配信日時 2026/08/23 13:59

今週の一冊『「人と違う」ままでも大丈夫 普通から解き放たれるためのDPICの発達理論』【カレッジサプリ】

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令和8年8月23日(第4562号)


今週の一冊『「人と違う」ままでも大丈夫 普通から解き放たれるためのDPICの発達理論』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2952字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

今週の一冊はこちらです。

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『「人と違う」ままでも大丈夫 普通から解き放たれるためのDPICの発達理論』

山本 志都 (著)
https://amzn.asia/d/04TyZGRV
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「人間関係の悩みは、尽きることがない」と言われますが、
本書はまさに、そんな悩みに光を当ててくれる一冊です。

私たちはつい、「普通」「当たり前」という枠組みの中にいることで
安心しようとします。

そして、誰かと比べたり、「自分は周りと違う」と感じたりすることが、
ときに痛みを生みます
(特に学生の頃って、本当にそうだったな…と思いますね)

本書は、「普通」というものを絶対的な基準として見るのではなく、
「それも一つの世界線にすぎない」と捉え直し、
そこから少し距離を置くための考え方を教えてくれます。

その背景にあるのが、DPIC(ディーピック)という理論です。

「自分らしくいればいい」「みんな違って、みんないい」という
そんな言葉はよく語られますが、
少し心もとなく感じることもあります。

本書は、そうした言葉に「理論という背骨」を与えてくれる、
そんな一冊です。



■本書の魅力 ー物語と理論のマリアージュー

本書の魅力の一つは、理論書でありながら、
物語から始まることです。

主人公は「美紀」という大学生の女性です。

以前から、学校という社会になじめない違和感を抱え、
やがて中学校、高校に行けなくなります。

大学では少し自分らしくいられるようになったものの、
就職活動になると、再び「周りに合わせなければならない」
という圧力に出会います。

そこでお父さんやお母さんの「まだいけないのか」とか
「ちゃんと、普通にみえるわよ」という何気ない言葉にざわつく。

そんな風に悩む一人の物語です。

描かれるのは、決して特殊な出来事ではありません。

「みんなは普通にできているのに、自分だけ何かが違う」。

程度の差はあれ、多くの人がどこかで感じたことのある
違和感ではないでしょうか。

面白いのは、その物語を入口に、
「登場人物の中で何が起きていたのか?」を
後半で理論的に解き明かしていく構成です。

抽象的な概念が具体例とともに説明されるので、
「これは自分にもある」と一気に自分ごとになっていきます。



■DPICとは何か?

さて、本書の副題でもある「DPIC」とは、
異文化コミュニケーション研究者ミルトン・ベネットの
「異文化感受性発達モデル(DMIS)」を土台に、
著者の山本志都先生が長年の研究を通じて形にしてきた枠組みです。
(Developmental Profile of Intercultural Consciousness=異文化意識開発プロファイルと訳されます)

ここでいう「異文化」は、国籍や言語の違いだけではありません。

世代、立場、専門性、働き方、価値観など、
身近な人間関係の中にある「自分とは違うもの」も含まれます。

DPICでは、「違い」と出会ったときの私たちの見方を、
次の5つの発達局面で捉えます。

(ここから)
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1. 無関心

そもそも「違い」があまり視野に入っていない状態です。
「特に問題はない」「そういう人もいる」と捉えていますが、
実は違いそのものに気づいていない場合もあります。

2. 防衛

違いがはっきり見えてくる一方で、
それを自分や自分の属する集団を脅かすものとして
捉えやすい状態です。

「普通はこうするでしょう」「こちらに合わせるべきだ」と、
自分側の常識を基準に相手を見てしまいます。

3. 最小化

違いを否定するのではなく、
「まあ、結局みんな同じ人間だよね」と
共通点を強調する状態です。

一見すると寛容なのですが、
自分の物差しの範囲内で相手を理解しているだけで、
相手固有の背景や価値観までは十分に見えていない状態です。

4. 相対化

「その人の立場や経験からすると、そう見えるのかもしれない」と、
相手の文脈に立って違いを理解しようとする状態です。

自分の常識も絶対ではなく、
「自分からはこう見えている」と捉え直せるようになります。

5. 共創

違いをなくすのではなく、その違いを活かしながら、
新しい関係や選択肢、価値を一緒につくっていく状態です。

「どちらが正しいか」ではなく、
「この違いがあるからこそ、何を一緒につくれるだろうか」と考えていきます。
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(ここまで)


違いを「見ない」「排除する」という状態から、
違いの背景を理解し、最後にはその違いそのものを
新しい価値につなげていく。

そんなふうに、
「違いを見る側がどう発達していくのか」を示した地図と理解しました。



■物理学が、社会科学の「ものの見方」に影響を与えている?!

本書の中で興味深かったのが、
「物理学のパラダイムの変化」と、
「社会科学におけるものの見方」を重ねて説明している部分です。

大きく分けると、次の3つです。

(ここから)
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(1)ニュートン力学――「原因と結果がある」と見る

現実には客観的な事実があり、
そこには原因と結果がある、と考える見方です。

例)「彼は機嫌が悪い。きっと仕事でうまくいかないことがあったのだろう」
と考える。

目の前の結果には、背後に何らかの原因があると捉える。

(2)相対性理論――「立場によって見え方は変わる」と考える

同じ出来事でも、どこから見るかによって
現実の見え方は変わるという考え方です。

例)「彼は機嫌が悪そうに見える。でも、それは私からそう見えているだけかもしれない。本人にとっては、無口なのが普通なのかもしれない」と考える。

つまり、自分の見方も一つの解釈にすぎないと捉えるわけです。

本書では、こうした見方をメタ的にみるのを
「内省メタ」と表現しています。

(3)量子力学――「自分の見方も、現実をつくっている」と考える

さらに一歩進んで、
「私が『この人は機嫌が悪い』という眼差しで見ていること自体が、
この場の空気をつくっているのではないか」と考えます。

例)自分は現実を外から眺めているだけではなく、
その関係の一部でもある、という見方です。
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(ここまで)

本書では、こうした認識の枠組みそのものを
引いて見ることを「構成メタ」と説明しています。

こうして並べると、

「何が原因なのか?(ニュートン力学)」

「自分にはどう見えているのか?(相対性理論)」

「自分の見方が、この現実をつくっていないか?(量子力学)」

と、問いそのものが変わっていくことがわかります。

物理学が社会科学に影響を与えているという見方に、
確かにそうかも…!とハッとさせられたのでした。



■まとめと感想

本を読みながら、自分自身を振り返って思います。

たとえば、「仕事とはこうあるべきだ」
「もっと責任のある仕事をしなければ成長できない」
「人は働くことで成長するものだ」といった考えを、多分自分は持っています。

それらが悪いわけではなく、
自分を前に進めてくれた大切な価値観でもあります。

ただ、その考えがいつの間にか
「唯一の正しい世界線」になってしまうと、
自分にも他人にも苦しさを生むことがあります。

頑張っていない自分を許せなかったり、
自分と違う生き方をしている人に、
無意識に違和感を抱いたりすることもあるかもしれません。

そんなとき、
「これは真実なのではなく、自分が生きてきた一つの世界線なのかもしれない」
と捉えてみることは、

本書の物語で語られた
「自分が好きな自分でいられる」という状態
に近づくのかもしれません。

人と比べてしまう、普通の枠に囚われて苦しくなる、
自分の中の当たり前を少しだけ見直してみたい…

そんな事を感じるあらゆる年代の人に、おすすめしたい一冊です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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【編集後記】
◯今月のランニング:269km

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