配信日時 2026/08/30 20:51

今週の一冊『パラドックス思考 ー矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』【カレッジサプリ】

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令和8年8月30日(第4569号)


今週の一冊『パラドックス思考 ー矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2564字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

この3日間は、ランニングはお休み。
トレーニング負荷調整の失敗、
リカバリーの失敗などで、中殿筋の腱を故障をしてしまい、
歩くと痛みが出てしまうため、休養中です…(涙)

早く復活して、練習を再開したいと思います。
ということで、家族で映画『ちいかわ』を観に行きました。

噂に違わぬ、「かわいい風のフォークホラー」で、
なかなか人間の業を感じる作品でした…。
またこれは後日感想を書いてみたいと思います。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

今週の一冊はこちらです。

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『パラドックス思考 ─矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』

舘野 泰一 (著), 安斎 勇樹 (著)  
https://amzn.asia/d/031HgCly
===================

さて、「パラドックス思考」という言葉は、
馴染みがないかもしれません。

ただよくよく考えると、
「人間とは矛盾に満ちた存在である」ということが
よくわかるものです。たとえば、

・利益を追求しながら、社会的な責任を果たしたい
・個々の働き方を尊重したいが、チームの一体感も醸成したい
・SNSのフォロワー数を増やしたいけれど、炎上したくない

…みたいな。

そんな「めんどくさいけれど、なんとも愛らしい」と
本書で伝えているように、人の感情の矛盾とどう付き合い、
悩みを緩和したり、創造的な解決策につなげたりするのか。

そんなことを考えさせてくれる一冊でした。

ということで、早速中身をみてまいりましょう!



■パラドックス思考とは?

そもそも「パラドックス思考」とは何でしょうか。
本書では、以下のように紹介されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<パラドックス思考とは?>

問題の背後に潜んでいる「パラドックス(矛盾)」に着目し、
AかBかという二者択一ではなく、「AもBも」という可能性、
さらには別の選択肢である「C」を探っていく考え方
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、本の前半は、
なぜ私たちの心や社会にパラドックスが生まれるのかを考える
「理論編」。

後半は、実際にその矛盾とどう向き合うかを考える
「実践編」となっています。

「どちらかを選べばスッキリする」という話ではなく、
「そもそも簡単には選べないから悩む」という、
言われてみれば当たり前のことに向き合うのが、
本書の面白いところだと感じます。



■本書のおすすめポイント

さて、以下、本書のおすすめポイントについて、
私が「面白かった!」と思った点を
いくつかピックアップさせていただきます。


◯(1)「あるある!」な感情パラドックスが面白い

まず1つ目が、紹介されているパラドックスが、
実に「あるある」であること。

「部下には成長してほしい」と心から願っている。
一方で、その部下がものすごく成長して、
自分よりはるか先に行ってしまった。モヤモヤ。

友人の新しいキャリアを「素晴らしいな」と思っている。
でも、どこか羨ましくて、
SNSの「いいね」を素直に押せない。モヤモヤ。

「新しいことに挑戦したい」と思いながら、
「今の安定も失いたくない」と思う。
結局今のままで、モヤモヤ。

どちらも嘘ではない。どっちもホントなのです。

ただ、人間とは、一つの価値観だけで
スパッと割り切れるような存在ではなく、
アンビバレントな感情を抱えながら生きている。

…というか、人っていつも、いつまでも
そういう生きものだよな…とはっとさせられるような、
安心させられるような、
そんな感覚を思い出させてくれます。


◯(2)さまざまな理論がつながっていく

もう一つ面白かったのが、
とにかくいろいろな理論や概念が登場することです。

感情を整理するためのプルチックの「感情の輪」。
アイデアを生み出すための「オズボーンの発想法」。
メジローの「変容的学習」。

リーダーシップ、コンプレックス、心理学や経営学、
学習論といったさまざまな領域から、
「矛盾」というテーマを眺めていきます。

また、社会そのものにもパラドックスがあります。

たとえば「資本主義」では、成果や収入を増やし、
成長し続けることが求められます。

一方で「民主主義」では、
どれほど経済的に成功している人であっても、
原則として一人一票です。

競争によって差を生み出す仕組みと、
人間を平等に扱おうとする仕組みが、
同じ社会の中に共存している。

「資本主義のゲームから降りたい」と思っても、
完全にそこから離れて生きることは難しい。

この構造そのものも、
一つのパラドックスといえるのでしょう。

一つの理論だけでは捉えきれない人間や社会を、
いろいろなレンズから覗いていく。

たしかに、「矛盾だらけの無理ゲー社会」というのは、
わかるなあ…としみじみ思うのでした。


◯(3)パラドックス思考の問題解決の5ステップ

では、実際に自分が抱えているモヤモヤをどう扱うのか。

本書では、そのためのステップも紹介されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.頭に浮かぶ「悩みのタネ」を書き出す

2.悩みのタネを「マトリクス」に整理する

3.解決したい「問題」を1つに定める

4.問題を取り巻く「感情」を深掘りする

5.感情をパラドックスの形式で記述する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここで面白いのは、
すぐに「解決策」を探しにいかないことです。

まず、「自分は何と何の間で揺れているのか」を丁寧に見ていく。

たとえば、「承認欲求パラドックス」では、
「褒められて嬉しい言葉」から、
自分が本当は何を求めているのか、
その矛盾が見えるといいます。

「人から言われて嬉しくないことは、実際の強み」であり、
逆に「人から言われて嬉しいことは、
足りないと思っている」可能性が高いという話。

これは確かにそのとおりです。
自分にとって、言われて嬉しいことには、
憧れが潜んでいるものです。

そんなふうに、
自分でも気づいていない欲求や矛盾を見つけていく。

単なる問題解決というより、
「自分の心を探索する方法」として読めるところも、
本書の魅力だと思いました。



■まとめと感想

他にも、具体的な事例が面白く、
印象に残る話がたくさんありました。

たとえば、「一発屋」と呼ばれる芸人が、
なぜ一発屋になってしまうのか。

ヒットした「得意技」があると、
周囲はそれを求める→本人もそれを繰り返す
→武器を使い続けるほど、新しい武器を磨く時間がなくなる
→得意技自体が陳腐化してしまう。

これは経営学でいう
「コンピテンシー・トラップ(得意技の罠)」にも
重なる話である、とか。

また、無双したい、と言いつつ、
無双すると退屈なので、
難しいことにもチャレンジしたくなる矛盾。

(たとえば、ゲームで「強くてニューゲーム」を繰り返すと、
最初は爽快でも、やがて刺激がなくなって飽きてしまう、など)

こうした身近な話と理論が行き来するので、
「パラドックス」という抽象的な言葉が、
だんだん自分の生活に近づいてくる感覚がありました。

人間である以上、
「こっちも欲しい、でもあっちも捨てたくない」という感情は
きっと残り続けます。

だから大切なのは、矛盾を無理やり解消することではなく、
まず「自分の中には両方の気持ちがある」と
受け止めることなのだろうな、と。

仕事でモヤモヤを抱えている人。
人間関係の中で割り切れない感情を抱えている人。
つまり、何かしらの「モヤモヤ」を抱えているすべての人に、
ぜひおすすめしたい一冊です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:283km

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