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令和8年9月2日(第4572号)
チームを捉えるための考え方「チームメンバー交換関係(TMX)」って何だ?
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3901字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、午前中に研修プログラムの開発。
午後からは、外部人事パートナーとして関わらせていただいてる会社様への、
コーチング&コンサルティングでした。
夕方から、人事の知人とのお打ち合わせ(Hさん、ありがとうございました!)、
その後、来週から始まる高校のリーダーシップ授業の打ち合わせでした。
*
さて、本日のお話です。
今日は、チーム内の人間関係を捉える代表的な概念の一つ、
「Team-Member Exchange(チームメンバー交換関係:TMX)」
なるものについて、あるレビュー論文をご紹介したいと思います。
…などと、こんなアルファベットの横文字が連発されるだけで、
ウッとなる方もいるかもしれませんが、とても興味深い考えです。
要は「良いチームとは何か?」
「そして良いチームは何をもたらすのか?」を、
学術的な概念で教えてくれているものです。
ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
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<今回の論文>
タイトル:A Literature Review of Team-Member Exchange and Prospects(チームメンバー交換関係に関する文献レビューと今後の展望)
著者:Zheng Chen
所属:School of Business Administration, South China University of Technology(中国・華南理工大学工商管理学院)
掲載誌:Journal of Service Science and Management, 2018, Vol. 11, No. 4, pp. 433-454
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■30秒でわかる、この論文のポイント
・TMXとは、「チーム全体の仕事上の関係の質」について、
個人がどのように認識しているかを示す概念である
・リーダーとメンバーの垂直的な関係を扱う
LMX(Leader-Member Exchange)に対して、
TMXはメンバー同士の水平的な交換関係を捉える
・高いTMXは、知識共有、助け合い、仕事への関与、
自己効力感、チームの凝集性や協力などと関連する
・TMXを高める要因には、情動知能、職場の友情、
組織的公正、チーム志向、LMX、チーム規模、
サーバント・リーダーシップ、タスクの複雑性などがある
・一方、研究はまだ断片的であり、
チームレベルでの測定方法や因果関係には
未解明な点が残されている
■TMXとは何か
TMXは、Seers(1989)が提唱した概念です。
簡潔にいえば、
「チームメンバー同士で行われる、相互的なやりとりの質」
を表します。
たとえば、自分から他のメンバーへ、
仕事に役立つアイデアやフィードバック、支援を提供する。
一方で、自分も他のメンバーから
情報や助け、承認を受け取る。
こうした双方向の交換関係を、
本人が全体としてどう捉えているかがTMXです。
ここで大切なのは、TMXはもともと
「チーム全体を客観的に評価した得点」ではなく、
「その人から見て、チームとの関係がどう感じられるか」
という個人レベルの認知として定義されたことです。
TseとDasborough(2008)は、
TMXに含まれるやりとりを、次の二つに整理しています。
・タスク志向の交換:
アイデア、フィードバック、情報、知識の共有など
・関係志向の交換:
助け、配慮、支援、親密さ、友情、励ましなど
低品質のTMXでは、
必要最小限のタスク上の交換にとどまります。
一方、高品質のTMXでは、
タスク上のやりとりに加えて、
関係面での支援や信頼も含まれると考えられています。
■研究の方法
この論文は、著者が新たに調査や実験を行った
実証研究ではありません。
TMXに関する既存の理論研究・実証研究を整理し、
概念の起源、測定法、理論的背景、予測要因、
近接的な影響、遠隔的な影響、そして調整要因を
一つの枠組みにまとめた定性的な文献レビューです。
そのため、厳密な意味での
「システマティックレビュー」というより、
TMX研究の全体像を整理したナラティブレビューとして
読むのが適切かと思います。
■TMXを測る10項目
Seers(1989)は当初、TMXを
「ミーティング」「交換」「凝集性」の3次元、
計18項目で捉えました。
その後、Seersら(1995)は、
最も信頼性の高い「交換」次元に絞り、
次の10項目でTMXの質を測定しました。
10項目の半分は「本人からチームへの貢献」、
残りの半分は「チームから受ける支援」を
捉えるとされています。
まさに「交換関係」ですね。
<TMX尺度> Seersら(1995)
1.よりよい仕事の進め方について、
他のチームメンバーにどのくらいの頻度で提案しますか?
2.あなたの行動によって仕事がしやすくなった、
あるいは、しにくくなったとき、
他のメンバーは通常、そのことをあなたに伝えてくれますか?
3.他のメンバーの行動によって
自分の仕事がしやすくなった、あるいは、
しにくくなったとき、あなたはそのことを
どのくらいの頻度で本人に伝えますか?
4.他のチームメンバーは、
あなたの潜在能力をどの程度認めていますか?
5.他のチームメンバーは、
あなたが抱える問題やニーズをどの程度理解していますか?
6.他のメンバーが仕事を進めやすくなるように、
あなたは担当業務をどの程度柔軟に切り替えられますか?
7.忙しいとき、他のチームメンバーは
どのくらいの頻度であなたに支援を求めますか?
8.忙しい状況で、他のメンバーを助けるために、
あなたはどのくらいの頻度で自発的に力を貸しますか?
9.他のメンバーに割り当てられた仕事を終えるために、
あなたはどの程度協力しようと思いますか?
10.あなたに割り当てられた仕事を終えるために、
他のメンバーはどの程度協力しようとしてくれますか?
こうして眺めてみると、TMXが測っているのは、
単に「仲がよいか」ではないことがわかります。
仕事の改善を提案する。率直にフィードバックする。
相手の可能性を認める。忙しいときに助け合うなどなど。
つまり、成果に向けた相互貢献の質を捉えています。
■TMXは、どのような理論で説明されるのか
論文では、TMXを説明する中心的な理論として、
主に三つが紹介されています。
⑴社会的交換理論:
職場の関係は、その場限りの損得だけではなく、
信頼、支援、フィードバックなどを
長期的にやりとりする中で形づくられる、
という考え方です。
⑵互恵性の理論:
人は誰かから支援を受けると、
自分も相手に肯定的な行動を返そうとします。
「助けてもらったから、今度は自分が助けよう」
という循環が、TMXを育てていきます。
⑶役割理論:
チームの中で互いに期待される役割を理解し、
それに応えようとすることで、周囲から情報、資源、
承認、支援が返され、
高品質な交換関係が築かれると考えます。
要するに、よい関係は一方的に与えられるものではなく、
期待に応え、助け合い、その行動がまた次の協力を生む
という循環の中で育つ、ということなのでしょう。
■TMXを高めるもの
レビューでは、TMXの予測要因が、
個人、チーム、状況という三つのレベルで
整理されています。
◯個人レベル:
情動知能、職場での友情、組織的公正の認知、
チーム志向、そしてLMXの質などです。
相手の感情やニーズを捉えられる人や、
チームで協力する意欲が高い人ほど、
良質なTMXを築きやすいと考えられます。
◯チームレベル:
長期的に協働するチーム、小規模なチーム、
凝集性の高いチームでは、
情報共有や相互支援の機会が増え、
高いTMXが育ちやすいとされます。
(一方、リーダーが特定のメンバーとだけ良好な関係を築き、
メンバー間でLMXの質に大きな格差が生じると、
不公平感や嫉妬が生まれ、
TMXが低下する可能性があります。
これはLMX Differentiation(LMXD)と呼ばれます)
◯状況要因:
サーバント・リーダーシップと、
タスクの複雑性・革新性が挙げられています。
複雑で新しい仕事ほど、一人の知識だけでは完結しません。
そのため、情報交換、協力、調整が必要となり、
結果としてTMXが育ちやすくなると考えられます。
■TMXがもたらす成果について
論文では、TMXの影響を、
比較的直接的な「近接的影響」と、
その先に生じる「遠隔的影響」に分けています。
◯近接的影響:
「個人レベル」では、知識共有、
チーム・組織コミットメント、職務関与、
ワーク・エンゲージメント、援助行動、
内発的動機づけ、自己効力感、ポジティブ感情、
精神的健康などが挙げられます。
「チームレベル」では、
チームの凝集性や協力につながると整理されています。
◯遠隔的影響:
「個人レベル」では、職務パフォーマンス、職務満足、
組織市民行動、創造性、革新的行動、
組織への社会化などに好ましい影響を与え、
離職意図やバーンアウトを抑える可能性が示されています。
「チームレベル」では、チームの創造性、有効性、
業績、イノベーション、チーム効力感などとの関連が
挙げられています。
つまり、メンバー同士が助け合い、認め合い、
率直に情報を交換できることは、
それ自体が心地よいだけではありません。
その積み重ねが、知識共有や仕事への関与を促し、
さらに先の成果や定着にもつながる可能性がある、
ということです。
TMXの研究の統合フレームワーク
■まとめと感想
実はこの論文、2023年にも一度、
メルマガで取り上げていました。
なのに、完全に忘却の彼方へ飛んでいっており、
読みながら「あれ、この論文、マーカー引いてあるんだけど…?」
と気付いて愕然としました。
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/11361/
・・・・とはいえ、「TMX」というキーワードだけは、
頭のどこかに残っており、改めて読むことで、
この3年間で蓄積した知識を含めて、
また新鮮な気持ちで読めて、理解も深まったような気がしました。
こうして忘れては出会い直し、
そのたびに少しずつ理解を深めていくこともまた、
「学びを深める」ということなのかもしれませんね。
(と自分に言い聞かせてみた)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/nccd762a73e81?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:10km
【メルマガのご感想について】
メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
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