーストラリアの公的機関が運営する小売店舗で働く従業員120名、
合計59チームでした。
研究者らは、GEQの18項目を職場の文脈に合うように修正し、
9件法で回答を求めました。
あわせて、職場の士気、社会的支援、協力、業務分担、意思決定への参加、
目標の相互依存性、チームワークへの選好なども測定しました。
さらに、従業員自身による「チームの効果性」や「仕事満足度」に加え、
地域マネージャーによる各店舗の「顧客サービス」、「効率性」、
「効果性」などの評価も用いられました。
分析では、まず既存の因子モデルを確認的因子分析によって検証しました。
しかし、いずれも十分な適合を示さなかったため、
探索的因子分析を通じて項目を精選し、その結果、10項目・3因子からなる
「Team Cohesion Scale」が構成されました。
■チーム結束性を測る10項目
以下が、本研究で再構成された10項目です。回答には9件法が用いられ、
(R)は得点を反転させて集計する項目を示します。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【タスク結束性】:共通の目標や業務の達成に向けて、
チームが一丸となっている程度を表します。
1.私たちのチームは、パフォーマンス目標の達成に向けて一致団結している
2.私は、チームのタスクに対するコミットメントの水準に不満を感じている(R)
3.チームメンバーの間で、チームのパフォーマンスに対する目標や期待が食い違っている(R)
4.このチームは、私自身のパフォーマンスを高める十分な機会を与えてくれない(R)
【社会的結束性】:チームのメンバーが、
仕事以外でも一緒に過ごしたいと思う程度を表します。
5.私たちのチームは、勤務時間外でも一緒に時間を過ごしたいと思っている
6.私たちのチームのメンバーは、勤務時間外にはまとまって行動しない(R)
7.私たちのチームのメンバーが、一緒にパーティーや飲み会をすることはほとんどない(R)
8.メンバーは、チームで集まるよりも、それぞれ別に出かけることを好む(R)
【グループへの個人魅力】:個人が、
そのチームを魅力ある社会的な居場所だと感じている程度を表します。
9.私にとってこのチームは、自分が所属する中でも特に重要な社会的集団の一つである
10.私の親しい友人の何人かは、このチームの中にいる
※上記は論文に掲載された項目をもとにした筆者による日本語訳です
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1.結束性は3つの側面に分けられた
分析の結果、チームの結束性は、次の3つに整理されました。
1.共通の目標やタスクに向かう「タスク結束性」
2.仕事以外でも一緒に過ごそうとする「社会的結束性」
3,そのチームを自分にとって重要な居場所だと感じる「グループへの個人魅力」
つまり、「チームの結束性」と一言でいっても、
その中身は一つではないということです。
◯わかったこと2.成果と強く関係していたのは「タスク結束性」
3つの中で、特に重要な役割を果たしていたのがタスク結束性でした。
タスク結束性は、職場の士気(r=.72)、社会的支援(r=.68)、
協力(r=.62)、業務分担(r=.58)と、比較的強い正の相関を示しました。
また、仕事満足度(r=.49)、従業員が評価したチームの効果性(r=.67)、
マネージャーが評価したチームパフォーマンス(r=.29)とも
有意な関係がありました。
社会的結束性やグループへの個人魅力の影響を統計的に取り除いた後も、
タスク結束性は職場特性や成果と最も一貫して関連を示す要因でした。
◯わかったこと3.「仲の良さ」と「成果」は同じではない
社会的結束性とは、勤務時間外にも一緒に過ごしたい、
飲み会や集まりに参加したいといったつながりです。
もちろん、そうした関係性にも意味はあるでしょう。しかし本研究からは、
社会的結束性がタスク結束性と同じように成果へ強く結びついている、
とは言えませんでした。
なお、この結果だけから「社会的結束性は成果に中程度の影響を与える」と
結論づけることも難しそうです。
むしろ、「仕事以外でも一緒に過ごす」という測り方だけでは、
職場における助け合いや日常的なコミュニケーションを
十分に捉えられていない可能性があります。
■まとめと感想
この論文を読みながら、改めて印象に残ったのが、
「同じゴールを、同じ熱量で見ているか」ということでした。
「タスク結束性」とは、ただ同じ仕事をしていることではなく、
共通の目標にコミットし、メンバー同士が高い水準でそれを追いかけ、
さらに、そのチームにいることが自分の成長や
パフォーマンス向上につながっている状態です。
一方で、「社会的結束性」は、勤務時間外にも一緒に過ごす、
飲み会に行く、みんなで集まるといった関係性です。
それらが今回の研究では、成果と必ずしも明確な関連を示さなかったことは、
興味深い点です。
目標に向かって協力し、役割を分かち合い、ときに助け合う。
そのプロセスを通じて、結果的に関係性も深まっていく。
「仲が良いから、よいチームになる」というよりも、
「一緒に本気で何かを成し遂げようとするから、よいチームになっていく」。
当たり前のようですが、そんなチームづくりの順序を、
改めて考えさせてくれる研究でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n0adeefa51051?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:23km
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