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令和8年8月30日(第4569号)
今週の一冊『パラドックス思考 ー矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2564字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
この3日間は、ランニングはお休み。
トレーニング負荷調整の失敗、
リカバリーの失敗などで、中殿筋の腱を故障をしてしまい、
歩くと痛みが出てしまうため、休養中です…(涙)
早く復活して、練習を再開したいと思います。
ということで、家族で映画『ちいかわ』を観に行きました。
噂に違わぬ、「かわいい風のフォークホラー」で、
なかなか人間の業を感じる作品でした…。
またこれは後日感想を書いてみたいと思います。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。
今週の一冊はこちらです。
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『パラドックス思考 ─矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』
舘野 泰一 (著), 安斎 勇樹 (著)
https://amzn.asia/d/031HgCly
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さて、「パラドックス思考」という言葉は、
馴染みがないかもしれません。
ただよくよく考えると、
「人間とは矛盾に満ちた存在である」ということが
よくわかるものです。たとえば、
・利益を追求しながら、社会的な責任を果たしたい
・個々の働き方を尊重したいが、チームの一体感も醸成したい
・SNSのフォロワー数を増やしたいけれど、炎上したくない
…みたいな。
そんな「めんどくさいけれど、なんとも愛らしい」と
本書で伝えているように、人の感情の矛盾とどう付き合い、
悩みを緩和したり、創造的な解決策につなげたりするのか。
そんなことを考えさせてくれる一冊でした。
ということで、早速中身をみてまいりましょう!
■パラドックス思考とは?
そもそも「パラドックス思考」とは何でしょうか。
本書では、以下のように紹介されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<パラドックス思考とは?>
問題の背後に潜んでいる「パラドックス(矛盾)」に着目し、
AかBかという二者択一ではなく、「AもBも」という可能性、
さらには別の選択肢である「C」を探っていく考え方
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、本の前半は、
なぜ私たちの心や社会にパラドックスが生まれるのかを考える
「理論編」。
後半は、実際にその矛盾とどう向き合うかを考える
「実践編」となっています。
「どちらかを選べばスッキリする」という話ではなく、
「そもそも簡単には選べないから悩む」という、
言われてみれば当たり前のことに向き合うのが、
本書の面白いところだと感じます。
■本書のおすすめポイント
さて、以下、本書のおすすめポイントについて、
私が「面白かった!」と思った点を
いくつかピックアップさせていただきます。
◯(1)「あるある!」な感情パラドックスが面白い
まず1つ目が、紹介されているパラドックスが、
実に「あるある」であること。
「部下には成長してほしい」と心から願っている。
一方で、その部下がものすごく成長して、
自分よりはるか先に行ってしまった。モヤモヤ。
友人の新しいキャリアを「素晴らしいな」と思っている。
でも、どこか羨ましくて、
SNSの「いいね」を素直に押せない。モヤモヤ。
「新しいことに挑戦したい」と思いながら、
「今の安定も失いたくない」と思う。
結局今のままで、モヤモヤ。
どちらも嘘ではない。どっちもホントなのです。
ただ、人間とは、一つの価値観だけで
スパッと割り切れるような存在ではなく、
アンビバレントな感情を抱えながら生きている。
…というか、人っていつも、いつまでも
そういう生きものだよな…とはっとさせられるような、
安心させられるような、
そんな感覚を思い出させてくれます。
◯(2)さまざまな理論がつながっていく
もう一つ面白かったのが、
とにかくいろいろな理論や概念が登場することです。
感情を整理するためのプルチックの「感情の輪」。
アイデアを生み出すための「オズボーンの発想法」。
メジローの「変容的学習」。
リーダーシップ、コンプレックス、心理学や経営学、
学習論といったさまざまな領域から、
「矛盾」というテーマを眺めていきます。
また、社会そのものにもパラドックスがあります。
たとえば「資本主義」では、成果や収入を増やし、
成長し続けることが求められます。
一方で「民主主義」では、
どれほど経済的に成功している人であっても、
原則として一人一票です。
競争によって差を生み出す仕組みと、
人間を平等に扱おうとする仕組みが、
同じ社会の中に共存している。
「資本主義のゲームから降りたい」と思っても、
完全にそこから離れて生きることは難しい。
この構造そのものも、
一つのパラドックスといえるのでしょう。
一つの理論だけでは捉えきれない人間や社会を、
いろいろなレンズから覗いていく。
たしかに、「矛盾だらけの無理ゲー社会」というのは、
わかるなあ…としみじみ思うのでした。
◯(3)パラドックス思考の問題解決の5ステップ
では、実際に自分が抱えているモヤモヤをどう扱うのか。
本書では、そのためのステップも紹介されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.頭に浮かぶ「悩みのタネ」を書き出す
2.悩みのタネを「マトリクス」に整理する
3.解決したい「問題」を1つに定める
4.問題を取り巻く「感情」を深掘りする
5.感情をパラドックスの形式で記述する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここで面白いのは、
すぐに「解決策」を探しにいかないことです。
まず、「自分は何と何の間で揺れているのか」を丁寧に見ていく。
たとえば、「承認欲求パラドックス」では、
「褒められて嬉しい言葉」から、
自分が本当は何を求めているのか、
その矛盾が見えるといいます。
「人から言われて嬉しくないことは、実際の強み」であり、
逆に「人から言われて嬉しいことは、
足りないと思っている」可能性が高いという話。
これは確かにそのとおりです。
自分にとって、言われて嬉しいことには、
憧れが潜んでいるものです。
そんなふうに、
自分でも気づいていない欲求や矛盾を見つけていく。
単なる問題解決というより、
「自分の心を探索する方法」として読めるところも、
本書の魅力だと思いました。
■まとめと感想
他にも、具体的な事例が面白く、
印象に残る話がたくさんありました。
たとえば、「一発屋」と呼ばれる芸人が、
なぜ一発屋になってしまうのか。
ヒットした「得意技」があると、
周囲はそれを求める→本人もそれを繰り返す
→武器を使い続けるほど、新しい武器を磨く時間がなくなる
→得意技自体が陳腐化してしまう。
これは経営学でいう
「コンピテンシー・トラップ(得意技の罠)」にも
重なる話である、とか。
また、無双したい、と言いつつ、
無双すると退屈なので、
難しいことにもチャレンジしたくなる矛盾。
(たとえば、ゲームで「強くてニューゲーム」を繰り返すと、
最初は爽快でも、やがて刺激がなくなって飽きてしまう、など)
こうした身近な話と理論が行き来するので、
「パラドックス」という抽象的な言葉が、
だんだん自分の生活に近づいてくる感覚がありました。
人間である以上、
「こっちも欲しい、でもあっちも捨てたくない」という感情は
きっと残り続けます。
だから大切なのは、矛盾を無理やり解消することではなく、
まず「自分の中には両方の気持ちがある」と
受け止めることなのだろうな、と。
仕事でモヤモヤを抱えている人。
人間関係の中で割り切れない感情を抱えている人。
つまり、何かしらの「モヤモヤ」を抱えているすべての人に、
ぜひおすすめしたい一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:283km
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