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令和8年8月25日(第4564号)
ドラマを一緒に見ると、人間関係が深まる理由 ー共有体験のメカニズムー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2552字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、1件のアポイント。
その他、研修プログラムの作成、原稿の執筆など。
*
さて、本日のお話です。
ものすごく私事ですが、実は私の家には、
おそらく10年近くテレビがありませんでした。
けれども、やはり日々のニュースや台風情報など、
そうしたものも含めて「テレビってあった方がいいよね」
という話になりまして、情報収集の手段のひとつとして、
半年ほど前に新しいテレビを購入したのでした。
そうしてふたたびテレビのある生活が始まったのですが、
思いのほか、その効果を感じる場面がありました。
そのひとつが、家族で「鬼レンチャン!」などのエンタメ(面白い…!)、
ニュース含めて見たり、Amazonプライムやネットフリックスの
作品を並んで観たりするなかで、
「あそこよかったね!」などと、感想を言い合う時間です。
これを、
「共有体験(Shared Experience)」
少なくとも一人の他者と、同じ時点に同じ出来事を共に経験すること」。
と呼ぶのですが、今日はこの「共有体験」が
社会的なつながりを深めるという、
ある研究をご紹介したいと思います。
それでは、早速参りましょう!
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<今回の論文>
・タイトル:Synchronized affect in shared experiences strengthens social connection (共有体験における感情の同期は社会的つながりを強化する)
・出版:Communications Biology, 2023年
・著者:Jin Hyun Cheong, Zainab Molani, Sushmita Sadhukha, Luke J. Chang
・所属:ダートマス大学 心理・脳科学部
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・86名が同じテレビドラマを「1人」または「ペア」で視聴し、
表情・汗(皮膚電導)・登場人物への印象を細かく記録した。
・一緒に観たペアほど、喜びの表情が「同じ瞬間に」重なり、
身体の反応まで同期していた。
・こうした感情・身体・認知の同期は、
まとめて「共有体験」というひとつの土台にまとまり、
それがそのまま二人の親密さを予測した。
・つまり「同じものを、同じ時に、同じように感じること」が、
人と人とのつながりを直接つくっていた。
■研究の背景と目的
スポーツ観戦や映画鑑賞のように、
誰かと同じ出来事を共に味わうと、人はぐっと近づく感じがします。
日々、なんとなく実感していることだと思います。
けれども、その裏側で実際に何が起きているのか
(感情、動作、生理反応、ものの受け取り方など)、
そうしたいくつもの「同期」が、どう絡み合ってつながりを生むのかは、
実はよく分かっていませんでした。
これまでの表情研究の多くは、
「どんな表情が何回出たか」を数えるだけだったり、
少し遅れて伝わる"感情の伝染"を測るだけだったりして、
まさにその一瞬一瞬で心と身体がそろっていく様子を、
まるごと捉えるにはいたっていなかったわけです。
***
そこでこの研究は、作りものの実験室的な刺激ではなく、
実際のテレビドラマという自然な素材を使って、
複数の「同期のプロセス」がどのように親密さを育てていくのかを、
より厳密に確かめようとしました。
■研究の方法
集められたのは86名です。
うち32組64名は二人ひと組のペアで、
22名は一人で視聴します。
観る作品は、アメリカのテレビドラマ
『Friday Night Lights』の4話(4時間)です。
参加者は頭にGoProのカメラを、
身体にはEDA(皮膚電導=汗のかき具合から緊張や興奮を読み取る指標)
を測る装置をつけて、静かに画面に向かいます。
会話はしません。
ただ、隣り合って同じ物語を追うだけです。
表情はディープラーニングのアルゴリズムで毎秒読み取り、
20種類の細かな筋肉の動きと感情を数値化。
視聴後には、登場人物13名への印象も答えてもらいます。
そのうえで、二人の反応が
「同じ瞬間にどれだけ重なったか」を
丁寧に分析していきました。
■主な結果 ― この研究でわかったこと
結果は、なかなかに示唆に富むものでした。
順に見ていきましょう。
◯わかったこと1:喜びの表情が「同じ瞬間」にそろう
ペアで観た人たちは、一人で観た人たちよりも、
喜びの表情が同じタイミングでぱっと立ち上がる度合いが高く、
そのそろい方が強いペアほど、
互いへの親密さも高いと答えていました。
◯わかったこと2:「表情の作り方」まで似てくる
表情を生み出す顔の筋肉の使い方――
そのパターンそのものが似ているペアほど、
つながりを強く感じていました。
ただ同じ表情が出るだけでなく、
表現の"かたち"まで重なっていた、というわけです。
◯わかったこと3:汗の反応(自律神経)まで同期する
さらに驚いたのは、汗の反応――
つまり自律神経の高まりまで、
ペアのあいだで同期していたことです。
とりわけ、恐れや怒り、驚きといった
心がざわつく高覚醒の場面で同期が強まり、
それが親密さを力強く予測していました。
◯わかったこと4:登場人物への「印象」もそろう
物語を観たあと、登場人物へ抱いた印象が似ているペアほど、
互いへの親密さも高いという関係が見られました。
感情や身体だけでなく、
ものの受け取り方までもが近づいていたのです。
◯わかったこと5:4つの同期は「共有体験」から生まれていた
そして著者らは、これら4つの同期
(表情のタイミング、筋肉の使い方、汗の反応、印象の一致)が、
じつはバラバラのものではなく、
「共有体験」という土台から生まれていることを、統計モデルで示しました。
言いかえれば、社会的なつながりは
「同じものを同時に見ること」そのものから生まれるのではなく、
「同じ瞬間に、感情や身体を共鳴させること」から生まれる、
ということです。
会話のない、ただ静かに並んで観るだけの環境でさえ、
私たちは非言語のサインや身体の反応を通じて
「この人は、私と同じように世界を見ている」と感じ取り、
その感覚が関係を強めていく、ということのようです。
■まとめと感想
この論文は、もともと面識のなかった86名が、
共に同じ物語を観るという共有体験を通じて、
感情が同期し、身体の反応がそろい、
登場人物への印象までも近づいていくという内容です。
私が妻と観る場合は、もとから知っている者同士ですから、
この研究とは条件の違う状況です。
それでも、同じ体験を共に味わうという「共有体験」には、
やはり何かしらの確かな作用があるのだと感じます。
また別の論文では、夫婦のような親しい関係では
「共有体験の中でも、新しくてちょっとドキドキすること」
のほうがいいという話もありましたので、
それについては、また別の機会でご紹介したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:269km
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