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令和8年8月26日(第4565号)
映画を一緒に見ると仲良くなる、科学的な理由 ー「共有体験」の研究ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2552字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、終日研修プログラムの作成。
また、少し故障気味なので、ランニングは久しぶりに2日連続おやすみでした。
そうしたところ、よく眠れること(笑)
ランニングを辞めたほうが、健康的なのかもしれないという、
悲しい矛盾に遭遇した次第です。
でも、サブ3を目指して頑張ります・・・!
*
さて、本日のお話です。
唐突かつ、かつものすごく個人的な話ですが、
初めて好きな人と映画を観に行ったのが、
高校1年生の時の『タイタニック』でした。
めちゃくちゃ良い映画だったのですが、
映画よりも、隣にいる初恋相手が気になっていたなあ…と
遠い目で思い返します。
その後勢いで告白したら、
普通にフラれたのも、今となっては懐かしい思い出です(笑)
*
さて、今日は、「映画を共に観るという共有体験」にまつわるある論文を紹介します。
隣同士で動画を観るという体験が、
感情的な共有を通じてつながりを深める効果があることが、
これまでの研究で示されていました。
……しかし、よくよく考えてみると、こう思うわけです。
それは、相手と同じ映像を見るというときに、
「そのドラマを見て、”共通のポジティブな感情、
あるいはネガティブな感情を抱いたこと”が影響した」のか。
あるいはただ単に、
「お互いに”隣にいる”という存在を意識したこと」が影響したのか。
これが定かでなかったわけです。
そこで今日ご紹介する論文では、
5分間の映像を見たときの、呼吸数、心拍、
脳波や皮膚感覚の測定機で、
より細かく調べた研究となります。
結論をお伝えすると、
「隣りにいることを意識していること」が
かなり重要だった、というお話になります。
それでは、早速参りましょう!
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■今回の論文
・タイトル:Social bonding through shared experiences: the role of emotional intensity(共有体験を通じた社会的結びつき:感情の強さの役割)
・出版:Royal Society Open Science, 2024年
・著者:Victor Chung, Rocco Mennella, Elisabeth Pacherie, Julie Grèzes
・所属:École Normale Supérieure(ENS)、Université PSL、CNRS、Inserm(フランス)、Université Paris Nanterre(フランス)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・他者と感情的な体験を共有すると、
社会的なつながりが強まることは知られているが、
そこに「感情の同期(似た感情になること)」が必要なのかは、実はよくわかっていなかった
・初対面のペアに動画を見てもらい、
心拍・呼吸・皮膚電導度といった生理反応まで測定したところ、
大切なのは「感情が似ているかどうか」ではなく、
「感情の強さ(覚醒)」だったことが判明
・しかもその効果は、
お互いの姿が見える「共同注意」の状態でしか生まれない、
ということも見えてきた
■研究の背景と目的
デュルケームの「集合的沸騰」理論以来、
強い感情の体験が集団の一体感を強めることは、
社会学の世界では長く語られてきました。
ただ、その多くはアンケートなど、
主観的な評価に頼るものでした。
絆が生まれるために本当に必要なのは、
お互いの感情が「一致・同期」すること
(似た感情になること)なのか。
それとも、感情の「強さ」さえあれば十分なのか。
そして、それはポジティブな感情でも
ネガティブな感情でも、同じように働くのか。
こうした問いに実験的に答えるべく、
この研究では「共同注意の有無
(相手の存在が視覚的にわかるかどうか)」と
「動画の感情の質(ポジティブ・ネガティブ・中立)」を
掛け合わせ、社会的なつながりへの影響を
見ていくことになります。
■研究の方法
対象となったのは、初対面の同性ペア56組、計112名。
実験は2×3のデザインで組まれています。
◯注意条件
・共同注意:同じ画面をお互いに視認できる状態で視聴
・非共同注意:間にカーテンを設置し、お互いの姿を遮断
◯感情刺激(いずれも5分間の映像)
・ポジティブ:映画『最強のふたり』
・ネガティブ:ドキュメンタリー『アースリングス』
・中立:大学図書館の映像
測定項目は、感情の価や覚醒度といった主観評価に加え、
心拍間隔、呼吸数、皮膚電導度という生理指標。
さらに、ペア内の感情の「強度(平均)」だけでなく、
「収束度(差分)」や「生理的な同期度」までを数値化し、
混合効果回帰モデルで分析しています。
かなり細やかに、
身体の反応まで追いかけた実験だということです。」
■主な結果(わかったこと)
研究からは以下のことがわかりました。
◯わかったこと1:感情の強さが、つながりを生む
ポジティブな動画でも、ネガティブな動画でも、
中立な動画に比べて、生理的な覚醒と
お互いのつながり感が有意に高まりました。
感情の「向き」ではなく、「強さ」そのものが、
結びつきを促していたのです。
◯わかったこと2:共同注意があってこそ、効果が生まれる
交感神経の活性化(皮膚電導度の上昇)が
つながり感を高める効果は、
相手の存在が視界に入る「共同注意」の条件でのみ、
有意に見られました。
同じ強い感情を体験していても、
相手の姿が見えない状態では、
その効果は現れなかったということです。
◯わかったこと3:感情は「揃わなくても」いい
意外だったのは、生理的な同期や、
主観的な感情の一致(似た感情になること)は、
動画の種類や注意条件によって意図的に高まることはなく、
絆の形成そのものも予測しなかったという点です。
「同じ気持ちになること」よりも、
「同じ場で、それぞれに強く心を動かされること」の方が、
結びつきにとって本質的だった、ということになります。
■まとめと感想
改めてこの論文を読みながら、
脳科学的な反応を扱う内容だったので、
普段扱っている組織行動の研究とは少し毛色が違い、
大雑把にしか、理解はできませんでした。
ただ、心拍や、皮膚感覚、呼吸数など、
生理学的な観点から対人同期しているのかを測定するという、
かなり科学的な手法で「つながり」を測ることをしているのが
興味深い研究でした。
条件は少し違いますが、今回の研究を応用すると、
お互いにいい感じだった場合は、
「強い感情が動く映画」+「隣通しで見る」というのが
効果的に働く可能性があるかもしれませんね
(私は失敗しましたけれども…苦笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:283km
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